社員のモチベーションが低下する3つの原因と向上させる4つの方法
牛窪俊浩です。
経営者やリーダーが頭を抱える悩みの一つが、社員のモチベーション問題です。
社員のモチベーションを今より上げることができたら、もっと効率的に業務は進み、結果も出やすくなります。
しかし、社員に情熱を込めるよう伝えても、逆効果になる場合もあります。相手の意識のコントロールは不可能です。相手のモチベーションを上げるには別のアプローチが必要です。
そこでこの記事では、1000社以上の経営者の相談に乗ってきた、経営コンサルタントの小田真嘉さんから伺った「社員のモチベーションを高める秘訣」をお伝えします。
もし、社員のモチベーションをさらに高めて、業績をより改善したいと思うのなら、ぜひこの先をお読みください。
目次
1.モチベーションとは「動機付け」や「原動力」のこと
そもそもモチベーションとは何か、についてお伝えします。
モチベーション(motivation)は、「人が何かをする際の動機づけややる理由、目的意識」と訳すことが出来ます。
ただ一般的には、モチベーションが上がった、下がったと表現するように、「何かをする意欲や気力、原動力」という意味で使われます。
社員のモチベーションを上げる方法を深く理解するためにも、モチベーションについてもう少し詳しくお伝えします。
1-1.モチベーションの三つの段階
モチベーションには、三つの段階があります。
具体的にお話ししましょう。
モチベーションが高くなる場合というのは、やりがいや働きがい、生きがいを感じる時です。
そして以下のように、段階が進むごとにモチベーションがより一層高まっていきます。
第一段階:やりがいの段階
第二段階:働きがいの段階
第三段階:生きがいの段階
例えば、「私はこの仕事が楽しい」と、”自分が楽しい”と感じるのがやりがいの段階です。
「お客様からこんな声をいただいた」「喜んでもらえた」と、”誰かが喜んでいる”事に喜びを感じているのが働きがいの段階です。
そして「この仕事を続けてきてよかったなあ」と、お客様が喜んでくれたことを語り合いながら、お酒を飲んだり、ご飯を美味しく食べたりして、仲間たちと”喜びを共有する”働きが出来ているが、生きがいの段階です。
やりがい→働きがい→生きがいというように段階が進むごとに、モチベーションが上がっていきます。
そして「モチベーション」をより深く理解するために、「位置エネルギー」に例えてお伝えします。
1-2.モチベーションと位置エネルギーの関係
モチベーションを、高校物理で習う「位置エネルギー」と考えてみましょう。
位置エネルギーとは、地面に置いてある物体より、高い場所にある物体の方がエネルギーが高いという物理法則です。
先ほど、段階を進むごとにモチベーションが上がる(高くなる)とお伝えしました。モチベーションが高い状態は、保有するエネルギーが高いという状態と言えます。
具体的にどういう状態かというと、自分のためだけではなくて、人のために貢献しようとする意識が生まれていくということです。
モチベーションが高い人は、仕事への意欲も高く、自ら勉強し、会社の売上に貢献することはもちろん、お客さまにも価値を提供しようと頑張ることができます。
逆に、モチベーションが下がってしまうと、仕事への意欲も低くなり、勉強しなくなり、会社の売上に貢献しなくなり、お客様のことを考えられなくなっていく…という状態になってしまいます。
1-3.モチベーションが高い人、低い人の違い
また、モチベーションが高い人は、以下のような特徴があります。
- 大きな志や夢を持っている
- 高い目標を持っている
「あの人がいるおかげで組織が成り立っている」と言われ、仕事で活躍する魅力的なリーダーには、大きな志や夢、高い目標を持っていて、それでいて影響力があります。
そして、自分が欲しいものや、やりたいことが自分のためだけではなく、家族や職場、会社や地域もしくは日本、世界のためになるなど、関わっている範囲が広いのがモチベーションが高い人の特徴です。
周りの幸せが自分の幸せになっているし、自分の夢が当たり前だと思っているし、高い理想を必ず叶えたいと思っていて、自分と掲げた未来が一体化している状態の人です。
一方、モチベーションが低い人は、保有するエネルギーが低く、自分のことばかりを考えている状態の人が多いです。
モチベーションが低いと仕事への意欲は薄く、自分を成長させようという意識もなければ、会社のためやお客様のために行動しようという意識も生まれません。
モチベーションが低い状態の人は、以下のような考えや傾向があります。
- 自分の利益を優先する
- 過去の失敗に引きずられてネガティブ思考になっている
- やりたいことがない
- 漠然と、昨日の延長線上で生きる(新しいことに挑戦しない)
- 惰性で過ごしている
モチベーションが低いと、周りへ良い影響力は発揮できません。むしろ、社内に暗い雰囲気を漂わせたり、敵を作ったりなど、周りに悪い影響を与えてしまう可能性があります。
ただ、モチベーションが高い低いというのはその時の「状態」にすぎません。物体を高い位置に持ち上げれば位置エネルギーが高まるように、人の持つエネルギーを高めてあげればモチベーションも高くなっていくのです。
そして、モチベーションが高い人は、もともとモチベーションが高かったわけではなくて、高くする習慣と低くならないような習慣、もしくは下がっても上げる習慣を身に着けているのです。
モチベーションを高くするには、管理の習慣、日々の努力が大事です。そのためには、何をしたらモチベーションが下がっていくのかを知る必要があります。
2.社員のモチベーションが低下する3つの原因
社員のモチベーションが低下する3つの原因は、以下の通りです。
- 仕事にやりがいを見いだせないから
- ネガティブな思考を繰り返すから
- モチベーションは自然と下がっていくものだから
それぞれについて、詳しくお伝えします。
2-1.仕事にやりがいを見いだせていないから
モチベーションが下がる原因の一つ目は、仕事にやりがいを見いだせないから、ということです。
仕事にやりがいを見いだせない場合は、やることが無駄に感じられて、高い目標や夢を持てなくなり、位置エネルギーが下がり、仕事をする気が無くなっていきます。
例えば、上司への報告資料ばかりを作って、実務が進まない場合に「こんなことをやっている場合じゃない」とやっていることが無意味に感じられる場合もあります。
その仕事にやりがいや、目的を見いだせない「やらされ仕事」と感じた時にモチベーションが下がっていきます。
やりがいを見いだせない人に対しては、その仕事をやりきることでどんなメリットや意義があるのか、本人の理想が高まる形で伝える必要があります。
2-2.ネガティブ思考を繰り返してしまうから
社員のモチベーションが低下する別の原因に、ネガティブ思考を繰り返す、ということがあります。
例えば、やりたくない上に、期日が迫っている仕事や、自分の能力を超えた仕事をやらねばならない時に、失敗したことをあれこれ想像して、不安感を募らせて、心の中でネガティブな言葉を投げかけます。
「期日を守れなかったら、大変なことになる」
「失敗したらどうしよう」
「この仕事はやりたくないなあ」
生産性のないネガティブな言葉を繰り返すと、セルフイメージが下がって、位置エネルギーが下がっていきます。
ちなみに前向きで発展的で、今後につながるような思考やシミュレーションならば、エネルギーは下がるのではなく、逆に上がることになります。
2-3.モチベーションは自然と下がってしまうものだから
三つ目の原因は、モチベーションは自然と下がる、というものです。
仕事というのは、すればするほど疲れるようにもともとエネルギーを使うものです。なので、働くだけでエネルギーが下がって、モチベーションも下がっていきます。
例えば新入社員は、入社当時はやる気に満ち溢れていて、どんなことがあっても、会社や業界をよくしていこう!と意気込むことが多いです。が、日々の忙しい業務に追われて、少しずつ「ダルいなあ」とだんだんモチベーションが下がっていき、エネルギーも下がっていきます。
また、新人というのは、トラブルはつきものですし、感情のコントロールがうまくできない部分もあります。なので、上司に叱咤激励された時に、「自分はなんてダメなんだ・・・。」と必要以上に落ち込んだりすることがあります。もしくは、また、飲み会で上司の愚痴を言い合ったりして、ネガティブな感情を増大させて、著しくエネルギーが下がることもあります。
なので、仕事をするにあたって「モチベーションは下がっていくもの」と、まずは認識しておきましょう。
そして、ここからはモチベーションを高めるためにはどうしたらいいのかをお伝えします。
3.社員のモチベーションを上げる4つの方法
モチベーションを上げるには、下がらないこと、そして上げていくことが重要で、方法は以下の4つがあります。
- 自分のモチベーションを下げないようにする
- 社員一人ひとりに気を配る
- 仕事の目的や方向性を共有する
- 感謝の気持ちを伝え合う
それぞれについて解説します。
3-1.自分のモチベーションを下げないようにする
あなたが社員を管理する立場にいるのであれば、まずは自分のモチベーションが下がらないようにすることが大切です。
例えば、自分のモチベーションが下がった状態(仕事の意欲が低い状態)だと、仕事を雑にやったり、周りと協力しなくなっていきます。そしてその行動が部下の目に入り、部下も「上司が雑なんだから自分も雑でいいや…」と、悪い影響が広がってしまいます。
結果、周囲の人たちも仕事に対するやりがいが感じられなくなっていき、モチベーションが下がっていってしまうという悪循環が起きる可能性があります。
なので、社員ののモチベーションを高める(もしくは下げない)ためには、まずは自分が下がらないようにすることが大事です。
そのためにも、高い理想を持つようにしてみて下さい。
自分の理想の姿をイメージし、志を立てて進みたい未来を明確にします。未来を想像するだけでも、モチベーションが高まっていくものです。
また未来のことをイメージする時は、ネガティブに考えるのではなく前向きに考えるようにします。
そして使う言葉にも注意しましょう。明るくて発展的で、周りを温かく、軽い気持ちになるような言葉を使っていくことが大事です。
「大丈夫だよ、よし、頑張ろう」という安心感を持たせる言葉や、「こんな凄いことになったらどうする!?」とワクワクしてニヤニヤしてしまうような言葉など、自分に対しても周りに対しても、こうした温かい言葉をかけてみてください。周りだけでなく、自分の心も温かくなってきます。
3-2.社員一人ひとりに気を配る
社員一人ひとりに気を配ることで、相手のモチベーションを上げるもしくは下げないようにすることが出来ます。
なぜなら人は関心を持たれていないことが分かると、自己重要感が下がり、モチベーションも下がるものだからです。
社員が今どんな仕事をしていて、進捗はどれくらいで、どんな悩みや課題を抱えていて、どれくらい助けが必要なのかなど、ちゃんと気を配ってあげましょう。
メールやチャット上だけでなく相手をしっかりと物理的に見てあげたり、言葉をかけたり、気持ちを向けたりと具体的に意識することが大事です。
「この人は今、どういう状況なのかな」
「何を考えているのかな」
「この人の振る舞いや行動は、どう思ってしたことなのかな」
「どのような気持ちで仕事に向き合っているのかな」
そのように、しっかりと社員に気を配ることが大切です。
3-3.仕事の目的や方向性を共有する
社員のモチベーションを上げるためにも、仕事の目的や方向性を共有するようにしましょう。
なぜなら、目的や方向性が共有できていないと、すれ違いや伝達ミスなどが発生して、仕事のモチベーションが下がってしまうかもしれないからです。
仕事の目的や方向性を共有するのは、プロジェクトなどの特別な場面だけではなく、日々の打ち合わせや簡単なミーティングでも実施します。
また、あなたの立場や役職が上なのであれば、仕事に対する夢や理念などを語って、「なぜこの仕事をするのか?」や「この仕事は社会にどのように貢献するのか?」など、方向性を伝えられるといいでしょう。
自分がやっている仕事が誰かのためになると分かれば、仕事への意欲が沸いてくるものです。
3-4.感謝の気持ちを伝え合う
社員のモチベーションを上げるためには、感謝の気持ちを伝えあうことが重要です。
例え小さいことであっても、社員が仕事をしてくれたらちゃんと「やってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えるようにします。
感謝を伝えることを継続していくことで、周りもあなたの言動を見習って、感謝の気持ちを伝えあうようになっていきます。
ただ、相手に感謝の気持ちを伝えたときに、そっけなかったり、とくにリアクションがなかったりと、思ったような反応が返ってこない時もあります。
しかし、相手の反応や返答が思った通りでなくても、イライラせず、期待もせず、それでも気持ちを向け続けることが大事です。
またあなたからの感謝だけじゃなくて、お客さまからの感謝の声も集めて、社員やチームで共有してみて下さい。この記事の前半でもお伝えしたように、お客様の喜びをみんなで共有することに喜びを感じるようになれば、生きがいが感じられ、社員のモチベーションも上がっていきます。
自分たちは喜ばれることをしているんだ、本当に人の役に立っているんだ、と思える働き方を社員同士で伝え合って、応援しあっていく関係づくりを目指していきましょう。
4.まとめ
今回お話をうかがった小田さんは、何人も何人も何社も何社も、計1000社以上の人たちと関わってきたそうです。その中で実体験から得た、社員のモチベーションを上げる秘訣をお伝えしました。
モチベーションを上げるために、やりがいや働きがい、生きがいを見いだし、ネガティブ思考にならないように意識してみてください。
そして、社員一人ひとりに気を配り、仕事の目的や方向性を共有し、感謝の気持ちを伝えあってみてください。
社員のモチベーションが高くなっていけば、業績が上がるだけでなく、お客様を幸せにして、世の中にも貢献出来るようになっていくはずです。
なのでもし、社員のモチベーションを高めたいと思うのなら、ぜひこの記事でお伝えしたことを実践してみて下さい。