自分らしく輝いて活躍するための仕事の秘訣

2018.09.12 更新|2018.09.12 公開| 仕事・ビジネス

三方よしの意味と企業の実例|現代の自分の仕事に応用する方法

牛窪俊浩です。『三方よし』とは、売り手、買い手、世間の三方が良い方向に進む商売の原理原則です。

これは、100年以上続く老舗企業が、繁栄のためにずっと持ち続けてきた働き方、仕事観、経営哲学です。

日本は、2017年時点で創業100年以上となる老舗企業は3万3069社持ち、さらに世界の老舗企業ランキングでは、10位以内に日本が6位入っています。日本は世界で一番の老舗大国なのです。

老舗企業ランキング

参考サイト:東京商工リサーチ
参考サイト:老舗の企業一覧

「一時的に繁盛しても倒産する会社と、100年以上、繁栄を続ける老舗企業の違いは?」
「どうやったら売り上げが上がるのだろう?」
「自社の売り上げを優先するのか、お客様を優先にするのか?」
「社会貢献とはどのようなものか?」
「自分の会社も永続するにはどうしたらいいだろう」

もしかしたら、そのような疑問を持つかもしれません。実際、自信を持って「この方向で事業を進めていこう」とやれる経営者は少ないです。

三方よしは、近江商人の思想・行動哲学です。この近江商人の流れを組む企業は、

西川産業、大丸、高島屋、西武グループ、伊藤忠商事、住友財閥、東レ、ワコール、トヨタ自動車、日本生命保険、武田製薬などがあります。

私がビジネス・仕事を教わっている経営コンサルタントの小田真嘉さんは、膨大なデータを元に、老舗研究を徹底的にしていたそうです。そこで小田さんはこのようにおっしゃっています。

「100年以上続く老舗企業には、100年以上続く理由があります。」
「会社を繁栄させるには、この三方よしの経営哲学を取り入れることが、とても重要です。」

しかし、三方よしの経営哲学を取り入れても、うまく行かない場合もあります。やはり現実面が伴わないと、事業は繁栄しません。理想を現実にする必要があるのです。

実際、この理想と現実のギャップに悩む経営者やビジネスパーソンは多いです。

しかし小田さんはこのようにも伝えています。

「実は、理想と現実のギャップは大きいくていいのです」

この記事では、私が小田さんから教わった

三方よしの本当の意味と、どうやって自社の仕事に応用するのか?

をお伝えします。

この三方よしの考え方を実行すれば、お客様に喜ばれ、世の中が良くなり、もちろん自分たちも良くなるはずです。

さらに、自分たちの活動によって、業界に新たな顧客が創造されたり、競合他社も「なるほど、自分たちもそうやったらいいのか!」と意欲的になったりして、市場全体のクオリティが高まります。

これによって業界が変わり、世の中全体が良くなっていく。そうした全てが満たされる経営哲学が、三方よしです。

もし、あなたがこれから事業を起こそうと考えていたり、もしくは会社の立て直しを行おうと思っているとしたら、この記事はきっと役に立つはずです。

お客様にとても喜ばれ、業界が変わり、新たな文化を作る。そして自分たちも繁栄していく。その三方よしを目指そうとするなら、ぜひこの先をお読みください。

1.三方よしの本当の意味

三方よしは近江商人の経営哲学で、さかのぼると江戸時代初期の曹洞宗の鈴木正三という仏教のお坊さんから始まります。

鈴木正三は、商売は仏の修行であり、仏様と一体となって、共に世の中をよくするために働かせていただく『同行二人』の教えを伝えていました。

三方よし

世間よしの『世間』とは、世の中の全体の価値観のことです。これは、競合他社も含みます。『お天道様に恥じない生き方をする』という言葉がありますが、世間は仏様、お天道様と言い換えることもできますし、お客様一人ひとりの考えが集まった意識(=集合意識)とも言えます。

買い手よしの『買い手』とは、世間の意識や期待が反映して、お客様となります(右側の赤矢印参照)。

そして、売り手(=自社)は仏様やお天道様に恥じない商売をするために、「自分たちはどんな商売、生き方をするのか」という使命・理念・志を世の中に対して持ちます(左側の赤矢印参照)。

こうして打ち出した理想の世界、ビジョンから、世の中を良くするためのアイディアが生まれます。このアイディアが形になった時に、商品・サービスとなって、買い手に提供します。

このときに単にモノを売るではなくて、

「私たちはこんな思いで」
「こんな理想を持って、こういうことをやっています」

というのを思いを込めて語っていく、商品に思いを乗せる、商品の良さを語る、伝える、表現する。

これによってお客様から得られるのが、共感・共鳴・信用です。

「それだったらあなたから買いたい」
「あなたのところでサービスを受けたい」

この共感と共鳴があることでお客様に永く支持していただき、収益が生まれます。そうやって信用を獲得していくことで、お客様の生活が充実していき、世の中が結果的に良くなっていく。これが三方よしです。

三方よしで重要なのが、使命・理念・志です。

「私たちは仏様と世の中をよくする道を歩んでいきたい」
「お客様にお役立ちをしたい、喜んで頂きたい」

そういった、働き方、生き方、哲学、美学、仕事観を明確にして、世間(仏様、お天道様)に伝えることで、世の中を良くするアイディアを授かります。

それでは具体的に、三方よしをどのように応用したら良いのかをお伝えします。

2.三方よしを自社に応用する方法

老舗の経営哲学の三方よしをどのように応用したらいいのか、以下の流れに沿ってお伝えします。

2-1.理想・理念・志を持つ
2-2.ドラッカーの5つの質問でお客様を明確にする
2-3.理想と現実のギャップを埋めていく
1)現実をよく知る
2)教育、感化して、理想に気づいてもらう。
3)ギャップを埋めるための商品、サービスを作る、または質を高める

これらを順を追って説明します。

2-1.理想・理念・志を持つ

最初に必要なことは、理想を持つことです。まずは理想の未来に気持ちを向けて、以下の質問を考えてみてください。

これらの質問に答えるワークは、小田さんが実際に有料のセミナーでお伝えしたり、コンサルティングの際に使っている手法です。今回、特別に公開してもいいと言って頂きました。

ぜひ、ご活用いただけたらと思います。

1)理想を定める4つの質問

<理想を定める4つの質問>
① 今の業界で

・悲しくなること
・悔しくなること
・嘆かわしく思うこと
・悪しき習慣、ルール
・解決しなければと思うこと

は、何でしょうか?

② それが解決したら、どんな人が増えるのでしょうか?
③ そんな幸せな人が増えたら、どんな素晴らしい世の中になるでしょうか?
④ 自分の思う理想の世界、理想の会社はどんなものでしょうか?

 

2)理念を定める5つの質問

<理念を定める5つの質問>
① 今やっている仕事は、なぜ世の中に必要なのでしょうか?どんな役に立っていますか?
② 今やっている仕事で、最も大事な基本、もしくは仕事の本質は何だと思いますか?
③ たとえ、どんなにお金が儲かったり、条件が良かったとしても、絶対にやりたくないことは何ですか?
④ 絶対に比べられたくない人、同じにして欲しくない会社はどこですか?それはなぜですか?
⑤ 自分の仕事や提供するサービスで多くの人を魅了し、美しい働き方、美意識が高く感性あふれる仕事をするには?何を極める必要がありますか?

 

理想・理念の質問から考えた答えから、志を深めていきましょう。そして次にドラッカーの5つの質問で、お客様にすべき人を明確にしていきます。

2-2.ドラッカーの5つの質問でお客様を明確にする

ドラッカーの5つの質問に答えることで、お客様がよりより明確になっていきます。

ドラッカーは20世紀のビジネス界で最も有名な経営学者です。そのドラッカーが最も大事にしていた質問が『ドラッカーの5つの質問』です。

<参考:ドラッカーの5つの質問>
1)我々の使命は、何か?
2)我々の顧客は、誰か?
3)顧客にとっての価値は、何か?
4)我々にとっての成果は、何か?
5)我々の計画は、何か?

ここでは、この5つの質問をアレンジして、『理想のお客様を明確にしていく5つの質問』に変えてお伝えします。

 

<理想のお客様を明確にしていく5つの質問>
1)あなたの大切な人は、誰か?
2)その大切な人の幸せは、何か?
3)そのために、自分ができることは、何か?
4)その中で、すぐにできることは、何か?
5)実際にやってみて、どんな変化があったか?

 

3)の自分ができることについては、やれるかやれないかは、一旦置いておいてOKです。大切な人が喜んで、幸せになれる最高のお手伝いを、たくさんの量と最高のクオリティで考えてみてください。

数をたくさん出すこと、質を高めることをしたら、4)のすぐにできることをリストアップします。

そして 5)の実際にやってみたら、どんな変化があったのかを書き出してください。そうして 1)に戻ってもう一度、大切な人は誰かを考えてみましょう。繰り返し実践することで、上記の問いが深まっていきます。

理想・理念・志を持つことで、理想の未来が定まり、お客様にすべき人が明確になることで、具体的な現実(=お客様)が明確になります。

2-3.理想と現実のギャップを埋めていく

理想の未来(=志)と現実(=お客様)を明確にしたら、そこにギャップが生まれます。そして、このギャップを埋めることが価値になり、収益になるのです。

創業450年を超える西川産業の2代目甚五郎さんは、江戸時代にもえぎ色の蚊帳をデザインしました。この蚊帳が爆発的大ヒットとなり、庶民の生活が激変したのです。

当時の蚊帳は茶色で寝苦しいデザインでしたが、もえぎ色にすることで、爽やかで涼しげに、ぐっすりと眠れる理想の未来を描きました。

蚊に刺されて、暑くて寝苦しいお客様に対して、理想の未来のギャップを見せて、このギャップを埋める商品を提供することで、価値が生まれ収益となったのです。

三方良しの場合は、理想と現実のギャップが大きければ大きいほどいいのです。いかにその間を埋めていくのか?が価値になるし、収益になります。

企業が繁栄していくためには、このギャップを埋め続ける『継続』が大事です。しかし、継続できないのは、理想を持たなかったり、もしくは現実を見なくなったりして、事業の方向性、やるべきことも曖昧になって、繁栄の法則から外れていくのです。

なので、①理想を持ち、② 現実を知り、③ギャップを埋めることを続けるようにしましょう。これからそれぞれについて解説します。

① 理想を持つ
理想と現実のギャップを作るために、まずは理想を持つことが重要です。先ほどの理想と理念を持つための質問に答えてみましょう。西川産業の2代目甚五郎さんの場合は、

「みんなにぐっすり寝てほしい」
「気持ちのいい朝を迎えて、眠れる幸せを感じてほしい」

であり、このように理想の世界を持つことがスタートラインになります。

② 現実をよく知る
理想を持ったのなら、ドラッカーの5つの質問に答えてお客様の問題や課題、ニーズをみて現実を知ります。

夜は蚊に刺されて、暑苦しくて眠れない・・・というお客様の現実を知ります。

③ ギャップを埋める商品やサービスを作る
理想をもち、お客様の現実を知ったら、ギャップを埋める商品やサービスを作ります。そしてこの商品の質を上げます。

そこで、お客様に理想と現実のギャップを教えて、感化して、理想に気づいてもらいます。

「夜、ぐっすり眠れたら、最高の気分で朝を迎えることができます」
「気持ちが前向きになるので、きっと仕事はうまくいくし、落ち込むことも減ります」
「でも、今は、蚊に刺されたり、蚊帳は暑苦しくて、全く寝れませんよね」

「もし、蚊に刺されない、涼しい蚊帳があったらよく眠れて最高じゃないですか?」
「太陽の光と共に爽やかに目覚めたら、朝からご機嫌で、それが毎日続くとしたら幸せじゃないですか?」
「朝からエネルギッシュなら、困難にも立ち向かえるし、仕事もうまく行きます」
「この蚊帳で毎日、ぐっすり眠れるようになったら、人生が変わるかもしれませんよ」

理想は高く、はっきりと持ちながら、お客様に語って理想に気づいてもらうようにします。

理想を語り、現実を伝え、ギャップを埋める。これを繰り返すことによって、現状からいい未来に近づこうとするお客様が増えます。こうしたお客様が増えるほどに理想の未来(=理想の世間)に近づいていきます。

収益が生まれない事業は
・誰をお客様にすべきか(お客様にしないべきか)が明確になっていない
・理想や理念、お客様がどういう風になったら良いのか、何が喜びなのかが明確になっていない

ということがほとんどです。現実を知らず、志や未来もなくて、ギャップも少なくては価値は生まれず、アイディアも思いつかないために、良い商品やサービスは出ないし、クオリティも上がらないのです。

しかし、三方よしを実践することで

大事にしたいお客様が明確になり、そのお客様を含めた業界が、何に困っているのかが分かるようになります。そして、そのお客様に何ができるのか、具体的に考えられるようになります。

そして、理想の未来を共有し感化することで、お客様と業界、世間の理想の未来が一致し、そこに向かって進みたい、と皆が思うようになります。

この理想の未来と今の現実を埋めるいい商品、いいサービスのアイディアが出てきて、お客様の直接の喜びだけではなく、業界・地域が変わり、文化が作られて行くのです。

最後に、現代で実際に三方よしを実践している企業の例をお伝えします。

3.三方よしを実施する企業の例

寝具業界のリーディングカンパニーで、「眠りの価値」を開いてく、西川産業という会社があります。

創業450周年を超えている西川産業さんは、新商品の寝具を開発しました。

これまでは眠りというものがなんなのか、誰も良くわからなかったのです。そこで西川産業さんは、日本睡眠科学研究所という眠りを科学的に分析する組織を作りました。どんな人でもより質の高い睡眠をとるには、どうしたら良いのか?ということを科学的、医学的なアプローチで研究しました。

体の限界まで挑戦するアスリートの体に合った寝具を作れば、多くの人の眠りの質が高まるのでは?と考えて体を点で支えるマットレスを開発しました。

これまでの眠りというのは、寝ているだけで体に圧力がかかり、血液が圧迫されて、床ずれを起こして眠りが浅くなってしまいます。なので、寝ていても体に負担がかからずに、体への圧力が減るような、そして空気の中に寝ているかのような、点で支える圧力分散マットレスを商品コンセプトとして作りました。

そういったマットレスで日の丸を背負うオリンピック選手、アスリートたちを、眠りの側面から体のサポートしています。

西川産業さんは、最高の睡眠が世の中の人に必要だという理想の世界を掲げました。そして、仕事などで、忙しく、ストレスを抱える現代人は睡眠の質が低いという現実を知りました。

その上で、このギャップを埋めるために、科学的・医学的に、圧力分散をするマットレスを開発したのです。

4.三方よしで業界に革命を起こし、文化を作っていく

三方よしは、お客様と、業界、世の中が良くなり、もちろん自分たちも良くなる経営哲学です。

私は今の日本にとって特に必要な哲学だと考えており、三方よしがよりよりもっと、広がってくれたら、と思っています。

お客様からは「こんな商品を待っていた」と喜ばれ

同業者からは

「自分たちもどうやって進めたら良いのかわかった」
「新たな顧客が創造された」

と言われて、市場全体のクオリティが上がり、業界が活性化していく。そうしてお客様にとても喜ばれ、業界が変わり、そうして文化が作られていく。

日本人の世界に誇れる特徴の一つに「和の精神」があります。和を大切にするからこそ、自分だけがよければいい、ではなくて、自分も相手もそして世間も良くしたいと、私たちは思います。

これは、日本人が古来から大事にしてきた精神です。今、世界各国で、日本の精神性の高さを真似ようとする動きが活発になっています。

私たち日本人が持つ精神性の高さは、子から子へ、古来からずっと受け継がれてきたものです。しかし残念ながら「効率化」の波によって、和の精神が失われつつあります。

だからこそ、この三方よしで本来の日本人らしさを思い出し、助け合い、思いやりの心が日本から世界に広がっていったら、と思っています。三方よしを学べるのは、現代に生きる私たちですし、子孫に伝えることができるのも私たちです。

会社が繁栄するために、三方よしを実践するには、現実を知り、理想を伝え、理想と現実のギャップを埋め続けることが必要です。

そのためにも、理想・理念の質問に答えつづけ、ドラッカーの5つの質問に繰り返し答えつづけてもらえたらと思います。

電子書籍「THE SHIFT」プレゼント
小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営コンサルタント。これまで1,000社以上の経営者と、1万人以上の現場スタッフ、マネージャー、リーダーたちとの深い対話から、働き方と生き方には4段階のステージがあることを解明し「進化の4段階説」を体系化。現在は、上場企業、リーディングカンパニー、老舗企業、個性的な小さな会社、業界のリーダー的経営者、第一線で活躍するプロフェッショナル、作家、講師、コンサルタント、コミュニティ主催者などの「リーダーの相談役」として活動。