事業承継とは|引継ぎに必要なポイントと注意点を解説
事業承継とは、今の会社を現社長から後継者に託すことです。
事業承継には3種類あります。
- 先代の身内、もしくは血縁関係のない人に承継する場合
- M&Aで売却
- 引き継ぐ相手がなく、売り先がなくて廃業する場合
事業承継は、多くの経営者が直面するものですが、非常に難しい問題があります。
例えば親子関係が複雑に絡み合う場合もありますし、資産相続の問題もあります。さらには、創業者と後継者の人徳やカリスマ性の違いも影響します。
この問題を解決するために、具体的にどのように事業承継したらいいのか、これまで経営コンサルタントとして、1000社以上の経営者の指導を行ってきた小田真嘉さんに内容を伺ってきました。
事業承継というと、手続きやノウハウの引き継ぎなど業務的な部分に焦点が当たりがちです。でも大事なのは、実はもっと別の部分にあります。
それが、現代経営学の発明者と言われる、ピーター・ドラッカーが会社経営において、重要視している『方向性』です。特に事業承継では、この方向性が特に重要です。
この記事では、事業承継をどのようにしたらいいのか、具体的な方法をわかりやすく3つのステップにまとめました。
もし、あなたが事業承継において後継者にきちんと引き継いで、組織を繁栄させたいのであれば、ぜひこの先をお読みください。
(今回はM&A売却と廃業というのはおいておいて、事業承継についてのみお伝えします。)
目次
事業承継に必要な4つの要素
先代から後継者に引き継ぐ内容を、大きく分けると上の図のように4つあります。繁栄する会社組織を作るために、この4つの要素を引き継ぐことが必要です。それぞれについて説明します。
会社を構成する要素で、引き継ぎが必要なのが、一つ目『人・組織』です。
会社は人を採用し、雇用することで社員の生活の面倒を見ながら、一緒に同じ方向を向いて働く組織を作ります。
事業を引き継ぐにはまず、この『人・組織』を引き継ぐことが必要です。
そして二つ目は、その会社でこれまでやってきた商品に関する技術やノウハウ、さらには経営に関するノウハウも含めて引き継ぐ必要があります。
さらに三つ目は、会社が今まで長く築き上げてきた資産があります。
資産とは、キャッシュもありますし、不動産や株、ライセンスや権利など、そういった資産も引き継ぐことが必要です。
そして四つ目の、一番影響が大きいのが、事業者、先代の経営マインドです。
このように① 人・組織技術、② 技術・経営ノウハウ、③ 資産、④経営マインド の4つを引き継ぐ必要があります。
そして後継者側で行う事業の引き継ぎ方には、3つのパターンがあります。この3つのパターンは、後継者の特徴や特性に応じて変化させることが大事です。
後継者の引き継ぎ方の3パターン
事業承継を受けた後継者が引き継いで進める方法は以下の3つのパターンがあります。
- 会社の事業形態を、今まで通りの延長線上で、引き継ぐパターン
- 事業内容を工夫改善し、商品も改良しながらちょっと変えるパターン
- ガラッと『そもそも』を変えて、まさに新規事業立ち上げ、第二創業のようにガラッと変えるパターン
どのパターンがいいのか、というのは、会社の特徴や事業内容、その時の時代性(=時流)によって見定める必要があります。
さらにどのパターンで引き継ぐのかは、上記に加えて後継者の性格や特性、個性で決めていきます。
例えば、新しくてクリエイティブなことを考えるよりも、きっちりやることが得意な後継者であれば『今まで通り』になります。
もしくは、後継者が工夫改善をきっちりやるのが好きな、得意な、向いている人だったら『少しだけ変える』パターンになります。
でも、もし新しいことに対するチャレンジや、新しい時流などに敏感だという場合は、『ガラッと変える』ことになります。
この判断をどうするかは、後継者の性格や特性、個性によって変わります。
もう一つ、別の判断基準に、後継者の器というものがあります。
先代がこれまで乗り越えてきたこと、特に創業者の場合だとカリスマ性で会社をゼロから築き上げた経験がある場合があります。
こうしたパワフルさやエネルギッシュな雰囲気が、後継者にそこまでなかった場合、それをどう引き継ぐかが重要です。
時には、会社の規模をダウンサイズする必要もあります。すなわち、
- 後継者がどれぐらいの器なのか
- 受け止めきれるかどうか
- どれぐらいの規模で回せるのか
など、事業の規模を後継者の器の大きさに応じて、臨機応変に変更する必要があります。
もちろん、この器自体を大きくすることはできます。ただ、人には向き不向きがあるので、後継者がどれくらいの器なのかは見極める必要はあります。
そしてもちろんですが、事業承継するときに引継げないものもあります。また、乗り越えるべき3つの問題があります。
ここからは、引き継げないものや問題があったとしても、乗り越える方法ついてお伝えします。
事業承継で引き継げない3つ
事業承継で引き継げない3つとは、以下の通りです。
一つ目は、経営者の今までしてきた体験、経験です。
事業承継で多くの人が当てはまることの一つに、創業者から2代目に引き継ぐ場合があります。
創業者がたくさんの体験や経験をしていても、その内容をなかなか言語化できない時があります。
例えばそれは、社内での雰囲気だったり、組織の危機意識や感覚的なもの、肌感覚で感じ取る経営判断だったりします。
経験・体験は言語化しても肌感覚の部分までは引き継ぐことはできません。
二つ目は、先代が築き上げてきた信用と信頼です。
先代が創業者の場合は、長い間、築き上げてきた信用や信頼があります。
社内には創業者への恩義や愛着、想いなど、今まで面倒をみてもらったことに対する信用・信頼についていく、という人がいたりします。
これは、事業内容や将来性に対してではなく、創業者の人としての魅力に対する信用・信頼です。なので、こうした信用や信頼をそのまま後継者に引き継ぐことはできません。
そして三つ目です。創業者のカリスマ性やキャラクターは、何もせずに引き継ぐ事はできません。
特に創業者というのは非常に個性的で、キャラが強く、濃い個性で、カリスマ性があります。
それが後継者として親族、もしくは親族以外が事業承継すると、社内から後継者に対する物足りなさとか、「本当にこれでいいんだろうか?」などの不安感が出る時があります。
このように事業承継といっても、以下は引き継ぐ事はできません。
- 経験・体験
- 信用・信頼
- カリスマ性・キャラクター
さらにこれから事業承継の難しさというか、乗り越えるべき問題についてお伝えします。
事業承継で乗り越えるべき3つの問題
事業承継で乗り越えるべき3つの問題は以下の通りです。
事業承継が、なぜ難しいのか、というと、① 親子、② 相続、③ 組織問題など複雑に絡まったものが多いからです。
特に事業承継で多い事例に親族(親子)問題があります。
実は、お父さん・お母さんと息子・娘との問題がそのまま会社に反映され、それが事業承継の時に表面化する事があります。
わかりにくい所だと思いますので、どういう事なのかより具体的に説明します。
例えば、お父さんが、影響力のすごく強い創業者だったとします。
その時に後継者となる息子は、自分で思ってることや考えていることを言えない『お父さんの価値観に逆らえない子供』になってしまう場合があります。もしくは事業承継自体をやりたくなくなる、ということもあります。
このように親子関係というのが非常に複雑になることがあります。
なので、後継者としての立場ならば、
- どう親を説得するのか
- どう親を納得させるのか
- どう親を超えるのか
もしくは、
- だましだましでも、進めるのか
親子関係のそれぞれに場合によって違います。なので一概に
「2代目、3代目の皆さん、親に対しては、このように対処するのがセオリーです」
「後継者の息子さんにはこう伝えたら大丈夫です」
「事業承継だから親子関係は、この事例に当てはめましょう」
など、事業承継に親子関係が絡むので「この時はこう!」と、簡単には言えなくなります。これが事業承継を非常に難しくさせているのです。
そして、二つ目が、相続問題です。
今、国の優遇税制などが出て税金面というのは比較的見直されつつあります。しかし、創業者が先代の場合は、会社の株を多数を持っていたり、土地や建物の所有していることが多いので、相続が複雑になってしまう場合がほとんどです。
これを相続することによって、莫大な資金繰りが必要になる場合や、経営決定権も含めた相続問題になることがあります。
これが、一族で株を分担してたり、奥様だったり、娘さんや息子さん、もしくは、おじいちゃんやおばあちゃんなどの、親族に渡って株がバラバラに保有している場合もあります。
その時は、後継者がどこまで株を集めるのか、もしくはそのまま継続するのかを判断する必要があります。
もちろん先代のパワーバランスを、そのまま引き継げるわけではありません。なのでどこまで株を回収するのか、持つのかは、その会社によって全く変わってきます。
家族の形態や信頼関係・家族関係とか親族関係によっても違うので、この相続の問題の影響は大きいのです。
そして三つ目は、先ほどお伝えした組織と近いですが、社内の組織問題というのがあります。
事業承継すると、退職する人やがっかりする人、モチベーションが下がる人たちが出てくる場合があります。
なぜなら、特に創業の場合は従業員が社長についてきたので、意識的にも、無意識的にも、社長に求めるものをそのまま次の代の後継者に求めます。しかし、期待通りにならないことがあります。
会社のトップが変わる以上、すべてを完全に事業承継する事はできません。なので、開き直って「自分はこのスタイルだ!」と貫こうとしても社員ががっかりしたり、「私の役目は終わった」と離れる場合もあったりします。
また、後継者は、その強く求められる傾向に、必死に応えようとしてプレッシャー受けて潰れる場合もあります。
事業承継して組織を現状で維持するというのは、本当に難しいのです。
それでは、どうやって事業承継をしたらいいのかというと、そもそも経営者とは何なのか、大事な仕事は何か、というのを次のように一度見直す必要があります。
事業承継の3つのステップ
事業承継を実現するために、最初に会社が成り立つ要素を考えます。会社の製造業やサービス業も含めて大きく分類すると、営業部、生産部、管理部という風に分かれます。
会社の特質や代表する商品・サービスを作る生産部。そしてこの商品を販売する営業部、さらに組織全体を管理し、お金の流れや受注発注を行う管理部があります。
昔から経営とは、ヒト・モノ・カネ と言います。ヒトについては会社全体で組織づくりを行い、生産部でモノを作り、営業部と管理部でカネを抑えるという『ヒト・モノ・カネ』で会社が回り、成り立っています。
その上で経営者の役割とは方向性・企画・感化の3つであり、まずは方向性を定める事です。
方向性を定める
経営の方向性については、ピーター・ドラッカーという有名なコンサルタントがいます。
ドラッカーは、世界的に有名な人物で、大きな影響力を持ち、多くの経営者や大企業、グローバルの経営者、そして国の首相さえも、コンサルティングやアドバイスをした人です。
そのドラッカーが最も大事にしていたのが『方向性を定める』です。方向性を定めるために有名な『ドラッカーの5つの質問』があります。
社長がすべき重要な事は何か?というと
- ミッション
- ビジョン
- バリュー
の3つを定める事だ、とドラッカーは伝えています。この3つが最重要だと伝えていて、それ以外は、全てアウトソーシングで外注に任せることもできる、とも伝えています。
それくらい誰も代わりにすることができない、経営者の一番大事なことが、『会社がどっちの方向に進むのか』という方向性を指し示すことです。
方向の示し方は、先代と後継者の方向が一致している場合は、そのままで問題ありません。
そしてもし、後継者の思いが、若干でも違うのであれば会社の方向性は修正する必要があります。
さらに、もっと大きく、ガラッと変える新規事業のような感じであれば、全く大きな方向性を指し示す必要がある時もあります。
なので、事業承継する場合に会社の次の方向性は
- 先代と一緒なのか
- それともちょっと違うのか
- ガラッと変えるのか
のように、先代からの思いを踏まえた上で、後継者がどうしていくのかを決める必要があります。
その上で、ドラッカーの伝えるミッション・ビジョン・バリューとは何かをお伝えします。
ミッション・ビジョン・バリューの意味は以下の通りです。
- ミッション:会社の使命・会社の存在意義
- ビジョン:会社の目指す方向性・ゴール
- バリュー:ゴールに至るまでの価値判断と行動規範、ルール
これを決定するのが経営者が行う最重要項目です。会社の後継者においても、このミッション・ビジョン・バリューを明確にする、というのがとてもとても大事なのです。
ミッション・ビジョン・バリューをそのまま引き継ぐのか、自分なりに変えるのか、は判断が必要です。
これをせずしてその事業承継すると、そのままダラダラと惰性で行ったり、やらされ感や、後悔だったり、ひどい場合には、親を責めたり、会社のせいにしたりするので、まず社長の意志として方向性を定めることが必要です。
会社の現状を認識した上で、未来にどこを目指すのか?を明確にするのがビジョンです。
そしてそこに至るまでに、そもそもなんで会社はそこを目指すのか、というミッションを明確にします。
そこにいくプロセスの中で何を大切にしていくのか、どうやって進んでいくのか、というルールのようなものがバリューです。
このミッション・ビジョン・バリューを明確にすることが方向性を示すということです。
これがない状態で会社を進めるのは、コンパスが羅針盤がないまま航海すると同じ状態です。
海で方向性を見失ったりだとか、流れに流されたりしてしまって、本来行くべきとこじゃないところに行くことになってしまいます。
なので、方向性を定めることはとても重要なのです。
ミッション・ビジョン・バリューの決め方について、別の切り口で参考になる記事を書きましたので、必要ならこちらもお読みください。
参考記事:三方よしの意味だけでなく、あなたの会社に応用する方法
企画を作る
経営者がやるべきことの二つ目が企画を作ることです。
『会社として社会に貢献する事業を作っていくこと』これが企画です。
そこで進めているプロジェクトの中で、未来を創造し、顧客を創造し、価値を創造する。
すなわち、自分たちの商品やサービスを提供することによって、どんな未来を作っていきたいのか、どんな喜ぶ人たち、どんな社会を作っていきたいのか。
- そもそも自分たちにとって顧客とは、誰なのか。
- 会社にとってどんな人たちに向けた商品、どんな人たちに喜んでほしいのか。
- その人たちに具体的に何を喜んでほしいのか、その顧客にとっての価値ってなんなのか。望むことや喜び、成長とはなんなのか。
など未来を創造し、顧客を創造し、価値を創造するような企画(=プロジェクト)を立ち上げることが経営者には必要です。
そして立ち上げたらそれで終わりか?といったらそうではなくて、周りを“感化させて”人を動かしていくことが必要です。
感化して組織を作る
人を感化させるとは、自分の熱意を相手に移して相手の熱意を高めることです。人を感化する目的は、やる気を高めて動いてもらうこととと、盤石な組織を作ることです。
後継者が組織作りできない理由は、感化力が低く、相手を感化できないからです。
すでに十数年や数十年経営を続けている先代は、相手を感化することをずっとやり続けているので、感化力が自然と高くなり、非常に高い感覚を持っています。
しかし、新しい後継者にとってはこの感覚が、まだわからず、できないので、未熟だったりします。なので、感化力を高めるのがすごい大事です。
こうした感化力を身につけるために、重要な事は
- 自分がそもそもどの方向に向かいたいのか?
- 会社としてはどうなりたいのか?
- お客さんをどのようにお手伝いしたい?
という未来を明確にしていき、そして社内と社外、お客様に熱く語るようにします。
「こんなふうになりたいな」
「こんなことやってやっていたいきたいんだ」
と熱く語り続けて、周りを信じ、そして周りからも信じられるようになるのが『感化』です。
経営者の本来の仕事、特に事業承継は、
- 方向性を指し示せるように
- 企画を立てられるように
- 人を感化できるように
先代はこの点を考えて伝える必要がありますし、後継者はこれをしっかりと受け取る必要があります。こうして先代から後継者にバトンを引き継いでいきます。
事業承継するときの注意点
先代と後継者でやることは以下のように、それぞれあります。
財務や技術ノウハウの部分は一旦置いておき、最初にマインドや人の部分に関して先代と後継者で注意すべき点をお伝えします。
先代の注意点
先代の注意点として何よりも大事なのは、一つ目の『① とにかくひたすら熱く後継者に語る』ことです。
- 自分が経験・体験してきたこと
- 会社の歴史
- お客様とどんなことがあり、それをどう乗り越えて、どんな風に喜んでもらえたのか
過去の歴史と自分の体験と、先代としての理想や未来のようなものを、とにかく語り、語り続けて欲しいのです。それは経営マインドや意志の承継ともいえるでしょう。
- 仕事の目的、そもそも仕事とは何なのか
- 仕事をすることでどんな喜びがあるのか
- 会社の目的、どうしてこの会社は存在するのか
- 理念は、理想はどんなものか
など、働きがいの部分を自分の経験を通して語るようにします。
- 働くことで、こんなに自分が豊かになった
- 生きがいを感じるようになった
- こんなに多くの仲間たちが、社員がついてきてくれた
など、仕事の目的や会社の目的、人生の目的をたくさん語って欲しいのです。
そうやって熱量を語って、先代の熱意を後継者に与えるというか、感化するようにします。
しかし、熱意を持って語るとしても、「思った通りにやってね」という強制ではなくて、二つ目の『② 後継者を信じて任せること』が必要です。
ちゃんと伝えたと思ったのなら、もうそこからはいちいち口は出さないようにします。
これは全くサポートしない、ということではなく、フォローはもちろん必要ですが、具体的な指示をいちいち細かく出す事はしないで、とにかく任せるようにします。
失敗や経験を乗り越えてた先に、今の先代があるはずです。
でもついつい後継者に失敗させないように、失敗しないようについ、口を出しやすくなります。そこは信じて任せましょう。
三つ目は『③ 根回し』を行なって欲しいのです。
この根回しとは、表立って引き継ぎの部分での根回しではなくて、裏でちゃんと動いておく、という事です。
具体的には、社内に対してであれば、今まで支えてくれたナンバー2だったり、キーマンとなる従業員、ベテランの社員に「次の代、頼むぞ。」と。
「後継者は、頭に血がのぼりやすいから、そうなった場合は女性秘書の◯◯さんに声を掛けるようにしなさい」
「後継者は、合理主義に偏って、他の社員がついてこなくなる場合があるから、サポートをして欲しい」
など、後継者がこんな場合はこうしてね、ああしてねっていうのを、社内の人たちに、事前に根回ししておくのです。
これは後継者に知られる必要はなくて、陰ながらやっておく事です。
そして、社外に対しても、専門のアドバイザーとか税理士の方、顧問弁護士の方や自分が支持している先生など、そういった方々に対して
「何かあったら後継者をサポートし、見守って欲しい」
という風に社外の人についても根回しをしておきます。
究極的には、先代は後継者をとにかく『立てて、任せて、去る事』です。
後継者の注意点
後継者が引き継ぐときの注意点は、とにかく『聞く』ことです。
聞く相手は、先代と社員、お客様です。
それから先代に聞くことに関しては、もし、今まで先代から聞いていない場合は、積極的に聞いて欲しいのです。
- どうしてこの会社をやろうとしたのか
- なぜこの商品を扱ったのか
- そこにどんな思いがあったのか
- どんな人生を歩んできたのか
- 大変なとき、ピンチの時はどう乗り越えたのか
- すごく良かった時は、どんな時だったのか
- 社員との深い思いではどんなことか
- 何を大事にしながら経営してきたのか
- 将来的にこの会社をどうしていきたいのか
- どういう風になったら嬉しいのか
- 絶対に変えてはならないことは何か
- 変えてもいいことは何か
などを自分から積極的に聞くようにして欲しいのです。
これが後継者が行う一つ目の『聞く』です。
次に二つ目です。後継者は、ともかくハラを決めることが大事です。
ハラを決めるとは何かというと、これから会社の後継者としてやっていくに当たり、例えば、会社が借金などの負債や大きな赤字を抱えることもあります。
トラブルの対処をこともあります。先の見えない問題に直面することもあるでしょう。
事業承継するということは、社員の生活の面倒を全部見ることだし、会社の歴史を背負い、お客様の期待など、もろもろを背負うことになります。
当然、大きな責任・プレッシャーも来るでしょう。
そんな時でも「よし!やっていくぞ!」とハラを決め、覚悟を決める。
そうしたことは後継者には絶対に必要なことです。
そうは言っても、経営は一人では絶対にできないし、全て自分が行うわけではなく、仲間が必要です。
特に経営難になった場合に必要なのは味方であり『③ 仲間を増やす』ことがとても重要です。これが三つ目になります。
これは先代の根回しと同じように社内と社外があります。
社内であれば自分を支えてくれそうな人、例えば長年先代についていた方々に頭を下げたり、キーパーソンになりそうな人に助けて欲しいと伝えるのも必要です。
また社外においては。後継者仲間として、すでに会社を引き継いでいる人や、もしくは先輩経営者、同じ境遇で頑張っている同士をたくさん作っておきます。
そうした人に自分の思いや理念を語りながら、味方を増やしていきます。
先代、後継者に関わらず、経営者はそうやって社内や社外にたくさんの参考になって、応援してくれて、心の支えになる人を作っておくものです。
後継者に必要なのは受け取ること
後継者にとって必要なことは、一言でいうと『受け取ること』です。
この意味は良いも悪いも光も闇も、資産も負債も、全部受け取る、ということです。
受け取るということについては、何にもないゼロから創業するよりも、実は受け取って事業承継する方が正直難しかったりします。
確かにゼロからやった方が早いんじゃないか?と思う場合もあります。
そんな時こそ、これまでお伝えしたいろいろな資産だったり、今までの歴史だったり、エネルギーというのを、しっかりと感謝をして受け取ることが重要です。
自分はこういうお役目があるんだ、と役割と役目と考えて受け取ることです。
当然、ネガティブな批判や、いうことを聞いてくれない、などの問題やトラブルは起きるけれども、これも真摯に受け止めるようにします。
これは先代から後継者に引き継ぐための洗礼や、最初の試練、修行、経営者としてのトレーニングだと思って、良いも悪いも全て受け取ることが必要です。
事業承継はもちろん簡単ではありません。
だからこそ、先代の思いを積極的に聞き、理念や理想、働きがいや生きがい、世の中にとって、引き継ぐ会社がいかに重要なものなのかを知った上で、事業承継を行ってもらえたらと思います。
もし、相談がある場合は、これまで1,000社以上の相談に載ってきた小田真嘉さんまでお気軽にご相談ください