経営者・起業家・リーダーのための仕事の秘訣
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2019.05.02 更新|2019.05.02 公開| 経営・リーダーシップ

会社を変える戦略|新人看護師が病院を変えた事例を交えて解説

牛窪俊浩です。

会社を変えるためには、明確な戦略が必要です。なぜなら、戦略なきまま会社を変えようとすれば、必ず周りから反発を受けるからです。

たとえ、どんなに熱意や使命感があっても、個人の力には限界があります。個人が組織に立ち向かうには、正しい戦略と実行が不可欠です。

そこでこの記事では、会社を変える具体的な戦略について、1000社以上の経営者をコンサルしてきた小田真嘉さんに伺った内容をお伝えします。

この方法は、経営者やリーダーなど、組織のトップが会社やチーム全体を変えていくのも可能ですし、新入社員が大きな組織を変えることも可能です。

実際、たった一人の新人看護師が大きな病院を変えた実例があります。この記事では、会社を変える戦略をこの新人看護師の実例を通してお伝えします。

もし、あなたが会社を変える戦略が必要なら、ぜひこの先をお読みください。

1.会社を変えた実例

まずは会社は変えられるという実感を持ってもらうためにも、たった一人の新人看護師が病院を変えた実例をお伝えします。これは、小田さんのビジネス講座で組織の変え方を学び、実践された方の実例です。

その看護師さんは、ここで働きたい!と希望を持ってこの病院を選んだものの、外で見るのと内情は全く違い困っていました。

この病院は看護師長の二大派閥勢力がいがみ合っていました。そのいがみ合いに気を取られ、患者さんのケアや、ドクターとの協力体制を改善する雰囲気がなかったのです。次第に、彼女は病院に行くのが嫌になってしまいました。

そんな中、先輩看護師さんから「あなたはどっちなの?」と詰め寄られたことをきっかけに、彼女は一念発起しました。

「こういう病院は絶対嫌だ、相手のことを悪くいうのではなく、患者さんのためを想う病院にしたい」

そこで彼女は、まず、自分の理想を考えました。

  • もっと患者さんのためを想いたい
  • もっとドクターと看護師の連携を密にしたい
  • もっと病院の雰囲気をよくしたい

しかし、考えた理想や想いをやみくもに周りには伝えずに、最初はたった一人の味方を見つけようと動いたのです。

その中で、「うん!分かるわかる!私も」と、同期の子と盛り上がり、「こんな風になったらいいね」「あんな風になったらいいね」とずっと話していました。

この内容は、二人だけの秘密にしてこっそりと盛り上げて、話し合っていました。

そうやって患者さんのために、病院をよくするために、どんなことができるのだろうか?結果としてどうなるのが理想なのか?というのを自分たちなりに考えた上で、この理想をナイチンゲールから、『ゲール』という合言葉にしました。

「今日はゲールに近いよね」
「でも、この部分はゲールに遠いよね」
「ゲールに近づけるにはこの方法はどうかな?」

すると、周りがいがみ合って、うんざりしている中でも、前向きに話し合う二人に、3年上の先輩が興味を持つようになりました。

「ゲールってなに~?」
「二人でどんな話をしているの?」
「なんか楽しそう」

それでも中身を明かさずにいたところ、先輩はますます知りたくなって、何度も聞いてきました。そこでようやく自分たちがやろうとしていることを伝えたのです。

「実は、私たち、患者さんのために、この病院をもっとよくしたいんです」
「ゲールプロジェクトという名前で進めているんです」

その話を受けて、先輩も次のように自分の想いを伝えました。

「病院のおかしな所を、なんとかしないと、と思ってた」
「けれど勤め始めてから数年、そんな気持ちも失くしてた」
「派閥にはいるけれど、もっと病院を良くしたい」

そうやって仲間が3人になり、隠語での会話を続けていったのです。

そのうち自分たちからは表現せずとも、周りの耳に入るようになり、一人、また一人と仲間が増えて行きました。

そして5人になったときに、片方の派閥の影響力のある人に話すタイミングがあったのです。

「あなた達が言っていることは、本当にその通りだと思うから、ちょっと話してみるね」

この人を仲間に引き入れて、一気に流れが変わりました。

さらに仲間はどんどん増えて、他部署の人も混ざり10人くらいになっていきます。

そのうち、二大派閥勢力の片方の看護師長さんのうちの、一人の耳に入りました。

するとその看護師長は「実は私もこういういがみ合いは嫌だった」と言い、ゲールプロジェクトに賛成してくれたのです。

そこから事態は一変します。組織再編成で看護師長が二人から一人の体制に変わり、なんとゲールプロジェクトに賛成していない方の看護師長さんが、別の病院に移ったのです。

このように、新人の看護師が病院全体を変えていくなんて、信じられないかもしれません。しかし、これは実際に小田さんの講座に通われていた方の実例です。

一人に社員の想いを発端として、会社を変えることは出来るのです。

2.会社を変える人

会社を変える人とは、ものすごい能力を持っている人だと思われがちですが、決してそうではありません。

今回の実例のように、たった一人の新人看護師が作った波紋が広がり、仲違いしていた人も味方になって、病院の雰囲気をガラッと変えることも可能です。

新たな価値の創造や、組織の変革をもたらすのは、若者か馬鹿者かよそ者だ、と言われることがあります。

会社を変えるために必要なのは、能力なのではなく固定観念にとらわれずに行動する人です。そして、立場や状況によってアプローチ方法を変えることです。

今回の例は、いくつかあるうちの、一人からでも会社を変える方法です。彼女がどんな戦略で会社を変えていったのか、次の章で内容をお伝えします。

3.会社を変える戦略

会社を変えるために必要な戦略は、会社内に存在している社風や文化、風潮や雰囲気を変えることです。

ただ、「スローガンを新しくする」みたいに表面的に形だけ変えても、社風や雰囲気などはは変わりません。

なぜなら、社風や雰囲気を変えるためには、社員の普段の意識を変えることが重要だからです。

この意識とは、優先順位のことです。

例えば、以下のようなものです。

  • 全体の仕事よりも、自分の楽さを選ぶ
  • お客様の喜びの声を伝えるよりも、自分の売り上げなど手柄を取ろうとする

など、人は優先順位にもとづいて行動し、この優先順位は、本人の思想や仕事観から決まってきます。

働く人たちの優先順位が変わらなければ会社内での行動は変わりませんし、社風や文化、風潮や雰囲気も変わりません。

なので、優先順位(を決定づける思想や仕事観など)を変えることが必要です。そのためには、小さくてもいいので、社内に熱い理想を作る必要があります。

そして、たとえ少しずつでも熱意ある理想が広がっていけば、周りの人たちの思想や仕事観も変わって、優先順位が変わり、社内が変わっていくはずです。

もしあなたが会社を変えたいと思うのなら、何よりも必要なのは、まずは自分自身が変わっていくことを忘れないようにしてください。

続いて、会社を変える具体的な戦術についてお伝えします。

3.会社を変える4つの具体的な流れ

会社を変えるためには、以下の4つの流れで進めていきます。

  1. 会社を変える基本姿勢を理解する
  2. 実現の可能性を知る5つの質問について考える
  3. 会社を変えるための5つの準備を行う
  4. 会社を変えるためにゲリラ戦を実行する

それでは一つずつお伝えします。

3-1.会社を変える基本姿勢を理解する

会社を変えようとするときに、一番の敵となるのは自分自身です。なぜなら、自分のやる気や覚悟などがないと、途中で挫折してしまうからです。

なので挫折しないためにも、注意しておきたいポイントは以下の3つです。

  • 焦らないこと
  • すぐに結果を求めないこと
  • 一気に変えようとしないこと

まずはこの基本姿勢を理解しましょう。

そして次に会社を変えられる可能性がどれくらいなのかを、次の5つの質問で把握していきます。

3-2.実現の可能性を知る5つの質問について考える

会社を変えられるのかどうか、実現の可能性を知るためには以下の5つの質問に応えてみて下さい。この質問に全てイエスと答えられるなら、あなたは会社を変えられる可能性があります。

(1)そもそも、本当にやりたいことなのか ?
(2)最後まで、やり抜く気持ちはあるか ?
(3)多くの人に喜んでもらえることなのか ?
(4)もし、何かしらの問題が起きたとしても、責任を負う覚悟はあるか ?
(5)やるための後押しや、良い流れや、強力な応援はあるか?

この質問に全てイエスなら会社を変えるための行動を実行することをお勧めします。が、もし一つでもイエスと言えない質問があるのなら、今はあなたが会社を変えるタイミングではありません。4つや3つの場合は、他がイエスになるように準備をするといいでしょう。

具体的に準備とは、(1)〜(4)の質問を自問自答し続けてみるということです。(5)については、日々の生活の中で、流れを感じながらタイミングを待ちます。(1)~(4)にイエスと答えられるのなら、会社を変えるタイミングを体感できるはずです。

何より自分自身がまず、変わりたいと気持ちを高めることが大事です。でも、そんな風に気持ちが高まるほどに、周りのことを邪魔者や敵と思ってしまう場合があります。

会社の問題を起こす人が敵でダメだと思うほどに、攻撃的になり、ぶつかって余計に問題が大きくなってしまいます。そして余計にエネルギーも時間も浪費します。

敵だと思う心が一番の敵なので、そうではなくて、みんなでどうやったら変えられるかを考えます。この敵対視がある限りは、会社は変わりません。

会社は今までの流れや、積み重ねによって今が存在しています。それを一概に全て「違う!」とバッサリ切るのではなく、包み込んだ上で、どう良くしていくか、と思うことが大事です。

3-3.会社を変えるための5つの準備を行う

会社を変えるためには、以下の5つの準備を行っていきます。

(1)理想の未来(ゴール)を設定する
(2)現状の問題(嘆き)を知る
(3)テーマ、コンセプト、合言葉、大義名分を作る
(4)具体的アクションを決める
(5)自分がやることを宣言する

まずは、どういう状態が理想の未来なのか、イメージを明確にします。次に、現状の問題や嘆かわしく残念に思うことはなんだろうか、と現状の課題を明確にします。

その上で、具体的にどのようにしていきたいのか、テーマやコンセプト、企画や大義名分、もしくは一言で表す合言葉(キャッチコピー)を考えてみます。

先ほどの例で言えば、看護師のみんなが、互いにいがみ合うのではなく、協力しあい、患者さんのために良くしていく病院にする…それを『ゲールプロジェクト』という一言にまとめる、という感じです。コンセプトを作ると、改善点に意識が向くようになるので、具体的な実行内容が見えてきます。

具体的な改善内容とは、例えば今回の実例の場合は、患者さんが笑顔になるような雰囲気の明るい病院を作ることだったり、ミーティングで連携をとって協力しあうことだったりします。

最後は、今の自分に出来ることを見極めた上で、「私はこれをやっていきます」と自分のやることを宣言します。

この5つの準備を行うことで、会社を変えるという意識が高まっていきます。

その上で、会社を変えるための、具体的な実行に移っていきます。

実行の際のポイントは、仲間を作るということです。というのも、1人だけでは非常に難しいからです。

社長であれば、権利や権限がありますが、それでも多勢に無勢、一人で変えるのはとても難しいです。社員やスタッフが会社を変える場合と、条件はそう変わりません。

少人数が大人数に勝つためには、工夫が必要です。そしてその工夫とは『ゲリラ戦』という、水面下で戦う方法を行うことです。

3-4.会社を変えるためにゲリラ戦を実行する

会社を変える具体的なアクションは、ゲリラ戦を行う事です。

ゲリラ戦とは、戦場以外において小規模な部隊にて、敵の気づかないところで、臨機応変に奇襲や待ち伏せをして撹乱(かくらん)や攻撃を行う戦法の事です。

例えば、第二次世界大戦の硫黄島の戦いというものがあります。アメリカの11万人の軍勢に対して、日本が2万3000人で戦ったという戦いがあります。

5倍近くも兵力差があって、アメリカは5日で占領できると考えていましたが、36日にもおよび、アメリカ軍にも多大な損害をもたらしました。

日本軍は武器も食料も何もないのに、どうやって戦ったのかというと、全長18kmにも及ぶ坑道を手作業で張り巡らして要塞を作り、内陸部にアメリカ軍を誘い込んで一人ずつ倒していきました。

日本軍が硫黄島にて踏みとどまったおかげで、東京の大空襲を最小限まで抑えることができたのです。

これがゲリラ戦という、少人数が大人数に立ち向かう鉄則です。

真正面からぶつかって組織に大きな流れを作って変えようとするのではなく、まずは水面下で、目立たない動きをしながら、一人、また一人と、ひとりずつ仲間を作っていくのが大事です。

前半でお伝えした実例の新人看護師がやったことは、同期の新人看護師と仲良くなることでした。次に、二人目の先輩を仲間に取り入れていきました。

そしてそこから5人くらい仲間が増えていって、影響力のある人も仲間に取り入れていきました。

彼女は「一人ずつ仲間を作っていく」というゲリラ戦を行い、会社を変えていったのです。

これは別の表現で言えば、場外戦とも言えます。表向きの会議などのオープンな時間ではなく、休憩中や営業時間外などの仕事以外の場面での根回しを行うということです。

これが会社にムーブメントというか革命を起こすための方法です。これならたとえ新入社員のスタッフでも、もちろん社長でもできることです。

さらにポイントをお伝えすると、社内だけでなく、社外にも仲間を作りたいです。なぜなら社外にも協力者がいると、客観的な意見をくれたり、心の支えになってくれるからです。

なので、もし可能であれば社内だけでなく、社外の人も同様に仲間にしていきましょう。

4.まとめ

そして会社を変えるためには、これまでお伝えしたことを継続してやり続ける必要があります。

いきなり全員から賛同を得られるわけではありません。全員を一気に変えることを望まずに、共感や意思表示をしてくれた人と、地道に活動を続けるのが大事です。

例えば、理解してくれそうな人から伝える、相手がなかなか理解や共感を示さない場合は相手が興味を抱きそうな事例を交えて伝えてみる、変えられる部分から変えていく、変わらないなら別のやり方を試してみるなど、試行錯誤を繰り返すことも必要です。

流れが変わるその瞬間まで、水面下で攻めに転じるその時をじっくりと待つことが必要です。

焦らず、すぐに結果を求めず、一気に変えようとせずに、会社を変える行動をし続けてみて下さい。

小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営者とリーダーの相談役(歴18年目)。創業450年の老舗企業から革新的ベンチャーまで4000社以上をコンサル。人生のどん底を何度も経験し、あらゆる成功の闇に直面したことから、生きる意味と働く目的を探究。1万人との対話と師の教えから仕事・会社・家庭の「成長4段階説(4つのステージ)」を体系化。複数の企業顧問も務めながら、仕事と人生のステージを上げるための経営コンサルティングとビジネス講座を行う。働き方と生き方の次元を一気にあげる会員制ビジネスコミュニティ「NEXT DIMENSION」を主催。