信頼残高とは|人間関係を円滑にするための信頼の増やし方
信頼残高(信頼口座)とは、スティーブン・コヴィー氏の『7つの習慣』という本に出てくる言葉です。相手との信頼関係や安心感を、銀行口座の残高に例えたものです。
銀行口座にお金を入れれば残高が増えて、いつでも必要な時にお金を引き出せます。それと同じように、人と人との関係で生まれる信頼を“貯めておく”ことで、必要な時に相手の信頼に頼ることが出来る、ということを「信頼残高」と表現しています。
例えば、信頼残高が高い相手であれば、必要な時に手伝ってくれたり、お願いを聞いてくれたり、円滑なコミュニケーションを取ることが可能になります。
しかし、どうやったら信頼残高が貯まるのかを知っておかなければ、いつまでたっても信頼されないどころか、信頼残高が減ってしまうかもしれません。
そこでこの記事では、「人間関係における信頼残高」と「仕事における信頼残高」の増や方についてお伝えしていきます。
あなたと身近な人たちとの人間関係を良好にするため、またあなたと顧客との関係を良好にするため、ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
信頼残高(信頼口座)とは
信頼残高(信頼口座)とは、スティーブン・コヴィー氏の『7つの習慣』の本に出てくる言葉です。人と人との信頼関係を、銀行口座の残高に例えたものです。
7つの習慣では「信頼口座」という言葉が使われていますが、「信頼残高」という言葉を使う人がいます。言葉は異なりますが、この記事では同じ意味として説明していきます。
『7つの習慣』では、信頼残高を増やす(預け入れる)方法として、以下の6つが紹介されています。
- 相手を理解する
- 小さなことを気遣う
- 約束を守る
- 期待を明確にする
- 誠実さを示す
- (信頼残高を)引き出してしまったときには心から謝る
家族や友人、恋人などの人間関係においては、信頼残高が高い方が文字通り信頼してもらえたり、何か誤ったことをした場合に許せてもらえたり出来ます。
またビジネスシーンにおいては、あなたと顧客との信頼残高が高い方が、数ある競合の中からあなたのことを信頼して商品を買ってもらえます。
信頼残高を貯めるのは、決して「自分が得するため」ではありません。お互い良好な関係を築き、円滑なコミュニケーションを継続するためです。
信頼残高は一人ひとり口座が違う
銀行口座であれば、引き出したお金はどこでも使えます。ただ、信頼残高は相手1人1人別です。
例えば、パートナーとの信頼残高が高まったからと言って、別の人間である友人との信頼残高も高まるわけではありません。
なので、誰か一人から信頼されているからといって、他の人からも同様に信頼されているとは思わず、どんな人に対しても誠意をもって対応することが大切です。
信頼残高は貯まりにくく、減りやすい
信頼残高は貯まりにくく、減りやすいという特徴があります。
例えば、初対面の相手が「約束した待ち合わせ時間を守ってくれた」としても、その人を全面的に信頼することは難しいですよね。信頼残高は簡単には貯まりません。
また、初対面の相手が「約束をすっぽかした」としたら、一気に信頼できなくなるかもしれません。信頼残高は簡単に減っていきます。
企業の不祥事も良い例です。大企業であっても、不祥事を起こしたら一気に不信感が強まり、株価は即日下落していきます。そして失った信頼は、なかなか取り戻すことは出来ません。信頼を取り戻すためには、地道に、誠実な対応をし続けていくしかありません。
そのように、信頼残高は溜まりにくく、減りやすいという特徴があります。
なので、一気に信頼を得ようとするのではなくて、長期的な視点を持って信頼残高を増やしていく必要があります。
さてそれでは、信頼残高の増やし方について「一般的な人間関係」と「仕事の顧客との関係」とに分けてお伝えしていきます。
人間関係における信頼残高の増やし方
まずは、人間関係における信頼残高の増やし方についてお伝えします。
どれも言われてみれば、人間関係における基本のようなものです。ただ、基本だからこそ手を抜いてしまい、出来ていないものもあるはず。
身近な人たちと良好な人間関係を構築するためにも、今日からさっそく実践してみて下さい。
相手を理解する
信頼残高を増やすにあたって、まずは相手のことを理解することが重要です。
というのも相手を理解しなければ、あなたの言動が相手にとって「ありがた迷惑」になってしまい、信頼残高が減ってしまうこともあるからです。
例えば、あなたが良かれと思って相手の仕事を手伝ったとしても、相手は「自分でやり遂げたかったのに、なに余計なことしてくれてんだ」と思うかもしれません。
また、待ち合わせに5分遅れることをあなたはなんとも思っていなかったとしても、相手は「待ち合わせに遅れるなんて信じられない」と思うかもしれません。
相手のことを理解しなければ、信頼残高を減らしてしまうことがあります。
なので、相手がどんな価値観を持っているのかや、どんな考え方で生きているのか、どんなことが不快に思うのかなど、相手を理解することが大切です。
また、相手を理解する過程で、どうしても納得できないこともあるでしょう。例えば、あなたは相手がタバコを止めないことに疑問を持つかもしれませんが、相手はストレスを抱えていて、タバコがはけ口になっている可能性もあります。
それを理解しないまま「タバコは健康に悪いから止めなよ」といっても、相手は「この人は私のことを分かってくれない」と思うだけで、信頼関係は生まれません。
なので、たとえ自分が理解できなかったとしても、それでも相手のことを理解しようと努力することを忘れないようにしましょう。
小さなことを気を遣う
たとえちょっとした親切や気配りであっても、信頼残高に大きく影響します。
思いやりがなかったり、配慮が足りなかったりする人を、人はなかなか信頼することが出来ません。
- あいさつをちゃんとする
- 席を譲る
- 相手に合わせて部屋の温度を調節する
- 体調が悪い時には察して気遣う
- 髪型が変わった時に気づく
- 物を落としたら拾ってあげる
など、どんなに小さなことであっても、そしてどんなに親しい間柄であっても、相手のことを考えて気を遣っていきましょう。
約束を守る
約束を守ることもまた、信頼残高の増加につながります。逆に、約束の大きさや内容に関係なく、どんな約束であれ破ってしまえば信頼残高は大きく減ります。
例えば、あなたがパートナーに対して「今度、北海道に旅行しよう」と口約束したとしましょう。相手は期待するはずです。
しかし一向に旅行の計画を立てずに、「もう少し落ち着いてから」なんて言い訳しようものなら、相手はあなたに対して残念な気持ちになり、信頼残高が減ってしまいます。
仲が良ければ良いほど、「これくらいの約束なら守らなくても大丈夫だろう」という意識が芽生えてしまうかもしれません。
が、一度約束を破ってしまえば、「この人はまた約束を破るかもしれない」という疑惑がずっと相手の脳裏に付きまとうものです。つまり、信頼残高が増えにくくなってしまうということです。
約束を守り続けることで、相手との信頼関係がより強固になっていきます。しかし、一度でも約束を破ってしまうと一気に信頼残高が減り、「信用できない」と相手に思われてしまいます。
なので、「約束は守る」もしくは「出来ない約束はしない」ということを心がけていきましょう。
期待を明確にする
例えば、パートナーと旅行するとしましょう。
あなたは、旅行時の移動計画(乗り物や乗る時間など)をパートナーが立ててくれるものだと“勝手に勘違い”していました。一方、パートナーはあなたが計画を立ててくれると思っていました。
そのような状況で、旅行中にあなたが「次の目的地にはどうやっていけばいいんだっけ?」と聞いたら、パートナーは「いや、調べてないの?あり得ない」と怒ってしまって、喧嘩に発展してしまうかもしれません。そして、信頼を失ってしまう可能性もあります。
お互いに何を期待しているかを明確にしないと、すれ違いが生じて、信頼残高の低下につながります。
上記は旅行の例えですが、家族間の例えで言えば、誰がごみを捨てるのか、誰がどの部屋を掃除するのか、食器洗いは誰がやるのかなど、細かい「期待」は多々あります。それらを明確にしておかなければ、すれ違いが発生してしまいます。
なので、誰かと何かをする時は、誰が何をやるかを明確にすることを意識していきましょう。
誠実さを示す
誠実に対応することは、信頼残高の増加につながります。
逆に、ウソをついたり、隠し事をしたり、傲慢な態度を取ったり、人によって言動を変えたりと不誠実な対応をすると、信頼残高は減ってしまいます。
また誠実さというのは、その場にいない「第三者」に対しても言動も含まれます。
例えば、その場にいない同僚の悪口を言う人を、あなたは人として信頼出来るでしょうか?といったら、なかなか難しいと思います。「自分も陰では悪口を言われているかも…」と疑ってしまうものですからね。
なので、目の前にいる相手に対しても、その場にいない人に対しても、誠実な態度を心がけるようにしましょう。
引き出してしまったときには心から謝る
もし信頼残高を引き出してしまった(減らしてしまった)ようなことをしてしまったときは、相手に心から謝ることが重要です。
100%完ぺきな人はいないので、約束を破ってしまったり、気遣いが出来なかったりすることもあるものです。
その時は心から反省して、「本当に悪かった」「私が間違っていた、ごめんなさい」「本当に申し訳ありません」と、相手に対して謝ることが大切です。
慣れていない場合は、心から謝るというのは難しいものです。だからこそ、自分の非を認めて謝ることで、相手も許してくれます。
もちろんすぐに許してくれない場合もありますが、それでも誠実に対応し続けましょう。一気に信頼を獲得しようとしたらだめです。
相手の理解に努めて、誠実に対応し続けて、小さな信頼を獲得し続けていくことを意識していきましょう。
「~つもり」で行動しない
『7つの習慣』には載っていませんが、信頼残高を増やすもう一つの方法が「~つもり」で行動しないということです。
「知っているつもり」「聞いているつもり」「言ったつもり」など、「つもり」で行動してしまうと、相手とすれ違いが起きたり、誤解を招いたりするものです。
例えば、あなたが自分の子供に対して、ごみを捨ててきて欲しいという意味で「今日はゴミ出しの日だよ」と言ったとしましょう。
ただそれは自分が「ごみを捨ててきて」と”言ったつもり”になっているだけで、子どもはゴミ捨てに行ってくれない場合があります。
そんな些細なすれ違いから喧嘩が起きたり、信頼関係にひびが入ったりしてしまうこともあります。
なので、「~つもり」で行動せずに、伝えたいことは具体的に伝えて、すれ違いを起こさないようにしていきましょう。
仕事における信頼残高の増やし方
続いて、仕事における信頼残高の増やし方についてお伝えします。
上記でお伝えした信頼残高の増やし方を「顧客」に対して行っていくことに加えて、以下の3つの方法を意識して取り組んでみて下さい。
- ウソをついて売らない
- 価値ある情報を提供する
- 売った後のフォローを徹底する
取引先と長く協力して仕事を続けたり、顧客満足度を上げたり、新規顧客を獲得したりするためにも、仕事における信頼残高の増やし方もマスターしていきましょう。
それでは一つずつお伝えします。
ウソをついて売らない
商品を魅力的に見せるために、ついウソをついてしまう場合があります。
例えば、商品販売数を事実よりも多く見せたり、「絶対に成功できます!」と根拠のないセリフを言ってしまったりなどです。
ウソをつくことで、一時的に売上は増えるかもしれません。しかしウソはバレるものですし、バレた瞬間に顧客からの信頼残高は一気に激減します。
二度と信頼してくれないどころか、SNSや口コミで拡散されてしまい、炎上して商売ができなくなってしまうかもしれません。
当たり前のことなのですが、当たり前が出来ていない企業があるのは事実です。なので、ウソをついて売らないということを意識していきましょう。
価値ある情報を提供する
顧客にはただ商品を売るだけではなくて、価値ある情報を提供するようにしましょう。
ここでいう「価値ある情報」とは、顧客の人生の質を高めるような、為になる情報のことを指します。
例えば、歯医者であれば虫歯治療をするだけではなくて、「どうやったら健康的な歯を維持することが出来るのか」を顧客に伝えます。
価値ある情報を顧客(もちろん見込み客にも)に提供し続けることで、相手から信頼を得ることが出来ます。
価値ある情報は出し惜しみせずに顧客に提供していきましょう。
売った後のフォローを徹底する
商品を売った後に顧客フォローをしない場合、顧客満足度を下げてしまいますし、顧客は「売り逃げされた」と感じるかもしれません。
実際、商品が売れる前には営業マンがガンガン営業してくるにも関わらず、商品が売れた途端に営業マンから一切連絡がこなくなることがあります。
商品を売っておいて、そのあとフォローしないというのは、悪い印象を顧客に与えてしまいます。その場合、顧客は二度とあなたから商品を買ってくれないかもしれません。
近江商人の商売十訓に「売る前のお世辞より、売った後の奉仕。これこそが永遠の客を作る」というものがありますが、商売繁盛には商品を売った後のフォローが欠かせません。
なので、売る前の顧客対応はもちろん、売った後も顧客のことを考えてフォローするようにしていきましょう。
以上、ビジネスにおける信頼残高の増やし方についてお伝えしました。
まとめ
信頼残高とは、人と人との信頼関係を銀行口座の残高に例えたものです。
銀行口座にお金を預け入れれば、いつでも引き出してお金を使うことが出来ます。それと同じで、相手に対して「信頼」を貯めておけば、いつでもその信頼に頼ることが出来ます。
例えば、信頼残高が高ければ、相手にお願いを聞いてもらいやすくなったり、協力してもらいやすくなったりします。一方、信頼残高が低ければ、そもそも話を聞いてくれないかもしれないし、円滑なコミュニケーションが取れなくなります。
信頼残高という言葉を使ってはいますが、要は「相手のためになることを真剣に考えて、行動する」ということです。
あなたの身近な人との信頼残高はどうでしょうか?また、あなたが商売をしているのなら、顧客との信頼残高はどうでしょうか。
もし信頼残高が低いと感じる場合は、信頼残高を増やす行動を意識して取ってみて下さい。