石田梅岩の思想と名言|都鄙問答という商人道の教えを解説
牛窪俊浩です。
石田梅岩は江戸時代に活躍した商人です。
石田梅岩は、都鄙問答(とひもんどう)という相談者とのやりとりを通して、仕事観や生き方を伝えました。そして、その教えは石門心学と呼ばれるようになりました。
石門心学では、世界に類を見ない、日本人のおもてなし精神をわかりやすく伝えています。そして、 石田梅岩の仕事観は、100年を超える老舗企業の仕事観と多くの点が一致しています。
もしかしたらあなたは、ビジネスの成長や、働き方改革のために、石田梅岩の思想を取り入れようと考えているかもしれません。
そこでこの記事では、老舗企業を研究し、実際に老舗企業をコンサルティングもしている小田真嘉さんに監修していただき、石田梅岩の思想についてお伝えします。
繁栄するビジネスマインドを取り入れ、長期的な繁栄を目指したいとお考えなら、ぜひこの続きをお読みください。
目次
1.石田梅岩とは
石田梅岩は、江戸時代後期に生きた商人です。
商人道としての心得や生き方を教え説き、その内容は自身が体験したものや仏教や儒教などの思想など、とても多岐に渡ります。
梅岩の教えはやがて「石門心学」と呼ばれるようになりました。名前の由来は定かではありませんが、「石田梅岩の門下に伝える心の学び」と捉えて良いと考えます。
石田梅岩の商売哲学では、以下のようなものが語られています。
・商業の役割
・商人の社会的役割
・商売に必要な倫理観
・商いにおける心得や知恵
どれも現在のビジネスにも十分に通用するものです。
石田梅岩の思想の根幹にあるのは、商売と道徳の融合です。
道徳のないビジネスは、自分が認められたい、自分が豪遊したいなど、終わりのない強欲主義に陥ってしまいます。
したがって「どうやって儲けるのか」も必要ですが、その根底には「どう生きるのか」が大事です。
江戸時代にお金を稼ぐ商人は、卑しい存在だと言われた中、石田梅岩は、商売の正当性を主張しました。
「お金は堂々と稼いだらいい。ただし、商売は正直と倹約の心を持って行わなくてはならないし、得た利益は、最終的に世の中のために役立てなくてはならない。」
そう伝えました。このようにして、当時の武士中心の世の中において、商人の地位や稼ぐことに関する間違った認識を正し、働き方や生き方を伝えました。
石田梅岩の説法は、対話を通して伝えていく問答形式であり、その方法は都鄙問答(とひもんどう)と呼ばれています。
2.石田梅岩の都鄙問答とは
都鄙問答(とひもんどう)とは、京都にいる梅岩に対して(都)、田舎の人間(鄙)が質問し、答えるという内容で、石門心学を伝える書物のことです。
あるテーマに対して参加者で討議して、結論を導くというゼミナール形式をとっていました。
つまりトップダウンのように、一方的に上から下へと答えを垂直に渡していくのではなく、師匠も弟子も共に水平に考え合い、意見をぶつけ合ってより良い結論に導く方法がとられたのです。
都鄙問答の冒頭で、石田梅岩は、「学問は心を知ることから始まる」と伝えています。
そして、心について知るだけではなく、知ったなら次に実行する必要があると説いています。
梅岩のいう実行とは、目の前のことに誠意を持って尽くすということです。
農家の人だったら、朝は暗いうちから畑に出て、一生懸命誠実に働き、田畑からたとえ一粒でも多く収穫しようと心がけることです。
年貢をしっかりと納め、余ったお金で父母の生活をまかない、美しく安らかに暮らせるように努めることです。
何事も怠ることなく、苦労をいとわずに一生懸命、誠実に努力したら、もちろん苦労は多いでしょう。ですが、間違ったことはしていないので、心は安定して清らかでいることができます。自然と礼儀正しくなり、不安や心配事が生じることはありません。
人は、周りとの関わりが気薄だと不安に思いますが、深く関われたのなら不安に感じることはありません。なので、相手のために日々誠実に過ごして働くことが大事です。
このように心を知り、道を極めるためには、知識や学問が必要ではなく、自分がすべきことに余念無く努める実行力が必要です。
そして都鄙問答は単なる商いや人生のための実用の書ではありません。石田梅岩は、商売を行いながら、自然の法則や宇宙論などの物事の原理原則を追求していきました。
そして自然の摂理にかなった商売を伝えています。ビジネスは稼ぐこと、儲けることはもちろん必要です。しかし、それだけが目的になってしまうと、終わりのない欲望を追い求めることになってしまいます。
仕事をすることで、お客様にいい商品やサービスを提供し、見返りとして気持ちよくお金を支払ってもらいます。儲けたお金を使ってさらに世間に役立つ商品を出して、多くの人に喜びと安心をもたらします。
これが自然の摂理にかなった商売です。続いて石田梅岩が発言した名言について、見ていきましょう。
3.石田梅岩の名言
石田梅岩の名言をここで2つ紹介します。
3-1.「真の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」
商売や取引における重点を自分ではなく、まず先方を最初におきます。その顧客優先の立ち位置こそ、商売繁盛でもっとも重要なことであり、勘どころであるという意味です。
化粧品の無料お試しキャンペーンや、スマホの無料アプリなどにもあるように、お客様からの信頼を得るために、まずはお客様に価値を与え続けることが重要です。
そしてお客様から信頼されてから、自分の利益を考えるようにします。
3-2.「屏風(びょうぶ)と商人はまっすぐであれば必ず立つ」
江戸時代に世間では、屏風と商人はまっすぐ立たないと言われていました。心がまっすぐでないから、という意味です。その時に、石田梅岩は以下のように答えました。
屏風は少しでも歪みがあれば、畳むことはできません。このため、床が平らでないと立てることは難しくなります。
商人も同じように常に本心から正直だからこそ(心が平らな床のように正直だからこそ)、信用を得て、ともに仕事をしていくことができるのです。
以上、石田梅岩の発言の中でもっとも有名な2つの名言をお伝えしました。ここからは石田梅岩の思想の「石門心学」についてお伝えします。
4.石田梅岩の思想「石門心学」
石田梅岩の石門心学は主に「正直」「勤勉」「倹約」からなります。それぞれについて見ていきましょう。
4-1.正直
石門心学の一つ目が、正直についてです。
江戸時代は武士の「仁義」「忠義」の思想が美徳とされていた時代であり、金銭を儲けるという思想は当時、いやしいものという認識でした。
それは現代でも続いていて、利益を追求することに対して、ある種の嫌悪感を抱く人もいるかもしれません。
しかし、石田梅岩が伝えるのは、正当な理由で正直に稼ぐのであれば、恥じるべきことでもなければ、人道に反したことでもないと伝えています。
商人の役割は、売りたい人と買いたい人を繋ぐことで、その出会いを作った手間賃として、お金を受け取っています。この手間賃を受け取ることが問題、ということであれば、武士の俸禄(給料)も問題ということになります。
もちろん、儲けすぎは問題でしょうが、手間賃を受け取ることは、正当な権利と言えるでしょう。
そして売りたい人と買いたい人を繋ぐのに、商品とお金の流通が必要です。たとえば農家が野菜を売ろうとしても、近くにお客さんがいなければ、売ることができません。
野菜農家のために、野菜を欲しいお客さんの元に届け、お客さんから野菜代に加えて手間賃をいただく。こうして市場に商品とお金を流通させるのが、商人の役割です。
経済においての流通は、「血液の流れ」と表現することもできます。その血液の流れを起こす、心臓部が商人ということもできるのです。
前の章の名言でお伝えしたように、世間では商人は不誠実で正直でない、という認識がありました。
しかし梅岩は、「真の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」というように、お客様のことを優先的に考え、正直でいることで信用や信頼を得て仕事ができると伝えています。
4-2.勤勉
石門心学の二つ目が勤勉です。
日本古来の考え方の一つに、「働くとは、傍(ハタ)を楽にする行為である」」というものがあります。
傍とは、近くの人を指し、近くの人を楽にするために、人のために動くことが「働く」の意味です。
石田梅岩も一生懸命努力すれば、毎日の安心が得られる、と説いています。安心できる理由は、働くことで周囲から感謝され、周囲とのつながりを感じ、自分も嬉しくなるためです。
そして、仕事をすることは、心を磨き、礼儀礼節を備え、一人前の人間として成長する修業の場だ伝えています。
そうして、努力や勤勉に努めることで、心の豊かさを手にしていくのです。
金銭や物品などの有形の価値に対して、経験や認識、思考など見えないものを無形の価値と言います。
有形の価値は物品なのでなくなりますが、無形の価値は、人の記憶に生きるので無くなることはありません。モノで十分に満たされた現代において、とても重要な価値観だと考えます。
また、梅岩は都鄙問答の終わりに以下のように伝えています。
「どこの国でも、小さなことの中に大きなことを見抜くものは少ないようです」
小さなことの中に、大きなことを見抜くという言葉は、平凡な日常こそ、非凡な気づきを得られるものだ、と示しています。
人生を変えるためには、非常識な体験をする必要がある、と言われたりしますが、決してそうではありません。非日常を外に求めるのではなく、日常の中に非日常を見つけることが道を極める、ということです。
つまり目の前の仕事や目の前のお客様を、ちゃんと向き合うことが大事だということです。そして、そこに事業成功のヒントが隠されているのです。
4-3.倹約
最後の一つが倹約です。真の倹約とは、世間のために行う節約のことです。正直や勤勉と並んで、人が心得ておきたい「古くて新しい生活上の美徳」が倹約なのです。
倹約とは何か?に関して石田梅岩は4つのことを伝えています。
1)三つを二つで済ませる工夫
梅岩のいう倹約とは何でもケチにお金を使わない、という意味ではありません。
もともと三つ使っていたものを、無駄を排除して、二つで済ませられるようにすることです。
無駄に気づくことはもちろん、そもそものやり方を変えたり、新しい仕組みを作ることによって数を減らすことをします。
こうして本来、三つ使うはずだったものを二つに抑え、余ったお金をいざという時のためにとっておきます。
そして災害時などに現地で困っている人に対して、施しを行うようにします。このように世界(世間)のために行う節約が真の倹約と言えるのです。
2)人が本来持つ「正直な心」を取り戻す
二つ目は、人が本来持っている「正直な心」を取り戻すことこそが倹約だと伝えています。
人は生まれたときは裸です。そこから様々な欲を身につけてしまうのであり、本来は正直な心を持っているものです。
そこで、欲を脱ぎ捨てて、本来の生まれながらの正直な心に返るのが、人間の理想であり、これを可能にするのが、倹約の行為や心がけだと伝えています。
3)「もったいない」の思想
倹約に関する思想の3つ目は、「もったいない」です。
「もったいない」とは、本来のものの値打ちが分からずに、無駄にされてしまうことが惜しいという意味です。
対象のモノが持つ本質を把握した上で、最大限に活かすことが最大限の倹約法になります。
江戸時代はリサイクルがすごく進んでおり、江戸は当時、世界一の近代都市と言われていました。
雨水を生活用水にしたり、排泄物は、畑に肥料として撒いたり自然と共存しながら、無駄を最小限にとどめていました。
4)お金は人を助ける「役人」である
4つ目は、お金は人を助ける役人である、という考え方です。
給料は会社が支払うものと思われがちです。確かに給料は会社の儲けから得られます。しかし、さかのぼっていくと、儲けは製品を買ったお客様から支払われます。
すなわち給料は、会社を通して、お客様から支払われているのです。つまり、富の主は、天下の人びとということです。
そして、お金は個人のものではなく、本来は「公」のものなのです。
世の中が平和で何もないときは、お金は個人を支え、富をもたらすことになりますが、災害など、いざという時には、社会(公)のものとなります。
世間の人びとが困っているのなら、例えば以下のように足りないところにお金を流通させることが大事です。
・商売を通じてお金を流通させる
・寄付などを行い社会貢献の形で還元する
(もちろん、こうした活動を続けるためにも、手間賃としては受け取る必要があります)
このように、お金は「どう稼ぐか」、よりも「どう使うか」が大事です。これが倹約に関して梅岩が伝える考え方です。
このように石門心学では商人は正当な理由で正直に働き儲けること、勤勉に努めて周りが楽になるように働くこと、倹約を行い、公のためにお金を使うことが大事とお伝えしました。
ここからは、石門心学や都鄙問答では伝えきれなかった、石田梅岩の商人道についてお伝えします。
自然界の原理原則に則った繁栄の法則を、欧米と比較しながらお伝えします。100年企業の条件や、有名企業の思想と繋がる部分がありますので、ぜひこの先をお読みください。
5.石田梅岩の商人道
5-1.全員参加、現場主義
組織マネジメントは全員参加で行うことが必要です。上司と部下の関係で、上司が自分勝手な行動をしたり、乱れた生活をするようなことがあれば、周りと協議して、上司の態度を改めるように伝えることが大事です。
上司の行動が、これまで先代から受け継いできた理念を維持できないのであれば、改善することが必要です。
管理職と労働者、ホワイトカラーとブルーカラー。それを明確に線引きし、対立的に区分するの欧米流のマネジメントです。
日本流のマネジメントはそうではありません。松下幸之助でも、本田宗一郎でも、作業着を着て現場に駆けつけ、油まみれになりながら現場で試行錯誤します。そうした考え方は、欧米には理解されないことがあります。
大学を出たエリート幹部が、工員とランチをしたり、品質改善を一緒に議論するのはあり得ないことなのです。
日本では、対立ではなく、協調であり、トップダウン的な上下意識ではなく、ボトムアップ的な水平関係を重要視しています。
集団を束ねるリーダーに必要なのは、部下と対等な立場に立ったコミュニケーションを図ることであり、自らが仕事を実践してみせることなのです。
5-2.天地自然論
石田梅岩の伝える都鄙問答は、決して単なる商いや人生のための実用の書ではありません。ベースにあるのは、宇宙観とも言える本質です。
梅岩は商いのかたわら、宇宙論、存在論、生命論に到るまで、深遠な真理を追求して行きました。
松下幸之助や稲盛和夫など、現代の経営者はこぞって宇宙観や自然観に基づいた経営理念や経営手法を作っていることをご存知でしょうか。
人間が自然の一部である以上、商売も自然の一部です。自然の摂理に叶う商売の形にすることで、事業は発展・繁栄していきます。
商売はお金を儲けることだけが目的になってしまうと、満たされない欲望だけを追い求めることになってしまいます。
お客様にとっていい商品、いいサービスを提供し、見返りとして気持ちよく代金を支払ってもらう。このお金を使ってさらに世の中に必要な商品をお届けし、多くの人々に喜びと安心をもたらすようにします。
このようにあらゆる場面で「そのやり方は、天地自然の原理に従っているのか」を追求し続けることで、事業や仕事が繁栄・発展していくのです。
次に、100年続く、老舗企業がどんなことを行い、繁栄しているのか、その共通点についてお伝えします。
5-3.100年以上続く老舗企業の条件
100年以上続く老舗企業の条件は、以下の3つがあります。
1)家制度を主軸とした経営
→事業を代々続く家業として継承、存続、発展させてきたこと
→後継者を血縁以外で行う「養子制度」も活用する
2)不易と流行のバランスをとる
→長年の改革・繁栄となる伝統を重んじる一方、時代の変化に合わせて流行にも敏感に対応する。
3)利益よりも独自性やこだわりの追求
→儲けよりも、自社の強みや存在意義「わが社らしさ」に重点をおく
それぞれについて、詳しく解説していきます。
1)家制度を主軸とした経営
日本に多く見られる家制度を主軸とした経営は、短期的な瞬発力よりも、長期的な持続力を持つことが特徴です。事業拡大よりも、事業存続や次世代への継承に重きを置いています。
日本には古来より、長男をはじめとして、家族から後継者を選ぶ「世襲制度」がありました。
密に関わり、師弟関係として継承するこの方法は、口伝による継承が主となる為、独自技術が育ちやすいです。
利益よりも人間性重視の経営手法で、小規模でも独自の強みをもち、堅実な経営となります。
そのほか、家制度には、事業を長く継承するために養子制度もあります。跡取りの男子がいたとしてもあえて養子に継がせる場合もあります。「何より会社の継続を目的として後継者にふさわしい人物に会社を継がせるべき」という考えからです。
欧米に多く見られる『短距離走者型』に対して、日本の場合が堅実に長期的視点の『駅伝ランナー型』は、老舗企業に多く見られる経営手法ということができます。
2)不変と流行のバランスをとる
老舗企業の条件の二つ目は、不変と流行のバランスをとることです。
特に料理店というのは、伝統と革新のバランスで生まれてくるものです。
例えば、とある人気そば店は、味の改良に日々取り組んでいます。時代とともに変化する顧客の味覚や環境は変化するため、改善の取り組みが必要なのです。
しかし、そうやって日々取り組むことで「いつも変わらない味だね」と言ってもらえるのです。
「顧客第一」や「品質第一」、「身内を大切に」や「守り通すもの」など、変えていくものと守るべきものバランスを取りながら、古さの中に新しさを見いだすような、戦略が必要です。
3)利益よりも独自性やこだわりの追求
老舗企業の条件の三つ目は、利益よりも独自性やこだわりを追求することです。
値段や価格よりも数値にできない価値(=世界観)で売るようにします。
その商品に込められた逸話や秘話、エピソードやストーリー、理念や思い、目指す理想の世界を伝えることで、「この人(=この会社)から買いたい(=手伝いたい)」と思ってもらえるようになります。
思いや独自性、こだわりなど、価格以外の部分で勝負することで、繁栄する会社を作ることができます。
また、事業拡大など、事業の大きさや拡大よりも、長さや深さ、継続を目指すことが重要です。
力を注ぐ事業を選択し、やるべきことに集中することで、事業が継続し、発展していきます。
まとめ.働く意味を思い出す
石田梅岩の仕事観は、「おもてなし」「気配り」「お天道様に恥じない生き方」などということができます。
しかし、働き方や生き方に関する考え方は、戦後に欧米の思想が入ってきた頃より、大きく変わっていきました。
欧米流は、お客様と自分たち、買う側(客)と売る側(主)と対立の構図を作ります。その対立した相手にお金を払ってもらう、手段としてコストやサービスを提供するという思考です。『主客分離型』といえるでしょう。
それに対して日本流は、『主客一体型』と言えます。
「自分がお客様だったら、何をしてもらったら嬉しいか」と、まずは相手にサービスを提供して、そのお礼として手間賃をもらうという思考です。
根底にはお客様とともに喜び、栄えていこうという共存の関係があるのです。
日本人は、仕事以外でも取り立てて意識しなくても自然に気遣いができます。マニュアルに書かれた以上のことを、誰に言われるでもなく「こうやったら喜ぶかな」と工夫や気配りができるのです。
江戸末期から明治初期にかけて、数多くの外国人が日本を訪れました。鎖国下の日本の庶民は、圧政に苦しんでいるかと外国人の多くは思っていたそうです。
しかし、実際には、次のように感じたそうです。
「喋り、笑いながら彼らはいく。鼻歌を歌いながら働いている」
「日本人は物質的には貧しいが、心は豊かであり満ち足りている」
「これ以上幸せそうな人々は、どこを探しても見当たらない」
働くの意味は、傍(ハタ)を楽(ラク)にするという意味です。周りを楽にする行動が働くという意味であり、必ずしもお金を得ることではありません。
このように価格よりも価値に重きをおく精神は、遅くとも江戸時代から我が国特有の文化となっていたのです。
石田梅岩の思想は、江戸時代に規範とされた商人道であり、日本人が本来持っていた仕事観です。この思想を思い出し、自社に生かすことで、繁栄・発展する会社を作ることができます。
なので、ぜひ繰り返し読んで、石田梅岩の思想を自社に取り入れてもらえたらと思います。
(参考文献:魂の商人石田梅岩が語ったこと 山岡正義)