リーダーとして力を発揮するための8つのリーダーシップ・スタイル論
「世の中にはどんなリーダーシップのスタイルがあるんだろう?」
「自分に合うリーダーシップのスタイルはどれだろう?」
そのような疑問にお答えします。
リーダーシップを発揮することができれば、従業員を動かし、組織で成果を出していくことができます。
そしてリーダーシップを発揮するには、まずは自分に合ったリーダーシップのスタイルを発見することが大切です。物静かな性格なのに、無理に熱く従業員を引っ張っていこうとしても、多くの場合上手くいきません。
自分に合ったリーダーシップのスタイルがわかれば、自分が無理をしなくても、従業員が動いてくれ、組織で成果を出すことができます。
そして自分に合ったリーダーシップのスタイルを知るには、まず世の中にあるリーダーシップ・スタイルを知ることが重要です。
そこで今回の記事では、「8種類のリーダーシップ・スタイル論」を1つ1つ詳しくお伝えしていきます。
どのリーダーシップ・スタイルが自分に合っているか、1つ1つチェックしながら読み進めてみてください。
目次
8種類のリーダーシップ・スタイル論
リーダーシップ・スタイル論として、以下の8つを紹介します。
- クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイル
- ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル
- サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップ
- コンセプト理論
- PM理論
- マネジメント・システム論
- マネジリアル・グリッド論
- SL理論
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
1.クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイル
クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイルは、「アイオワ研究(参照:クルト・レヴィン―その生涯と業績)」という実験から導き出されたリーダーシップ理論です。
「アイオワ研究」を指導したクルト・レヴィンは、「社会心理学の父」と呼ばれる、有名な心理学者です。
クレト・レヴィンは、「アイオワ研究」から、リーダシップのスタイルを以下の3つに分けました。
1-1.専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップは、リーダーからの命令や指示によって、部下やメンバーが動くスタイルです。
目標設定や作業計画、スケジュール管理など、全ての行動にリーダーが関与します。リーダーのトップダウンで全ての物事が進んで行くため、リーダーの方向性に間違いがなければ、失敗を最小限に抑え、成果を出すことができます。
しかし、部下やメンバーの意思が無視されやすく、リーダーに対して不満が生まれやすくなります。
また、部下やメンバーが自分で考えて行動する機会がなくなるので、各々が成長し、自立していくことが難しくなります。
なので、部下やメンバーの成長を促したい場合は、専制型のリーダーシップは不向きです。
専制型リーダーシップは、未成熟な部下が多い組織で成果を求められる場合や、危機的状況で一時で危機に強力なリーダーシップが必要な場合などで効果を発揮します。
1-2.民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップは、目標設定や作業分担など、組織で決定すべきことは部下やメンバーが自分たちで決定し、リーダーはそれをサポートする形のリーダーシップです。
リーダーは議論の場を設け、そこで意見を出し合い、意思決定がスムーズに行われるようにサポートします。
部下やメンバーの個々の意見を反映させていくので、組織に協調性や一体感が生まれます。そのため、ひとりひとりが仕事に対して主体性を持ちやすく、部下やメンバーの成長しやすくなります。
しかし、組織としての意思決定を行うのに時間がかかるため、短期で成果を必要とされる場合には、不向きです。
民主型リーダーシップは、中長期で見て、組織全体の士気を高めていき、部下やメンバーの成長を促したいときに効果を発揮します。
1-3.放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップは、部下やメンバーの行動にリーダーが関与せず、全てを任せるスタイルです。この場合、部下やメンバーは個性やアイデアを自由に活かせるため、各々が経験を積みやすく、成長も早くなります。
しかし、組織としての目標を徹底周知できていないと、組織としてのまとまりがなくなり、協調性が失われます。
また、自己管理能力が低い人や仕事へのモチベーションが低い人は、脱落してしまう可能性があります。
上手くいくと部下やメンバーの成長が著しいですが、失敗すると誰も成長せず成果も全くでない、ハイリスクハイリターンのリーダーシップスタイルとも言えます。
一般的には、研究開発部門など、個人のレベルが高い専門家が集まる組織で効果を発揮するスタイルです。
「アイオワ研究」では、4つの集団で実験したときに、20人中19人の子供が、民主型リーダーシップ・スタイルが「よい」と答えたそうです。
そのため、クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイルで考えるのであれば、基本的には民主型リーダーシップ・スタイルを軸にし、状況に応じて専制型や放任型も取り入れるようにしていくのが良いと言えるでしょう。
次は、「ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル」についてお伝えします。
2.ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル
ダニエル・ゴールマンは、アメリカの心理学者で、EQ(Emotional Intelligence:こころの知能指数)を提唱したことで有名な人物です。
著書『EQ こころの知能指数(講談社)』は、全世界で500万部、日本でも80万部の販売部数を記録する大ベストセラーになっています。
そんなダニエル・ゴールマンは、リーダシップのスタイルを、EQの構成要素を基盤に、6つのスタイルに分類しています。
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
2-1.ビジョン型リーダーシップ(Visionary Leadership)
ビジョン型リーダーシップは、組織メンバーに組織が目指す夢を語り、共通の夢に向かってメンバーを動かすスタイルです。
リーダーとして夢を語るものの、夢まで到達する方法は押し付けず、メンバーたちの自主性に任せて進めていきます。6つのスタイルの中で、最も前向きなリーダーシップのスタイルです。
ビジョン型リーダーシップの長所として、メンバーの組織への帰属意識が高まることが挙げられます。
短所は、リーダーが語る夢がメンバーに共感してもらえない場合は、リーダーシップが取れないことです。無理やり夢を押し付けると、メンバーの反発を生んでしまいます。
ビジョン型のリーダーシップを発揮するために必要とされる能力は以下です。
- 自信を持つ
- 冷静な自己認識能力
- 共感スキル
- メンバーを鼓舞する
- 情報を惜しみなく公開する
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、ビジョン型リーダーシップが向いている可能性があります。
また、ビジョン型でリーダーシップを発揮したい場合には、これらの能力を磨いていくと良いでしょう。
2-2.コーチ型リーダーシップ(Coaching Leadership)
コーチ型リーダーシップは、個々人の希望を組織の目標に結び付けて、メンバーを動かしていくスタイルです。
個々人の希望を組織の目標に結び付けるための1対1の対話が、非常に重要になります。
メンバーが人生で叶えたいことを持っていたり、モチベーションが高かったりする場合に特に効果的です。
コーチ型リーダーシップの長所としては、メンバーの仕事へのモチベーションを維持できることや、1対1の対話でメンバーが長所と短所を自覚できるようにサポートできるといったことが挙げられます。
短所は、メンバーを個人的に理解していないと発揮できないことや、モチベーションが低いメンバーには効果がないことです。
コーチ型のリーダシップを発揮するためには、以下の能力が必要とされます。
- カウンセリングマインド(メンバーと対話し要望や意見を引き出す能力)
- メンバーへの観察力
- 共感力
- 伝える力
- 育成力
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、コーチ型リーダーシップが向いている可能性があります。
また、コーチ型でリーダーシップを発揮したい場合には、これらの能力を磨いてみてください。
2-3.関係重視型リーダーシップ(Affiliative Leadership)
関係重視型リーダーシップは、課題や目標達成よりも、部下との結びつきや感情面を重視するスタイルです。
関係性を重視するため、組織内のモラルや信頼関係を高める効果があります。
関係重視型リーダーシップの長所としては、組織内の意思疎通が図りやすいことが挙げられます。
短所は、目標や成果が後回しになりやすいことや、相手を気遣うあまりに伝えるべきことを伝えるよりも対立を避けることの優先順位が高くなりやすいことです。
関係性重視型のリーダーシップを発揮するためには、以下の能力が必要とされます。
- 周りと協調すること
- 友好関係を築くこと
- 共感スキル
- 紛争解決力
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、関係性重視型リーダーシップが向いている可能性があります。
また、関係性重視型でリーダーシップを発揮したい場合は、これらの能力を磨いてみてください。
2-4.民主型リーダーシップ(Democratic Leadership)
民主型リーダーシップは、メンバーからの意見を集め、個々の意見を取り入れながら進めていくスタイルです。
メンバーが主体性を持ちやすいので、個人のモチベーションを高めやすいと言えます。
民主型リーダーシップの長所としては、組織でアイデアが生まれやすいことや、リーダーに決断力が無くても組織で決断できるといったことが挙げられます。
短所は、結論が出るまでに時間がかかることや、メンバー同士が衝突すると激化する可能性が高いことです。
民主型のリーダーシップを発揮するためには、以下の能力が必要とされます。
- オープンマインド
- 協調性
- 紛争処理能力
- 影響力
- チームワークを構築する
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、民主型リーダーシップが向いている可能性があります。
また、民主型リーダーシップを発揮したい場合は、これらの能力を磨くことで民主型で組織を引っ張っていくことができます。
2-5.ペースセッター型リーダーシップ(Pacesetting Leadership)
ペースセッター型リーダーシップは、リーダーが高レベルのパフォーマンスを目指し、手本を見せていくスタイルです。
リーダーがプレイヤーとしても活躍していくスタイルだと言えます。
ペースセッター型リーダーシップの長所としては、モチベーションが高く優秀なメンバーが揃っているときには、メンバーが著しく成長しやすいことが挙げられます。
短所は、リーダーができることを当然のようにメンバーに求めるため、メンバーにプレッシャーがかかり、不安が大きくなりやすいことです。
また、リーダーがプレイヤーとして何でも一人で行ってしまうため、メンバーの成長機会が失われる可能性もあります。
ペースセッター型リーダーシップを発揮するには、以下の能力が必要とされます。
- 達成意欲
- 決定権を握るスキル
- 共感スキル
- 感情コントロール
- 協調性
- 自己管理能力
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、ペースセッター型リーダーシップが向いている可能性があります。
また、ペースセッター型リーダーシップを発揮したい場合は、これらのスキルを身に付けることでペースセッター型で組織を導いていくことが可能です。
2-6.強制型リーダーシップ(Commanding Leadership)
共生型リーダーシップは、メンバーを支配し、命令に即座に従うことを要求するスタイルです。
リーダーひとりで裁量権を握り、メンバーの意見を潰すなど、最も非効率なリーダーシップスタイルだと言われています。
強制型リーダーシップの長所としては、緊急時に明確な方向性を示すことで、危機的状況を切り抜けやすいことが挙げられます。
短所は、メンバーがモラルや自尊心、モチベーションを失い、組織への帰属意識が希薄になっていくことです。
強制型リーダーシップを発揮するには、以下の能力が必要とされます。
- 影響力
- 達成意欲
- 決定権を握るスキル
- 自己管理能力
- 共感スキル
あなたがこれらの能力をすでに持っている場合は、災害時など緊急な場面で強制型リーダーシップを発揮するのに向いている可能性があります。
また、強制型リーダーシップを発揮したい場合は、これらの能力を磨くことで、緊急時を乗り切ることができます。
以上が、「ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル」です。
EQを使いこなして、6つのリーダーシップスタイルを使えるようになる方法は、ダニエル・ゴールマンの著書『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』にも詳しく書かれています。もし興味があるのなら、併せて読んでみてください。
次にご紹介するのは、「サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップ」です。
3.サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップ
サーバントリーダーシップとは、アメリカのロバート・グリーンリーフ博士が提唱したリーダシップ哲学です。
「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えに基づいています。
このリーダーシップ哲学では、リーダシップのスタイルがサーバントリーダーと支配型リーダーに分けられています
3-1.サーバントリーダー
サーバントリーダーは、組織メンバーへの奉仕や支援を通じて、メンバーからの信頼を得て、主体的に協力してもらえる状況を作ります。
組織メンバーの能力を引き出し、働きやすい職場を作ることができます。
サーバントリーダーには、以下の10の属性が求められます(出典:サーバントリーダーシップ)。
- 傾聴
- 共感
- 癒し
- 気づき
- 説得
- 概念化
- 先見力、予見力
- 執事役
- 人々の成長に関わる
- コミュニティづくり
サーバントリーダーになるには、まずは組織メンバーに奉仕や支援をしていくことが重要です。
組織メンバーの話を真摯に聞き、どんどん協力していきましょう。
あなたがすでに上記の能力を持っている場合は、サーバントリーダーシップを発揮して組織をまとめていくと、上手くいきやすいかもしれません。
3-2.支配型リーダー
サーバントリーダーの反対が、支配型リーダーです。組織メンバーを支配し、強制的に命令を聞かせていくスタイルです。
支配型のリーダーシップスタイルは、事業環境に変化がなく、リーダーが正確な判断を下せる場合は効率よく機能します。
しかし、事業環境の変化が激しい場合は、トレンドに追いついていくことが厳しく、事業の停滞や衰退を招く可能性があります。
以上が、ロバート・グリーンリーフ博士が提唱したリーダシップ哲学によるリーダーシップの分類です。
続いて、「コンセプト理論」を紹介します。
4.コンセプト理論
コンセプト理論は、ビジネスにおける環境や組織の状況、メンバー構成など、状況に応じてどのようなリーダーシップを発揮すべきかを研究したものです。
コンセプト理論は、条件適合理論を継承した理論です。その条件適合理論では、「良いリーダーシップは絶対的なものではなく、相対的なものである」ことが重要とされています。
コンセプト理論では、場面に応じて以下の5つのリーダーシップを使い分けると良いとされています。
- カリスマ型リーダーシップ
- 変革型リーダーシップ
- EQ型リーダーシップ
- ファシリテーション型リーダーシップ
- サーバント型リーダーシップ
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
4-1.カリスマ型リーダーシップ
カリスマ型リーダーシップは、リーダーが並外れた力を発揮することで、組織を引っ張っていくスタイルです。
メンバーに明確なビジョンを提示し、同時にリスクも一手に引き受けることで、会社を業界トップに押し上げるような成果を出していくことができます。
組織メンバーのニーズや感情にも対応し、理解を示すため、メンバーの満足度も高い傾向にあります。
ただし、強烈なリーダーシップに甘んじたメンバーは、依存的になりやすく、自主性を失っていきます。
また、メンバーがリーダーに対して能力の差を感じてしまい、後継者が育ちにくくなるというデメリットもあります。
なので、会社や組織を一気に引き上げたいときに、発揮すべきリーダシップのスタイルです。
4-2.変革型リーダーシップ
変革型リーダーシップは、大胆な改革によって、経営危機に直面した企業の業績を回復させるスタイルです。
まず組織メンバーに危機感を感じてもらえるような空気を作り、業績が回復するビジョンを構築します。
その上で、変革チームを中心に自発的な活動を促し、早い段階で小さな成功をもたらすことで、小さな成功が積み重ねられていき、業績を回復させることができます。
リーダーシップの権威者であるハーバードビジネススクールのジョン・コッター教授は、「リーダーシップは “変革能力” であり、マネジメントは “管理能力” である」と述べています(出典元:第2版 リーダーシップ論)。
なので、リーダーシップを発揮するときには、変化を恐れないことが大切です。
経営危機からの脱出や組織の復活が必要な場合には、変革型のリーダーシップを発揮してみましょう。
4-3.EQ型リーダーシップ
EQ型リーダーシップは、リーダーが組織メンバーの感情やモチベーションを高めていくスタイルです。
EQ型のリーダーシップを発揮するには、まず自分の感情を理解し、自分の感情をコントロールするところから始まります。
自分の感情を理解することで、他者の感情も理解できるようになり、メンバーの感情やモチベーションを高めていく方法がわかるようになります。
EQ型のリーダーシップを発揮することで、メンバーはリーダーに対して忠誠心を持ち、仕事に自発的に取り組むようになります。
なので、組織のチームワークを良くしたい場合に、発揮すべきリーダーシップです。
4-4.ファシリテーション型リーダーシップ
ファシリテーション型リーダーシップは、リーダーは中立的な立場で、組織メンバーから意見や情報を引き出し、メンバーの主体性を中心に組織を動かしていくスタイルです。
ファシリテーション型リーダーシップを発揮するには、メンバーから意見を引き出すための質問力・傾聴スキルが重要です。
メンバーが主体性を持って仕事に取り組むため、各々が成長しやすい環境を作ることができます。
そのため、メンバーの自主性を高めたい場合に、発揮すべきリーダーシップです。
4-5.サーバント型リーダーシップ
サーバント型リーダシップは、リーダーがメンバーに対して、召使のように奉仕や支援を行いながら組織をまとめてくスタイルです。
リーダーがメンバーに対して奉仕や支援を行うことで、メンバーが顧客に奉仕や支援を行うように促すことができ、顧客満足度を上げることができます。
ただし、リーダーはただの召使ではないため、組織のビジョンや最終の意思決定はリーダーが行います。
なので、顧客満足度を上げたい場合に、発揮すべきリーダーシップです。
以上がコンセプト理論における「場面ごとに発揮すべき5つのリーダーシップ」でした。
あなたが今、置かれている状況に合わせて、発揮すべきリーダーシップのスタイルを決めることも大切です。
続いては、「PM理論でわかる4つのリーダーシップタイプ」を紹介します。
5.PM理論でわかる4つのリーダーシップタイプ
PM理論は、日本の社会心理学者である三隅二不二らによって提唱された理論です。
PM理論では、リーダシップは以下の2つの機能によって構成されると考えられます。
- P(Performance function)機能:目標達成機能
「納期を厳守するために細かく進捗管理をする」「毎月の目標達成のために、綿密に計画を立てる」「ルールや規則を守るために、厳しくメンバーを指導する」など
- M(Maintenance function)機能:集団維持機能
「メンバー間の人間関係に対立がある場合などに、積極的に関与をする」「メンバー1人1人を気づかい、頻繁に声をかける」など
この2つの機能をどの程度持っているかで、リーダーシップのスタイルが決まります。
組み合わせは、以下の4つに分けられます。
5-1.PM型
P機能とM機能の両方がバランスよく備わっているリーダータイプです。
集団の成果を上げる能力も、集団をまとめる能力も高い、理想的なリーダーシップ像と言えます。
5-2.Pm型
P機能は高いが、M機能は低いリーダータイプです。
たとえば、組織メンバーの感情は置いておいて、毎月のノルマをストイックに達成しようとするリーダーは、Pm型です。
組織として成果を出せますが、メンバーの不満がたまりやすいという短所があります。
5-3.pM型
P機能は低いが、M機能が高いリーダータイプです。
組織で目標を達成する能力は低いですが、集団をまとめる能力が高いため、メンバー同士の関係性を良くし、チームワークを高めることに向いています。
5-4.pm型
P機能とM機能の両方が低いリーダータイプです。
組織で目標を達成する能力も、組織をまとめる能力も備えていないため、リーダーシップを発揮することが困難なタイプです。
以上が、「PM理論でわかる4つのリーダーシップタイプ」です。
PM理論では、自分が今、どの型のリーダータイプになっているかを確認し、足りない能力を補ってPM型を目指していくことが大切です。
足りない能力がわかれば、それを磨けばリーダーとしてのスキルが高められるので、自分が磨くべき能力を見つけるために使ってみてください。
それでは、続いては「マネジメント・システム論」を紹介します。
6.マネジメント・システム論
マネジメント・システム論とは、ミシガン大学社会調査研究所所長のリッカートの調査によって提唱されたリーダーシップ行動論の1つです。
リッカートは、リーダーシップに関わる管理システムを以下の4つの分類しています。
- 権威主義・専制型(システム1)
- 温情・専制型(システム2)
- 参画協調型(システム3)
- 民主主義型(システム4)
この4つのシステムは、「業績」と「従業員のモチベーション」のどちらをどのくらい重視するか、で分けられています。
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
6-1.権威主義・専制型(システム1)
権威主義・専制型(システム1)は、徹底的に業績を重視したリーダーシップスタイルです。
組織メンバーには一切の意思決定権がなく、全てをリーダーが決定します。
クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイルの専制型リーダシップやダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイルの強制型リーダーシップと同じです。
強烈なトップダウンで組織が運営され、メンバーは懲罰や脅迫によって無理やり動かされます。
6-2.温情・専制型(システム2)
温情・専制型(システム2)は、基本的には権威主義・専制型(システム1)と同じ、リーダーがすべての権限を持つスタイルです。
権威主義・専制型(システム1)との違いは、多少はメンバーの意見を吸い上げることもある、ということです。
ただし、トップダウンで業績重視である部分は変わらないため、意見を言っても、「それは無理」と一蹴されることもあるような雰囲気になります。
6-3.参画協調型(システム3)
参画協調型(システム3)は、仕事の進め方などの大半をメンバーに任せて進めていくスタイルです。
リーダーは、組織全体の目標や方針は定めていきますが、個々の案件についてはメンバーに任せていきます。
「業績」と「従業員のモチベーション」のどちらも同じくらい重視するようなバランスです。
権威主義・専制型(システム1)や温情・専制型(システム2)と比べ、メンバーが意見を言いやすく、メンバー同士の交流も積極的に行われます。
6-4.民主主義型(システム4)
民主主義型(システム4)は、仕事の進め方のほとんどをメンバーに任せ、「従業員のモチベーション」を優先して進めていくスタイルです。
メンバーにとって働きやすい環境のため、モチベーションが向上し、成果に繋がっていきます。
業績を重視しない分、組織全体の成果が減少する可能性も考えられるため、どこまでメンバーに任せるかが課題になります。
以上が、マネジメント・システム論の4つのシステムです。
基本的には、システム1からシステム4に向かっていくほど、業績が上がっていきます。
そのため、今あなたの組織がどのシステムで運営されているかを把握し、次のシステムに移行していくことが業績アップにつながります。
なので、リーダシップのスタイルとしては、次に目指すべきシステムのスタイルを採用することが大切です。
続いて、「マネジリアル・グリッド論」を紹介します。
7.マネジリアル・グリッド論
マネジリアル・グリッド論とは、リーダーシップの行動スタイルを「人間に対する関心」「業績に対する関心」という2軸で考え、それぞれを9段階で評価するリーダーシップ行動論です。
1軸につき9段階で評価するため、81タイプに分類をすることができます。
その81の分類を、以下の典型的な5つのリーダーシップ類型に分類しています。
- 消極型(1.1型)
- 人間中心型(1.9型)
- 仕事中心型(9.1型)
- 理想形(9.9型)
- 中庸型(5.5型)
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
7-1.消極型(1.1型)
人にも業績にもほとんど関心を持たない放任型のスタイルです。
リーダーとしての責任も放棄しがちで、事なかれ主義のため、リーダーとしてはあまりふさわしくないと言えます。
7-2.人間中心型(1.9型)
業績よりも人を重視する関係性中心型のリーダーです。
組織メンバーからの信頼があり、働きやすい職場を作ることに優れています。
しかし、業績を犠牲にする傾向があるため、ときに組織として目標を達成できないことがあります。
7-3.仕事中心型(9.1型)
人よりも業績を重視する権力型のリーダーです。
仕事で成果を出す部分では優秀ですが、人を駒のように扱い、命令を下すため、組織メンバーの不満がたまったり、メンバーがつぶれるといった問題が起こる可能性があります。
7-4.理想形(9.9型)
人にも業績にも強い関心を示す理想のリーダーです。
部下と信頼関係を築き、働きやすい職場を作るだけでなく、業績を上げるために組織メンバーと切磋琢磨することができます。
業績を上げるための仕事の計画や管理も怠らず、個々のメンバーへのサポートも惜しみなく行います。
7-5.中庸型(5.5型)
人にも業績にもバランスよく関心を持つ妥協型のリーダです。
根本的に「業績を追えば人が犠牲になり、人を優先すれば業績が犠牲になる」という思いがあるため、ソコソコのところでバランスをとろうとします。
折り合いをつけるのは非常に上手いですが、大胆な変革を行ったり、業界トップの成果を出すのは難しいタイプです。
以上が、マネジリアル・グリッド論の5つのリーダーシップスタイルの分類です。
マネジリアル・グリッド論では、理想形(9.9型)を理想としています。
しかし、消極型(1.1型)を除けば、理想形(9.9型)以外でも場面によってはリーダーシップを発揮していくことができます。
なので、まずはマネジリアル・グリッド論を用いて、あなた自身の人と業績に対しての関心度合いを分析し、現時点で発揮しやすいリーダーシップスタイルを把握することが大切です。
その上で、関心度合いが薄い部分に対しては、より関心を持てるように努力していくことで、理想形(9.9型)に近づいていくことができます。
続いて、最後に「SL理論」を紹介します。
ちょっと長くなっていますが、これが最後なので、ぜひ最後までついてきてください!
8.SL理論
SL理論とは、部下の成熟度合いに応じて、最適なリーダーの行動をとっていくというリーダーシップ行動論の1つです。「対応型リーダーシップ」とも言われています。
SL理論は、「リーダーとはこうあるべきだ」という他のリーダーシップ論とは異なり、「メンバーはひとりひとり違う人間なのだから、成熟度合いや状況に応じてここに対応する必要があるよね」というスタンスです。
部下の成熟度合いにより、必要なリーダーシップは以下の4つの型があります。
- S1:教示的リーダーシップ
- S2:説得的リーダーシップ
- S3:参加的リーダーシップ
- S4:委任的リーダーシップ
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
S1:教示的リーダーシップ
教示的リーダーシップは、成熟度が低いメンバーに対して必要とされるリーダーシップです。
仕事のゴールや仕事の手順を明確にして、リーダーが監督することで、メンバーが安心して仕事を進められるようにしていきます。
S2:説得的リーダーシップ
説得的リーダーシップは、S1型で教えてきたメンバーが成熟度を高めてきたときに取るべきスタイルです。
ある程度仕事に慣れてきたメンバーに対して、その仕事の価値や意義を伝え、質問や疑問点には積極的に答えていきます。
まだ具体的な仕事の手順の指示は必要な段階です。
なので、業務指示を行いつつ、仕事の価値や意義をメンバーに浸透させていく段階と言えます。
S3:参加的リーダーシップ
参加的リーダーシップは、能力は高いけれども、自分で意思決定ができなかったり、意欲が低かったりするメンバーに対して必要とされるスタイルです。
リーダーがメンバーに対して積極的にコミュニケーションをとり、褒めたりアドバイスしたりします。
それにより、部下が自信をつけて、自主的に行動できるように促していきます。
S4:委任的リーダーシップ
委任的リーダーシップは、能力も意欲も高いメンバーに対してとるべきスタイルです。
能力も意欲も高いメンバーは、自ら考え行動することができるので、あれこれ指示を出す必要がありません。
なので、基本的にはメンバーのやり方に任せて、困ったときにはいつでもアドバイスできる姿勢でいます。
以上が、SL理論の4つのリーダーシップスタイルです。
SL理論を用いることで、メンバーの成長を促すことができ、仕事への意欲も高めていくことができます。
あなたの組織にいるメンバーが今どのくらいの成熟度にあるかを見極めることで、とるべきリーダーシップのスタイルも決まってきます。
以上が「8種類のリーダーシップ・スタイル論」でした。
これら8種類のリーダーシップ・スタイル論を使っていくことで、あなたに合ったリーダーシップのスタイルを見つけることができたり、あなたの会社の状況や部下の成熟度に合わせて取るべきリーダーシップスタイルを選べたりできます。
量が多いので、一度で内容をすべて頭に入れるのは難しいと思います。
なので、あなたのスキルや立場、会社の状況が変わるたびにこの記事を読み直して、都度最適なリーダーシップスタイルを選んでいけると、効率よくメンバーを導いていくことができるはずです。
まとめ
リーダーシップ・スタイル論は、以下の8種類があります。
- クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイル
- ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル
- サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップ
- コンセプト理論
- PM理論
- マネジメント・システム論
- マネジリアル・グリッド論
- SL理論
これら8つのリーダーシップ・スタイル論を知ることで、あなたのスキルや立場に合ったリーダーシップのスタイルを見つけることができます。
ぜひ、組織メンバーを動かし業績を上げていくためにも、この記事を参考に自分に合ったリーダーシップのスタイルを見つけてみてください。