経営者・起業家・リーダーのための仕事の秘訣
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2020.03.02 更新|2020.03.02 公開| 仕事・ビジネス

新規事業に必要な5つのストーリーの作り方

新規事業に必要な5つのストーリーの作り方

「新規事業の展開をストーリー化したい」

「金融機関や投資家を説得させるストーリーを作りたい」

そのような要望にお答えします。

新規事業のストーリーを作れると、事業計画の完成度が高まります。

事業計画の完成度が高まれば、金融機関や投資家を説得しやすく、資金の調達もしやすくなるでしょう。

すると、新規事業が進めやすくなります。

また、社内で新規事業を任された場合にも、新規事業のストーリーが作れれば、上司や取締役を説得しやすくなるはずです。

逆に、新規事業のストーリーがないと、あなたがその事業をやる理由や予測した売り上げの裏付けが伝わらず、金融機関や投資家、上司を説得するのが難しくなります。

そうなると、新規事業が進められません。

なので、新規事業を成功させるためには、事業のストーリーを作ることが大切です。

そこで今回の記事では、以下の2つのことをお伝えしていきます。

  1. 新規事業に必要な5つのストーリーの作り方
  2. 新規事業のストーリーを作る3つのメリット

まずは、「新規事業に必要な5つのストーリー」をお伝えします。

この5つのストーリーさえ押さえておけば、新規事業のストーリー作りの完成度が飛躍的に高まります。

1.新規事業に必要な5つのストーリー

第1章では、「新規事業に必要なストーリー」として、以下の5つを紹介します。

  1. 自分のストーリー「なぜ自分がこの事業をやりたいのか?」
  2. 私たちのストーリー「なぜ私たちがこの事業をやらなければならないのか?」
  3. 現在のストーリー「なぜ今、この事業をやるべきなのか?」
  4. 顧客のストーリー「顧客の生活はどう良くなっていくのか?」
  5. 事業展開のストーリー「どのように事業が進んでいくのか?」

これら5つのストーリーを話していくことで、周りの人を動かしていくことができます。

人を動かす方法の1つに「自分自身が高い理想を掲げる」という方法があります。

高い理想を情熱を持って語ることで、相手が触発され、「それなら応援したい!」と思ってくれやすくなります。

人の動かし方は、別記事『人を動かす力を得るために必要な考え方・伝え方・原理原則』で詳しくお伝えしていますので、ぜひ併せてお読みください。

この5つのストーリーは、周りの人に「新規事業で目指すあなたの高い理想」を伝えることができます。

では、「具体的にどうストーリーを作ればいいか」を、1つずつ詳しくお伝えしていきます。

1-1.自分のストーリー「なぜ自分がこの事業をやりたいのか?」

新規事業に必要なストーリーの1つ目は、「自分のストーリー」です。

自分のストーリーでは、「なぜ自分がこの事業をやりたいのか?」を語ります。

自分のストーリーを話すうえで重要なことは、「その事業をやりたいと思うようになった背景を人生を通して語る」ことです。

たとえば、新規事業で介護事業に取り組みたいとしましょう。

このときの「なぜ自分がこの事業をやりたいのか?」の答えが、「シニア世代に最期まで笑って過ごしてほしいから」では、ストーリーにはなりません。

理由としてもありきたりで、周りの人から見て「あなたが介護事業をやるべき理由」にはならないでしょう。他の人が同じことを言っても、内容として成立してしまうからです。

しかし、「シニア世代に最期まで笑って過ごしてほしい」と思った背景を人生経験とともにストーリーで話すことで、印象は大きく変わります。

たとえば、以下のような感じです。

私が幼い頃、両親が離婚し、母に引き取られました。母は私を育てるために頑張って外で働いてくれていました。

なので私は、ほとんど祖母に育てられたんです。でも、全然寂しくはありませんでした。祖母はいっつも笑顔で優しく接してくれて、そんな祖母と一緒にいるだけで私も笑顔になれたからです。

だから私は、祖母に最期まで笑って過ごしていて欲しいって思うんです。

祖母だけではありません。今のシニア世代は、今の日本を作ってきた人たちです。その人たちのおかげで今の私たちの生活があります。

つまり、今の人たちが笑顔で暮らせているのは、シニア世代のおかげだと思うんです。だからシニア世代には、最期まで笑顔で過ごしてほしい。

でも、介護が必要になると、自分の思い通りに体が動かず、気が立ち、家族や周りの人とうまくいかなくなる人が増えます。その結果、周りに嫌われて孤独になる人も増えています。

そんな現状を変え、シニア世代が最期まで笑顔で過ごせる環境を、私が新しく始める介護事業で作っていきたいと思うのです。

このように、自分の人生経験とセットで語ることで、「自分が新規事業をやる理由」がより明確になります。

ストーリーを聞いてくれる相手にも、本気さや熱意がより伝わるようになるでしょう。

すると、「この人にこの事業をやってもらいたいな」という想いが芽生え、力を貸してくれるようになります。

1-2.私たちのストーリー「なぜ私たちがこの事業をやらなければならないのか?」

新規事業に必要なストーリーの2つ目は、「私たちのストーリー」です。

私たちのストーリーでは、「なぜ私たちがこの事業をやらなければならないのか?」を語ります。

私たちのストーリーで重要なことは、新規事業をやる上での自社の強みやその強みを獲得するまでの歴史を語ることです。

たとえば介護事業であれば、自社が介護事業に取り組む理由としては、「これまでシニア向けの製品を多く扱い、シニア層の顧客が多いから」などと答えることが多いと思います。

しかしこの理由では、シニア向けの事業に取り組んでいる企業なら、どこも同じ強みを持っていることになります。

なので、その強みを獲得するに至ったストーリーもセットで語ることで、「私たちがこの事業をやるべき理由」を強化します。

たとえば、以下のような感じです。

当社では、創業者が掲げた『一生笑顔』という経営理念をもとに、シニア世代の生活をサポートする商品を多数展開してまいりました。

その結果、多くのシニアから支持され、新たな商品を市場にリリースしても常に一定以上の売上を出すこともできるようになりました。

しかし、売上が上がるだけで満足せず、経営理念のより大きな実現を考えた結果、シニア層の顧客を獲得した強みを活かし、介護事業に進出することにしました。

このように、会社の強みを獲得した歴史を語ることで、新規事業をやるべき理由がより強化されます。

また、他の事業で結果を出してきたストーリーを語ることで、相手に「新規事業でも同じようにやってくれるかも」と思ってもらえる可能性があります。

「新規事業でもうまくいきそう」と思ってもらえれば、資金調達が非常に有利になります。

1-3.現在のストーリー「なぜ今、この事業をやるべきなのか?」

新規事業に必要なストーリーの3つ目は、「現在のストーリー」です。

現在のストーリーでは、「なぜ今、この事業をやるべきなのか?」を語ります。

現在のストーリーでは、主に新規事業で参入する市場の歴史や今後の流れを語っていきます。

たとえば介護事業であれば、以下のような感じです。

これまでの介護の現場では、ほとんど人の手で介護をしていました。しかし、すでに現場の人手不足や老々介護の問題が出てきているように、人の手で介護をしていくやり方が限界に来ています。

今後の人口減少と高齢化を考えれば、今から介護業界の体制を変えていかない限り、近いうちに破綻してしまうはずです。

だからこそ、今私たちが介護業界に進出し、新しいやり方を確立することで、人口減少時代でも介護してもらう人全員が十分な介護を受けられる未来を作っていきたいと思います。

このように、市場の過去・現在・未来をストーリーにすることで、今事業に取り組む理由が強化されます。

1-4.顧客のストーリー「顧客の生活はどう良くなっていくのか?」

新規事業に必要なストーリーの4つ目は、「顧客のストーリー」です。

顧客のストーリーでは、「顧客の生活はどう良くなっていくのか?」を語ります。

顧客のストーリーでは、サービスを受ける一人の顧客の人生にスポットライトを当てて、生活の変化を語っていきます。

あなたの想定している顧客が、どのような状態であなたの商品を手に取り、その商品を使ってどのように変化して、生活がどう変わるのかを時系列で書いていくことで、顧客のストーリーが出来上がります。

たとえば、介護事業だと以下のような感じです。

地方に暮らす75歳になった三郎さん。

三郎さんには子供が二人いるものの、二人とも仕事のために都会に出てしまい、家族もいるので介護のために実家には帰ってこれない。

親しくしていた友人も最近はポツポツ亡くなってしまい、少しずつ孤独感が大きくなっていました。

そんなときに当社のサービスをご利用してくださいました。

三郎さんは、当社のサービスを利用し新たな同世代のご友人もできたようで、日々の表情がパッと明るくなりました。その様子を見に来た息子さんも『○○社のサービスに頼んでよかった!』と喜んでくださっています。

このように、顧客の「サービス提供前→提供直後→提供後(変化後)」を語ることで、顧客の変化がより明確になり、サービスの効果や意義が伝わりやすくなります。

実際には、提供するサービス内容も詳しく描写できると、よりサービスの効果が伝わりやすくなるはずです。

1-5.事業展開のストーリー「どのように事業が進んでいくのか?」

新規事業に必要なストーリーの5つ目は、「事業展開のストーリー」です。

事業展開のストーリーでは、「どのように事業が進んでいくのか?」を語ります。

事業計画で書くような「事業をどのように立ち上げ、どのように軌道に乗せ、成功させていくのか?」を、時系列でまとめていきます。

ここまでお伝えした4つのストーリーが、新規事業の説得力を大きく高めてくれています。

なので、事業展開のストーリーでは、事業の進め方がわかるようになっていれば十分です。

事業計画の作り方は、別記事『事業計画の考え方6つのステップ|これで事業計画が作れます!』でお伝えしています。事業展開のストーリー作りの参考になるので、ぜひ併せてお読みください。

以上が、「新規事業に必要な5つのストーリーの作り方」でした。

お伝えした5つのストーリーを作ると、新規事業の説得力が大幅に上がるはずです。

特に、過去に事例や実績が存在しない新規事業を始める場合は、調査データ集めや課題の明確化だけでは、なかなか説得力が高まりません。

説得力を高めるには、「成功するリアルなイメージ」が重要です。

なのでこれらのストーリーを活用して、周りに「新規事業が成功するリアルなイメージ」を想像させていきましょう。

次の第2章では、「新規事業のストーリーを作る4つのメリット」をお伝えします。

新規事業のストーリーを作るのは、説得力を高めるだけではありません。事業計画の完成度を高めるなど、新規事業の成功のためにも非常に効果的です。

新規事業のストーリーを作る4つのメリットを知っておけば、ストーリーを作る時間をより有意義なものにできるでしょう。

2.新規事業のストーリーを作る3つのメリット

第2章では、「新規事業のストーリーを作るメリット」として、以下のつを紹介します。

  1. 事業アイデアを詳細に言語化できる
  2. 顧客も巻き込める
  3. 掲げた売上目標の理由を説明できる

1つずつ詳しくお伝えしていきます。

2-1.事業アイデアを詳細に言語化できる

新規事業のストーリーを作ることで、事業アイデアをより詳細に言語化することができます。

ストーリーを作るということは、時系列で、「最初はこうで、次にこうなって、その次はこうで~」とまとめていくことになります。

時系列に細かくまとめていくことで、事業のアイデアをよりリアルなものとして計画に落とし込めるはずです。

事業計画書がなかなか書き進められない場合は、先に事業のストーリーを作ることで、事業計画書の作成の手助けになるかもしれません。

2-2.顧客も巻き込める

新規事業のストーリーを語ることで、顧客を巻き込むことができます。

たとえば、商品やサービスを販売するときに、「顧客のストーリー」を見込み客に伝えることで、相手はその商品を利用した後に自分の生活がどういう風に良くなるかをイメージしやすくなります。

結果、見込み客に商品やサービスの良さが伝わるので、購入してもらえる可能性が高まります。

たとえば介護事業であれば、以下のどちらの方が魅力的なサービスだと感じるでしょうか。

A:「当社の介護サービスは、受けた方がパッと笑顔になるサービスです」

B:「当社のサービスの紹介です。

地方に暮らす75歳になった三郎さん。

三郎さんには子供が二人いるものの、二人とも仕事のために都会に出てしまい、家族もいるので介護のために実家には帰ってこれない。

親しくしていた友人も最近はポツポツ亡くなってしまい、少しずつ孤独感が大きくなっていました。

そんなときに当社のサービスをご利用してくださいました。

三郎さんは、当社のサービスを利用し新たな同世代のご友人もできたようで、日々の表情がパッと明るくなりました。その様子を見に来た息子さんも『○○社のサービスに頼んでよかった!』と喜んでくださっています」

全く同じサービスだったとしても、ストーリーで伝えた方が魅力が伝わります。

2-3.掲げた売上目標の理由を説明できる

新規事業のストーリーを作ることで、「なぜその売り上げ目標を掲げたのか?」を説明することが出来ます。

ストーリーでリアルな成功イメージをシェアできるので、「このぐらいの成功をおさめたら、売上はこのくらいになるだろう」と説明できるからです。

新規事業の計画を作る場合、売上目標を掲げることが多いと思います。

しかし、その売上目標の根拠が示せないことも多いのではないでしょうか。

特に、過去の事例や実績がない事業に取り組む場合は、売上目標の根拠を示すのがさらに難しくなります。

そういったときに、ストーリーを使い、事業として成功しているイメージをリアルに伝えることで、「イメージ通りの成功を収めるなら売上目標通りになるかも」という期待感を持ってもらうことができます。

ストーリーだけでは売上目標の根拠までにはなりませんが、根拠が何もないよりは、説得力のある説明ができるはずです。

まとめ

新規事業に必要なストーリーは、以下の5つです。

  1. 自分のストーリー「なぜ自分がこの事業をやりたいのか?」
  2. 私たちのストーリー「なぜ私たちがこの事業をやらなければならないのか?」
  3. 現在のストーリー「なぜ今、この事業をやるべきなのか?」
  4. 顧客のストーリー「顧客の生活はどう良くなっていくのか?」
  5. 事業展開のストーリー「どのように事業が進んでいくのか?」

事業計画とともにこれらのストーリーを作ることで、関係者に新規事業の理解が得られやすくなります。

すると、金融機関や投資家を説得して資金調達をスムーズに行ったり、上司や取締役を説得して社内でスムーズに新規事業を立ち上げたり出来るはずです。

この記事を参考に、ぜひ新規事業のストーリーを作って、事業を成功に導いてください。

小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営者とリーダーの相談役(歴18年目)。創業450年の老舗企業から革新的ベンチャーまで4000社以上をコンサル。人生のどん底を何度も経験し、あらゆる成功の闇に直面したことから、生きる意味と働く目的を探究。1万人との対話と師の教えから仕事・会社・家庭の「成長4段階説(4つのステージ)」を体系化。複数の企業顧問も務めながら、仕事と人生のステージを上げるための経営コンサルティングとビジネス講座を行う。働き方と生き方の次元を一気にあげる会員制ビジネスコミュニティ「NEXT DIMENSION」を主催。