経営者・起業家・リーダーのための仕事の秘訣
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2018.12.16 更新|2018.09.12 公開| 仕事・ビジネス

三方よしの意味だけでなく、あなたの会社に応用する方法をお伝えします

三方よしの意味だけでなく、あなたの会社に応用する方法をお伝えします

三方よしとは商売の原理原則を表した言葉で、売り手、買い手、世間の三方が良い方向に進む商売のことを意味します。

三方よしを取り入れている老舗企業(100年以上続く)企業は多く、もしかしたらあなたもビジネス成長のために、三方よしの考え方を取り入れたいと考えているかもしれません。

しかし、三方よしの経営哲学を取り入れても、うまく行かない場合もあります。表面的に取り入れるのではなく、会社の根本から見直していくことが大切です。

ということでこの記事では、三方よしについて、また三方よしをあなたの会社に応用する方法をお伝えします。

これからお伝えする話は、実際に三方よしを取り入れている老舗企業をコンサルティングしている小田真嘉(おだまさよし)さんから直接伺った話を元にしていますので、ご安心ください。

あなたのビジネスを成長させて、長期的に繁栄させていきたいと考えているのなら、ぜひこのまま続きをお読みください。

1.三方よしの本当の意味

改めてお伝えすると、三方よしとは、売り手、買い手、世間の三方が良い方向に進む商売の原理原則です。

これは、100年以上続く老舗企業が、繁栄のためにずっと持ち続けてきた働き方、仕事観、経営哲学です。

三方よしは近江商人の経営哲学で、さかのぼると江戸時代初期の曹洞宗の鈴木正三という仏教のお坊さんから始まります。

鈴木正三は、商売は仏の修行であり、仏様と一体となって、共に世の中をよくするために働かせていただく『同行二人』の教えを伝えていました。

三方よし

世間よしの『世間』とは、世の中の全体の価値観のことです。これは、競合他社も含みます。

『お天道様に恥じない生き方をする』という言葉がありますが、世間は仏様、お天道様と言い換えることもできますし、お客様一人ひとりの考えが集まった意識(=集合意識)とも言えます。

買い手よしの『買い手』とは、世間の意識や期待が反映して、お客様となります(右側の赤矢印参照)。

そして、売り手(=自社)は仏様やお天道様に恥じない商売をするために、「自分たちはどんな商売、生き方をするのか」という使命・理念・志を世の中に対して持ちます(左側の赤矢印参照)。

こうして打ち出した理想の世界、ビジョンから、世の中を良くするためのアイディアが生まれます。このアイディアが形になった時に、商品・サービスとなって、買い手に提供します。

このときに単にモノを売るではなくて、

「私たちはこんな思いで」
「こんな理想を持って、こういうことをやっています」

というのを思いを込めて語っていく、商品に思いを乗せる、商品の良さを語る、伝える、表現する。

これによってお客様から得られるのが、共感・共鳴・信用です。

「それだったらあなたから買いたい」
「あなたのところでサービスを受けたい」

この共感と共鳴があることでお客様に永く支持していただき、収益が生まれます。

そうやって信用を獲得していくことで、お客様の生活が充実していき、世の中が結果的に良くなっていく。これが三方よしです。

三方よしで重要なのが、使命・理念・志です。

「私たちは仏様と世の中をよくする道を歩んでいきたい」
「お客様にお役立ちをしたい、喜んで頂きたい」

そういった、働き方、生き方、哲学、美学、仕事観を明確にして、世間(仏様、お天道様)に伝えることで、世の中を良くするアイディアを授かります。

それでは具体的に、三方よしをどのように応用したら良いのかをお伝えします。

2.三方よしをあなたの会社に応用する方法

老舗の経営哲学の三方よしをあなたに会社にどのように応用したらいいのか、以下の流れに沿ってお伝えします。

2-1.理想・理念・志を持つ
2-2.ドラッカーの5つの質問でお客様を明確にする
2-3.理想と現実のギャップを埋めていく
1)現実をよく知る
2)教育、感化して、理想に気づいてもらう。
3)ギャップを埋めるための商品、サービスを作る、または質を高める

これらを順を追って説明します。

2-1.理想・理念を持つ

三方よしを取り入れるために必要なことは、まずは理想を持つことです。

理想の未来に気持ちを向けて、以下の質問を考えてみてください。

これらの質問に答えるワークは、小田さんが実際に有料のセミナーでお伝えしたり、コンサルティングの際に使っている手法です。今回、特別に公開してもいいと言って頂きました。

ぜひ、ご活用いただけたらと思います。

<理想を定める4つの質問>
① 今の業界で

・悲しくなること
・悔しくなること
・嘆かわしく思うこと
・悪しき習慣、ルール
・解決しなければと思うこと

は、何でしょうか?

② それが解決したら、どんな人が増えるのでしょうか?
③ そんな幸せな人が増えたら、どんな素晴らしい世の中になるでしょうか?
④ 自分の思う理想の世界、理想の会社はどんなものでしょうか?

 

<理念を定める5つの質問>
① 今やっている仕事は、なぜ世の中に必要なのでしょうか?どんな役に立っていますか?
② 今やっている仕事で、最も大事な基本、もしくは仕事の本質は何だと思いますか?
③ たとえ、どんなにお金が儲かったり、条件が良かったとしても、絶対にやりたくないことは何ですか?
④ 絶対に比べられたくない人、同じにして欲しくない会社はどこですか?それはなぜですか?
⑤ 自分の仕事や提供するサービスで多くの人を魅了し、美しい働き方、美意識が高く感性あふれる仕事をするには?何を極める必要がありますか?

 

理想・理念の質問の答えを考えてみて下さい。

そして次の5つの質問で、買い手(お客様)にすべき人を明確にしていきます。

2-2.5つの質問で買い手を明確にする

以下の5つの質問に答えることで、三方よしの買い手であるお客様が、より明確になっていきます。

<理想のお客様を明確にしていく5つの質問>
1)あなたの大切な人は、誰か?
2)その大切な人の幸せは、何か?
3)そのために、自分ができることは、何か?
4)その中で、すぐにできることは、何か?
5)実際にやってみて、どんな変化があったか?

 

3)の自分ができることについては、やれるかやれないかは、一旦置いておいてOKです。

大切な人が喜んで、幸せになれる最高のお手伝いを、たくさんの量と最高のクオリティで考えてみてください。

数をたくさん出すこと、質を高めることをしたら、4)のすぐにできることをリストアップします。

そして 5)の「実際にやってみたら、どんな変化があったか?」を書き出してください。

そうして 1)に戻ってもう一度、大切な人は誰かを考えてみましょう。繰り返し実践することで、上記の問いが深まっていきます。

さて理想と理念を明確にして、買い手であるお客様も明確にしたら、次のステップに進みましょう。

2-3.理想と現実のギャップを埋めていく

さてここが、三方よしをあなたの会社に取り入れる上で重要なポイントとなります。

あなたが描く理想の未来と、買い手(お客様)が今直面している現実。

そこにはたいていギャップがあるものです。要は、買い手(お客様)の多くは理想の状態を手に入れておらず、現実には何かに悩んでいたり、困っていたりするものです。

その理想と現実のギャップ(差)を埋めていくのです。このギャップを埋めることが価値になり、買い手を魅了し、収益につながっていくわけです。

どういうことかお伝えしますね。

創業450年を超える西川産業の2代目甚五郎さんは、江戸時代にもえぎ色の蚊帳をデザインしました。この蚊帳が爆発的大ヒットとなり、庶民の生活が激変したのです。

当時の蚊帳は茶色で寝苦しいデザインでした。が、もえぎ色にすることで、爽やかで涼しげに、ぐっすりと眠れる理想の未来を描きました。

  • 理想:涼しくてぐっすり眠れる
  • 現実:蚊に刺されて、暑くて寝苦しい

このギャップを埋める商品を提供することで、買い手が価値を感じ、爆発的に売れたのです。

企業が繁栄していくためには、このギャップを埋め続ける『継続』が大事です。

そのためにも、①理想を持ち、② 現実を知り、③ギャップを埋めることを続ける意識を持ってみて下さい。

ここはすごく重要なポイントなので、①~③について、もう少し具体的にお伝えします。

① 理想を持つ
理想と現実のギャップを作るために、まずは理想を持つことが重要です。

先ほどの理想と理念を持つための質問に答えてみましょう。

西川産業の2代目甚五郎さんの場合は、

「みんなにぐっすり寝てほしい」
「気持ちのいい朝を迎えて、眠れる幸せを感じてほしい」

であり、このように理想の世界を持つことがスタートラインになります。

② 現実をよく知る
理想を持ったのなら、先ほどの5つの質問に答えて買い手の問題や課題、ニーズをみて現実を把握していきます。

西川産業さんは、「夜は蚊に刺されて、暑苦しくて眠れない…」というお客様の現実を知ったのです。

③ ギャップを埋める商品やサービスを作る
理想を持ち、買い手の現実を知ったら、そのギャップを埋める商品やサービスを作ります。

その理想と現実は、買い手に分かるように、ちゃんと伝えることが重要です。

例えば…

「夜、ぐっすり眠れたら、最高の気分で朝を迎えることができます」
「気持ちが前向きになるので、きっと仕事はうまくいくし、落ち込むことも減ります」
「でも、今は、蚊に刺されたり、蚊帳は暑苦しくて、全く寝れませんよね」

「もし、蚊に刺されない、涼しい蚊帳があったらよく眠れて最高じゃないですか?」
「太陽の光と共に爽やかに目覚めたら、朝からご機嫌で、それが毎日続くとしたら幸せじゃないですか?」
「朝からエネルギッシュなら、困難にも立ち向かえるし、仕事もうまく行きます」
「この蚊帳で毎日、ぐっすり眠れるようになったら、人生が変わるかもしれませんよ」

という感じです。

理想を語り、現実を伝え、ギャップを埋める。これを繰り返すことによって、現状から良い未来に近づこうとするお客様が増えていきます。

西川産業さんの例だと、夜にぐっすり眠る人が増えていくわけですね。

こうしたお客様が増えるほど、あなたが思い描く理想の未来(=理想の世間)に近づいていきます。

もし事業の売上がよろしくない場合は、

  • 誰を買い手にすべきか(しないべきか)が明確ではない
  • 理想や理念が明確ではない
  • 買い手がどういう風になったら良いのか
  • 買い手にとって何が喜びなのかが明確になっていない

ということがほとんどです。

現実を知らず、理想や理念も持つことなく、ギャップを埋める意識がないのであれば、買い手はあなたの会社や商品に価値を感じない可能性が高いです。

そうならないためにも、三方よしを実践する。

そしてあなたが理想や理念を持ち、買い手(お客様)の現実を知り、そのギャップを埋める商品を作ることで、お客様だけでなく業界活性化につながっていきます。

決して、明日から売上が上がるような魔法の話ではありません。しかし、長期的に繁栄していくためには欠かせないことです。

さて最後に、現代で実際に三方よしを実践している企業の例をお伝えします。

3.三方よしを実施する企業の例

三方よしは、近江商人の思想・行動哲学です。

この近江商人の流れを組む企業は、

  • 西川産業
  • 大丸
  • 高島屋
  • 西武グループ
  • 伊藤忠商事
  • 住友財閥
  • 東レ
  • ワコール
  • トヨタ自動車
  • 日本生命保険
  • 武田製薬

などがあります。

この記事では三方よしを実践している企業の例として、寝具業界のリーディングカンパニーであり、創業から450年以上経っている西川産業という会社についてお伝えします。

西川産業さんにとって理想と現実は、それぞれ以下のようなものでした。

  • 理想:世の中に人たちに最高の睡眠を届ける
  • 現実:仕事などで、忙しく、ストレスを抱える現代人は睡眠の質が低い

そのギャップを埋めるべく、西川産業さんはある新商品の寝具を開発に挑みます。

実はこれまで“眠り”というものがなんなのか誰も良くわからなかったのですが、西川産業さんは、日本睡眠科学研究所という眠りを科学的に分析する組織を作りました。

どんな人でもより質の高い睡眠をとるには、どうしたら良いのか?ということを科学的、医学的なアプローチで研究しました。

そこで「体の限界まで挑戦するアスリートの体に合った寝具を作れば、多くの人の眠りの質が高まるのでは?」と考えたのです。

そして開発されたのが、体を点で支えるマットレスでした。

これまでの寝具というのは、寝ているだけで体に圧力がかかり、血液が圧迫されて、床ずれを起こして眠りが浅くなってしまうことがありました。

なので、寝ていても体に負担がかからずに、体への圧力が減るような、そして空気の中に寝ているかのような、点で支える圧力分散マットレスを商品コンセプトとして作りました。

そしてその商品はヒットし、一般の方たちだけでなく、オリンピック選手やアスリートたちまで、最高の睡眠を届けられるようになったのです。

まとめ.三方よしで業界に革命を起こし、文化を作る

三方よしは、お客様と、業界、世の中が良くなり、もちろん自分たちも良くなる経営哲学です。

私は今の日本にとって特に必要な哲学だと考えており、三方よしがもっと広がってくれたら、と思っています。

お客様からは「こんな商品を待っていた」と喜ばれる。

同業者の感化されて、より良い商品を切磋琢磨して作るようになり、市場全体のクオリティが上がり、業界が活性化していく。

お客様にも喜ばれ、業界も良い方向に変わっていき、そして新たな文化が作られていく。

日本人の世界に誇れる特徴の一つに「和の精神」があります。和を大切にするからこそ、自分だけがよければいい、ではなくて、自分も相手もそして世間も良くしたいと、私たちは思ってきたのです。

これは、日本人が古来から大事にしてきた精神です。今、世界各国で、日本の精神性の高さを真似ようとする動きが活発になっています。

私たち日本人が持つ精神性の高さは、子から子へ、古来からずっと受け継がれてきたものです。しかし残念ながら「効率化」の波によって、和の精神が失われつつあります。

だからこそ、この三方よしで本来の日本人らしさを思い出し、助け合い、思いやりの心が日本から世界に広がっていったら、と思っています。

三方よしを学べるのは現代に生きる私たちですし、子孫に伝えることができるのも私たちです。

ぜひここでお伝えした方法を実践して、三方よしをあなたの会社に取り入れてみて下さい。あなたのお客様だけでなく、世間(世界)が繁栄していくはずです。

小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営者とリーダーの相談役(歴18年目)。創業450年の老舗企業から革新的ベンチャーまで4000社以上をコンサル。人生のどん底を何度も経験し、あらゆる成功の闇に直面したことから、生きる意味と働く目的を探究。1万人との対話と師の教えから仕事・会社・家庭の「成長4段階説(4つのステージ)」を体系化。複数の企業顧問も務めながら、仕事と人生のステージを上げるための経営コンサルティングとビジネス講座を行う。働き方と生き方の次元を一気にあげる会員制ビジネスコミュニティ「NEXT DIMENSION」を主催。