社内コミュニケーションを円滑にするための方法と事例を紹介
牛窪俊浩です。
社内コミュニケーションは、会社組織の運営に携わるリーダーにとって、誰しもが直面する問題です。
そもそも社内コミュニケーションには二つの種類があります。明確に話す目的がある場合と、目的のない場合です。
社内コミュニケーションが、うまくいく会社とそうでない会社の違いは、この二つを認識し、それぞれに施策しているかどうかです。
そこでこの記事では、社内コミュニケーションが問題となった時に、実際に施策を行い、活性化した事例をお伝えします。
事例については、1000社を超える会社のコンサルティングを行ってきた、経営コンサルタントの小田真嘉さんに伺った内容をお伝えします。
もし、あなたがリーダーとして会社の社内コミュニケーションを活性化したいと思うのなら、ぜひこの先をお読みください。
目次
社内コミュニケーションの二つの種類
社内コミュニケーションには、二つの種類があります。話す目的が明確にある場合と、目的がない場合です。
例えば会社のプロジェクトを進めるとか、仕事の現状を把握するとか、改善する為の目的があった上でコミュニケーションを取る場合は、メンバーとの関係性を「進める」必要があります。
逆に、特に目的がなくて、ゴールを定めないコミュニケーションもあります。その場合は、メンバーとの関係性を「深める」ことになります。
このように、社内コミュニケーションには関係性を「進めるもの」と「深めるもの」の二種類があるのです。
それぞれに関しての社内コミュニケーションを活性化する施策と事例をお伝えします。
「進める」社内コミュニケーション
「進める」社内コミュニケーションを活性化する4つの方法
「関係性を進める」とは、お客様に何かを売ったり、伝えたり、プロジェクトを達成する為に一致団結することです。
関係を進めるコミュニケーションにおいて大切なのは、以下の4つです。
- ストーリーを共有する(過去を見る)
- ゴール・目的を共有する(未来を見る)
- 具体的プランを共有する(現在を見る)
- 共有した上で相手の状況を知る
それぞれについて解説します。
ストーリーを共有する(過去を見る)
一つ目は、なぜ今のプロジェクトや企画が始まったのかという経緯や背景、ストーリーを共有することです。
経緯や背景、ストーリーを知っているのと、知らないのでは、仕事の取り組み方が全く違うものとなります。取り組むことになった経緯、バックグラウンドをお互いに共有しあうことは、とても重要です。
なので、まずはなぜ今の仕事をするのか、企画をするのか、お客様にどう伝えて売るのか、そのようなストーリーを社内で共有していきましょう。
ゴール・目的を共有する(未来を見る)
その上で今やろうとしているプロジェクトやプラン、企画や営業のそもそものゴールや目的を共有します。
自分たちがどんな経緯でここまで来ていて、そこからどの方向に向かうのか、向かいたいのか、という理想やゴール、目的を共有していきます。
「なぜこれをするのか?」
「結果として、どんな姿がゴールなのか?」
「どんな状態が理想なのか」
それらを共有することによって、全体としてどんな方向にいくのか、が明確になっていきます。
その上で欠かせないのが、自分たちの過去の経緯やストーリーを共有して、未来のゴールや目的を共有した上で、現在に目を向けることです。
具体的プランを共有する(現在を見る)
現在を見て、具体的プランを共有することが必要です。
ゴールに向かってこれから行う具体的なアクションプランを共有します。
- 何をしていくのか?
- そのためには必要な計画は?
- どんな目標でいくのか?
- 行動プランは?
- うまくいかなかった場合のリカバリーは?
それらを共有して、自分たちのチームとして「今まで過去はこうでした」と過去を共有し、そして「今からこういう方向に向かいます」という方向性や未来、目標を共有します。
その上で「目標の実現のために、今私たちはこれをしていきましょう」と、現在のことを共有します。すなわち、過去ー未来ー現在の順で語っていきます。
しかし、これで社内のコミュニケーションが成り立つのかというと、決してそうではありません。
共有した上で相手の状況を知る
コミュニケーションを取る相手の状況を知ることも重要です。
こちら側から必要事項を伝えたのと同じように、相手も状況や事情、思いや考えを持っています。なので相手のことをちゃんと聞いて、知ろうとする姿勢や努力を見せることが重要です。
相手のことを聞く時には、以下のポイントを意識します。
- 現状のプランで行動ができる状態になっているか
- どれくらい時間を割けるのか
- 現状のプランにどれくらいコミットしているのか
- やる気や意志、モチベーションはどれくらいなのか
上記をしっかりと聞くようにします。
しかし、相手が乗り気じゃなかったり、反対していたり、批判する人たちがいる場合もあります。
なぜかというと、彼らにも背景やバックグラウンドに否定的になってしまう理由があるからです。
例えば、これ以上、仕事が増えたら他の業務が停滞すると思って、自分を守るために新しいプランや企画を批判したり、否定することがあります。
- 伝えても乗り気じゃない
- 顔が曇っている
- カラ返事をする
そのように抵抗することもあります。もちろん仕事は受けたいけれど、物理的にも時間的にもできない人もいます。無理に仕事を依頼するのではなく、相手が何を思い、どう感じて、どれくらいの気持ちなのか、相手の考えを知ろうとしたり、相手の背景を察することが大事です。
リーダーとして「私たちは、どんな経緯で仕事を始めて、そしてどの方向に向かうのか、そのために何をするのか」という、過去-未来-現在でやることを伝えた上で、相手がどれくらいの気持ちでできるのかを確認します。
社内コミュニケーションで目的がある場合は、相手の背景を察して、感じ取ろうとすることは本当に大事です。時間をしっかりとって、しっかりと聞く必要があります。そのために必要不可欠なのがこれから伝えるような、ミーティングやツールです。
「進める」社内コミュニケーションを活性化したツールと事例
社内のコミュニケーションを活性化するためには、ミーティングとツールが必要です。
コミュニケーションを活性化するためのミーティングで、重要なのは、目標やゴールを確認しあうことです。こうした理念の確認は、1回したら終わりではなく、何度も繰り返すことが必要です。
そして欠かせないのが、ミーティングで確認しあった目標やゴール、理念をうまく伝えるツールです。
このツールとは、例えば、社内報や新聞だったり、社内メルマガなどです。社内報や新聞はによって、後になって理念を読み返せます。メルマガであれば、ネット配信なので早く知ることができるし、印刷コストもかかりません。
社内報でもメルマガでも、創業者がどんな思いで会社を立ち上げたのか、これまで何をしてきたのかを伝えるのが大事です。
これから、実際に小田さんが社員研修を行なった際の事例をお伝えします。
社内報で病院立て直しを行なった事例
社内報で病院の立て直しを行なった事例をお伝えします。
ハヤシライスを作った人で有名な早矢仕 有的(はやし ゆうてき)さんという方がいます。この人は、丸善を作った実業家ですが、同時に医者で横浜市立大学の医学部を作った人でもあります。
小田さんは昔、横浜市立大学附属市民総合医療センターに研修で行った時に、社内報のようなものを作るお手伝いをしたことがあります。
横浜市の市役所の役員が立て直しプロジェクトのリーダーとなって、どんな思いで作られたのか、病院の歴史や背景を早矢仕有的さんのエピソード交えて特集しました。
こうして病院に関わるスタッフ全員が社内報を読めるようにしたところ、コミュニケーションが活発になっていきました。
清掃の女性スタッフまでもが「この病院って、ハヤシライスの人が作ったんだって」と話題に上がり、自然と会話が増えていったのです。スタッフ一人ひとりが、そんな歴史ある病院で自分は働いているんだ、という気持ちが芽生え、前向きに仕事に取り組むようになりました。
理念を伝えるのと同時に、わかりやすく伝えられる情報にまとめることも大事です。
社内メルマガで理念の共有を行なった事例
次にメルマガで理念の共有をして、社内コミュニケーションが活性化した事例をお伝えします。
老舗の刀鍛冶の会社のエピソードです。その会社は、100年以上前から刀を作っていて、今は工業メーカーが使う刃物を作っています。
今回、社内のコミュニケーションを活性化することを目的として、会社がどんな経緯で作られたのかという歴史、創業者の想いなどをメルマガで書くことにしました。
「自分たちの会社は刀鍛冶の家系で、魂がこもった日本刀を作ってきた」
「今も変わらず魂のこもった刃物を作っていて、この刃物を使った裁断機を作ってきた」
という経緯をメルマガで社内だけでなく、お客様にも書くようにしました。そこから歴史の共有だけでは終わらずに、未来に向けて自分たちが成し遂げたいことを発信しました。
「ものづくりの製品に魂がこもるような、日本人らしさを感じる商品が広まって欲しい」
「日本を代表して、まるで命宿る刃物を私たちは作りたいと思っている」
刃物というのは、二つの相反する矛盾をいかに克服するかが大事です。
・切れ味をよくしたら細くなり、もろくなって耐久性が落ちて、すぐに切れなくなる。
・耐久性を強化すると、先が太くなるので切れ味が悪くなる。
この相反することに挑戦して、切れ味もよく、耐久性も強い今までにない刃物を作ろうというのがこの会社の取り組みの大きな一つです。
理想は、この矛盾を解決する魂のこもった製品を日本が作れるようになることです。この理想を社員全員にメルマガで送信しました。そうしたら社員からは、いくつもメールで返信がありました。
「そんな歴史があったなんて知りませんでした」
「自分たちがどこに向かっているのか、明確になりました」
「今まで以上に魂を込めて刃物を作ります」
そして理念を語るメルマガを続けるうちに、社員たちの間で仕事への情熱を語る会話が増えていきました。こうして普段の会話が前向きになって、社内のモチベーションがどんどん上がって行ったのです。
そうして社内での仕事の関係性が進んでいきました。
社内での仕事において関係性が進むとは、どういうことでしょうか。
それは、お互いの役割が明確になって協力しあい、チームになっていく、ということです。
チームとグループの違いをご存知でしょうか。仲良しグループという言葉がありますが、仲良しチームとは呼びません。チームとグループの違いは、目的の有り無しです。
方向性や成長、目的がないのがグループです。対してチームとは、方向性があり、目指すところがあり、みんなで協力するのがチームです。
社内でコミュニケーションを取ることにより、それぞれの役割が明確になり、チームになっていく。これが目的がある場合の社内コミュニケーションです。
「深める」社内コミュニケーション
「深める」社内コミュニケーションを活性化する2つの方法
目的があるわけではなく、関係性を深めるためのコミュニケーションもあります。
目的ありの場合は、進む方向とやることが明確にあります。それ対して、目的のない場合は、関係性を深めて絆を強めるために、無目的なコミュニケーションを行います。
無目的なコミュニケーションとは言っても、決して無駄なことではありません。社内のメンバーが抱えている悩みや課題が浮き彫りになり、それを解決することでチームの結束力が高まることもあります。
無目的なコミュニケーションをする際は、以下の二つの内容をテーマにして話してみると関係性が深まりやすくなります。
最近の興味を伝える
最初から話す内容を決めるのではなく、他愛もない出来事とか興味、最近働いていて感じることや思っていることを、何の目的もなく話すことで関係性を深めます。
「普段の休日は何をして過ごしているの?」
「働くとはどういう意味があると思う?」
「あの時、あんな出来事があったけど、その時どう思った?」
お互いに普段何を思い、何を感じ、そしてどんな状況なのかを話すことは、お互いを知ることに繋がります。
昔やっていたことを伝える
昔やっていた趣味とか部活とか、夢中になったことや小学生の時に、ハマっていた遊びは何かを、仕事とは関係なしに伝えるようにします。もしくは中学生で見ていた漫画や音楽、映画などでもいいでしょう。
相手が過去にやってきたことから、仕事で生きる長所や特性、能力や才能を発見する場合があります。
そうやって過去のことを理解することで、その人の現在も理解することができ、関係性が深まっていきます。そしてその時に、課題やテーマが浮き彫りになる場合があります。
「人間関係に悩んでいる?」
「言いたいことが言えていない?」
「心にゴミを溜めている?」
「チームのメンバーに何か許せないことがある?」
そういった、チーム内の関係を深めるための課題やテーマ、目的が浮き彫りになってくるのが、目的のない社内コミュニケーションです。
もし課題や乗り越えるべきテーマが出てきたら、以下のようなことを試してみてください。
- もし、社内の誰か二者間で問題が起こったなら、1人が仲裁に入って、3人で話してみる。
- もし、今の仕事でその人の長所や武器が生きていないなら、発揮するようにサポートしてあげる。
- もし、仕事にやりづらさがあるのなら、一緒に考えて改善してみる。
という感じに、今のチームの課題やテーマを浮き彫りにして、関係性を深めることでより良いチームにしていきます。
「深める」社内コミュニケーションで活性化した事例
関係性を深めて社内コミュニケーションを活性化させて、輝くよいチームになるために必要な方法は、とにかく時間を取ることです。
例えばランチを一緒に食べたり、3時のお茶タイムを開いたり、こうしたことを普段からやるしかありません。
ある女性社長が勤めるネット通販の会社の事例をお伝えします。
今までのネット通販のモデルは、商品をたくさん作って、注文を受けたものを次々売っていく方法でした。
確かにこの方法は利益も上がり、お客様の満足度も高かったためにずっと続けていました。
しかしある時、社長さんは次のように疑問に思います。
「仕事は朝礼から開始し、個別に簡単に昼を食べて、終了時刻まで誰とも話さずに業務を進めるのは、うまくいかない」
そこでわざわざ時間をとって、無目的なコミュニケーションの時間をとるようにしたのです。
最初はランチを皆で食べる時間を作ったり、3時のティータイムの時間を作ることにしました。
社内の最初の反応は、作業時間が減ったことにより非効率だとか、無駄だというものでした。
ところが実際に、ティータイムの時間を取ってみたら、お互いに抱え込んでいた不満が勘違いや誤解だったと知ることができたのです。
間違って解釈しないで欲しいのは、言いたい放題言うことで、悪い雰囲気になった訳ではないということです。お互いのそれぞれの心の摩擦とコミュニケーションの摩擦のようなものが、ティータイムを通じて解消しました。そして、そこからさらに距離感がグッと縮まっていったのです。
その後、どうなっていったのかというと、社員同士がお互いに協力して仕事ができるようになりました。
今までは、自分の仕事を終えたら「先に上がります」という感じでした。それが少しずつ変わってきたのです。
「ちょっと手伝おうかな」
「あの人はこういう性格だから、ここまで私がやっておこうかな」
そのようにお互い協力しようという気持ちが出てきました。また、仕事を手伝うだけではありません。
「これ以上、仕事を抱えすぎると不調になるから助けを求めよう」
自ら助けを求めて、お互いが助けて助けられてという関係になり、お互いを理解するように関係が深まって行きました。
社内コミュニケーションを深めるには、とにかく時間をかけるしかありません。結果はすぐに出ないし、非効率で合理的ではありません。けれどもやり続けるから関係性が深まっていくのです。
関係を深める社内のコミュニケーションは、多くの場合、長期的で緊急性はありません。しかし、重要な課題やテーマとして現れてくるものです。そしてリーダーとして課題を発見するためには、無目的な会話をして、関係性を深めることが重要です。
まとめ
社内のコミュニケーションには二種類あります。関係性を進めてゴールに向かうために、目的をもってコミュニケーションをするのが一つ目。もう一つがチームがよりより関係性を深めてテーマや課題を見つけていく、会話に目的のないコミュニケーションです。
この二つによってチームの関係性が進みますし、深まっていきます。
世の中には、具体的な社内コミュニケーションの方法はたくさんあります。例えば、社員食堂を作るとか、社内通貨を作るとか、フリーアドレスにするなどです。しかし本質的ではありませんし、いきなりそのような施設や制度を作ることは難しいですよね。
それに自社に合っているかどうかはやってみなければ分からないので、リーダーは試行錯誤し続けるしかありません。
またコミュニケーションツールも、社内のメンバーやリーダーの特性によって合う、合わない、があります。
新聞が合う人は新聞だし、メルマガが合う人はメルマガになります。そもそも単にお茶をひたすらする、ということもあります。なので自分たちの得意不得意やメンバーの特性、業務プロジェクトの内容によって変わってくるので、試行錯誤を続けて合うものを見つけて欲しいと思います。
すると、本当にいいチームやいい組織、いい社内の雰囲気になっていきます。
なので、もしあなたが社内コミュニケーションを円滑にしたいと思うのなら、この記事をブックマークをするなどして、何度も繰り返しこの記事を読んでみてください。
ちなみにコミュニケーション能力の鍛え方については、以下の記事で書いたので併せて見てみてください。