経営者・起業家・リーダーのための仕事の秘訣
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2019.03.27 更新|2019.03.27 公開| 経営・リーダーシップ

経営理念の作り方|重要な3つの要素を事例と共に解説

牛窪俊浩です。

経営理念とは、会社の目指す方向性として、「何をするのか」そして「なぜするのか」と一言、もしくは凝縮した言葉で表したものです。

経営理念のない会社は、方向性がなく組織がバラバラになり、余分なコストが発生し、上がるべき売り上げも上がらず、社員は離れ、人は育たない状態になります。

逆に、経営理念を打ち出すことによって、やることが明確になり、社員、そして社長のモチベーションが上がり、お客様にしっかりと価値を届けられるようになります。

しかし、この経営理念を作るには、時間や労力など、とてもエネルギーが掛かります。会社の価値を誰もがパッと直感的に理解できるコンセプトを作るのは、決して簡単なことではありません。

どうやったら、魅力的な企業理念を作ることができるのか・・・。

そこでこの記事では経営理念の作り方について、20代で、1000社以上の会社経営のコンサルティングを行ってきた、小田真嘉さんに教わった方法をお伝えします。

魅力的な経営理念には共通点があります。それがゴールとテーマ、ミッションという3つの要素のいずれかを持っていることです。

本記事では、小田さんに教わった経営理念の作り方を、実際の企業の実例を通してお伝えします。

もし、あなたが魅力的な経営理念を作って、今の会社の流れを加速したいのであれば、この先をぜひ、お読みください。

経営理念とは

経営理念の目的・必要性

会社にとって経営理念というのは必要だと考えています。

なぜなら、小田さんがこれまで1000社以上を見てきて、繁栄している会社には必ずと言っていいほど経営理念が存在していたからです。経営理念の意味は、会社の方向性を一言、もしくは短い言葉で直感的にわかるようにしたものです。

  • 何をするのか?
  • なぜ、それをするのか?
  • どういうふうにやっていくのか?

という自分たちの在り方を内外に伝えます。

そして、経営とは、ある意味においては自然の摂理に反する行動・活動です。わかりづらいと思うので、具体例を用いて説明します。

例えば、温かいコーヒーを置いていたら、何もせずとも周りの気温に合わせて熱というエネルギーが発散して、コーヒーは冷めていきます。

例え何もしなかったとしても、一定の状態を保つことはなく、エネルギーが散っていきます。これは、世の中の自然現象の摂理です。

会社を経営することも全く同じで、意識して整理しなければ、業務を消化しきれずにたくさん抱えてパンクしてしまうし、コストを抑える意識しなければどんどん経費がかさんでしまいます。そのように、会社が持っているエネルギーは、工夫をしなければ散っていく(減っていく)ものです。

例えば、お客様に、こんなお役立ちをしたい、と思って「あれをやろう、これをやろう」と目標や目的を決めていたとします。

しかし、何かの突発的なトラブルなどで業務を忘れてしまったり、日々の業務に追われたりして、結果としてお客様に価値を提供できない場合も出てきます。

極端ですが、そのまま何もせずに放置していたら売り上げは下がり、組織は崩壊して、会社が潰れてしまう可能性もあります。

そうならないためにはどうすればいいのか?冷めたコーヒーを温かいコーヒーに戻すには、熱を加えることです。

経営でも同じで、常に熱を加えて方向を軌道修正して、ベクトルを合わせて、力の注ぎどころを定め直すことが必要です。

しっかりと自覚した上で、正していく必要があります。こうした自然の摂理に反することを常に続けることで、ようやく会社は売り上げが上がり、収益が出るのです。

お客様に出会い、価値を提供し、喜んでもらうために、常にエネルギーをかけ続ける必要があります。

そしてこの熱量の元になるもの、そして会社の方向性を決めていくものが経営理念なのです。

つまり、経営理念のない、もしくは機能していない会社というのは、熱量というエネルギーが失われて、方向性が定まらずに社員たちの意識がバラバラになりがちです。結果として無駄な作業が発生したり、仕事の質が落ちてやり直しが発生し、時間的に余分なコストが発生してしまうこともあるのです。

本来なら上がるはずの売り上げも上がらず、社員は離れ、人も育たない、という状況になってしまいます。

別の言い方をすれば、一番の会社の要・コアとなるものが、経営理念です。

経営理念を明確にして、社長や社員が常に意識することによって、迷った時の方向性が定まります。

すると社員、そして社長のモチベーションが上がり、お客様にしっかりと価値を提供できるようになるのです。

経営理念は、『経営理念ありき、形あと』と言われるくらい、最重要な事項です。

まずは「さあやってみよう!」「とりあえずやろう!」と、もちろんスピードを意識する時期も大事ですが、その思いの中には、軸となる経営理念が必須と言えます。

ただしこの経営理念を作るには、とてもエネルギーがかかるし時間もかかるし、たとえ理想的な経営理念が作れたと思ったとしても、そもそも正解はありません。

しかし、正解がなかったとしても、経営理念を考えるプロセスが非常に重要です。

なぜなら、考え続けることで、自分たちが活動する理由に気づいたり、みんなで考えることで、より組織が団結したりするからです。

なので、出来上がったその経営理念を聞いて

「あ〜〜!うちの会社はこの経営理念がバッチリ当てはまるね」
「よし!これで決まりだね、これからはこの経営理念で判断していこう」

という、会社としての軸が定まった状態、つまり、「ふ〜〜ん。そうなんだ〜〜」ではなくて、「あ〜〜!やっぱりこれだよね!」と、思えるくらい、考え続け、問い続け、整理し続け、頭をひねり、悶絶し、葛藤を続けるという、プロセスが大事なのです。

経営理念を考え、作るというプロセスにおいて、従業員全員で考えて見直したり、理想や理念について語り合う時間を持つことが重要です。

経営理念は、作った後に変えてはいけないものではありません。

今の時代は変化が早く、経営者も精神の成熟など早急な成長が求められます。なので、経営理念を上書き保存というか、アップデートしていくことが必須です。

たとえ、進行中の事業があったとしても経営理念をとにかく作ることが必要です。

経営理念と企業理念の違い

経営理念と企業理念の違いについてお伝えします。ここでいう「経営」とは経営者のことです。そして、「企業」とは、会社のことです。

つまり、経営理念とは、経営者の持つ理念で、企業理念とは会社の持つ理念のことです。

経営者の価値観を反映した会社なのであれば、経営理念と企業理念は同じと考えることができます。

ここからは、経営理念を作るにあたって、必要な3つの要素についてお伝えします。

経営理念に必要な3つの要素

改めて経営理念とは何かを、もう一度お伝えします。経営理念とは、会社の方向性と、大事にすべきものを示すものです。

経営理念に必要な要素は、大きく分けて以下の3つです。

  • ゴール
  • テーマ
  • ミッション

1つずつお伝えします。

経営理念の要素:ゴール

経営理念は、会社の目指すゴールや理想の未来は何かという、未来を伝えるものです。

  • どの方向に向かうのか
  • どんな未来を目指すのか

その未来はどんな世の中、どんな会社で、どんな人たちがいて、どんな人たちがいないのか?例えば世の中で困っている人がゼロになっているとか。

そういった理想のゴールに向けて、私たちはこのようにして社会に関わっている、と伝えるものです。

ただし、単にゴールに向かっていればなんでもいい、というものではありません。

ゴールとは、たとえ誰かを犠牲にしたとしても、結果さえ良ければOKではなくて、ゴールまでの在り方ややり方、プロセスなど、全てが大事です

経営理念の要素:テーマ

2つ目のテーマについては、真善美の3つの方向が大事です。例えば以下のようなものです。

  • 私たちは、お客様はもちろん、従業員も大切にしたい(真)
  • 私たちは、お客様とちゃんと対話して解決策を見つけたい(真)
  • 私たちは、人を嫌な気持ちにさせてまで、お金を稼ぐことをしたくない(善)
  • 何より目の前の人を大事にする生き方こそが美しい(美)

これらは会社内でいえば行動規範やルール、判断基準のようなものです。もしくは会社の社風や文化、仕事観と言われるようなものです。

どの方向に向かっていくのかが『ゴール』であり、どんな会社なのか、どうやって向かうのかが『テーマ』です。

経営理念の要素:ミッション

そして3つ目のミッションとは、ゴールとテーマを踏まえた上で『なぜ』に答えるのがミッションです。

  • なぜ、私たちは存在するのか
  • そもそもどうしてそれをしなくてはいけないのか

という原点に立ち返り、そもそもの部分を深めた要素です。

経営理念には、①ゴール(目指す先)、②テーマ(真善美)、③ミッション(そもそもなぜ)という、1つの要素が含まれているのです。

この3つの要素は、例えば以下のように全てが経営理念に含まれていてもいいし、もしくは1つでもいいです。

  • ゴールとテーマ、ミッションのすべてを含む
  • ゴールとテーマだけ
  • ミッションだけ

これは会社によって違います。ここからはゴールとテーマ、ミッションに関して、実例を交えて解説していきます。

経営理念の作成例(ゑり華)

経営理念を作成した具体的事例をお伝えします。

経営理念を作ろうとした時に、「私たちの会社は、◯◯という理想の未来があります」と伝えたい場合、二つの軸の方向から考えることが大事です。

その二つの軸とは、自分軸と相手軸のことです。自社と顧客、自分たちと社会など、内と外の両方の異なった軸を重ねあわせることが重要です

この内容について、小田さんが14年前からコンサルティングをしている呉服業界の店舗『ゑり華』さんを事例にお伝えします。

ゑり華さんは、青山にある加賀友禅を扱っている呉服屋です。

呉服産業は、業績が毎年右肩下りの状態がずっと続いており、ピークから比べると、当時の何分の1以下となってしまっています。

ユニクロ1社に、日本全体の呉服屋さんの総売り上げを足したとしても敵わないくらい、呉服産業は現在でもどんどん衰退しています。

そんな中でも、ゑり華さんは、頑張っていて売り上げも順調です。

呉服産業内では、「ゑり華さんなら、そこまでやってくれるよね」と、お客様にも同業者にも、問屋卸先さんにも、そして着物作家さんにも信頼されています。

そのように現在は好調ですが、決しても昔からそうだったわけではありません。

14年前に小田さんが出会った時に、ゑり華さんの経営理念のようなものがあって、これを見て欲しい、と言われました。

その時に掲げていたミッションは

『かけがえのない職人さんたちを、そして着物の伝統文化を残していきたい』

というものでした。その時に小田さんは違和感を感じたのです。

ゑり華さんは、本当にお客様をとても大事にしています。お店に来られるお客様の写真をアルバムにしていて、嬉しそうに話されていました。

その写真を見せてもらったところ、着物を買ったお客様はみなさん笑顔で、本当に楽しそうでした。その場はすごく盛り上がっており、いいお客様に囲まれていると感じました。

当時小田さんは、着物を買いに行くと「高く売りつけられるのではないか・・・?」そんな先入観を持っていたそうです。しかし、実際に見てみるとネガティブな印象は全くなかったのです。

その時に、ゑり華さんのミッションの『伝統文化を後世まで残すこと』と改めて聞いた時に、このミッションはお客様にはあまり関係のない話だと考えました。

当時のミッションでは、スポットライトが職人さんや呉服産業に当たっていたので、

お客様に、スポットライトが当たるようしたミッションを、一度作ってみませんか?

と提案しました。

そこで、全従業員に集まっていただき、自分たちに理想的なお客様を考えることになったのです。

例えば、以下のような質問を投げかけました。

「最初は着物については、全くわからなかったとしても、今は着物が好きで本当に輝かれていて、若々しく元気に人生を歩まれているお客様って何人かいますか?」

そう質問したときに、何人も何人も挙げてくださいました。その人たちの共通点は何ですか?と尋ねて、その共通点を以下のようにいくつか書き出してもらったのです。

  • 人生を毎日楽しんでいる
  • 毎年毎年、若返っているような元気な感じ

そして書き出したリストの中から、さらにディスカッションを繰り返しました。

「それなら、本当にそういうお客様が増えたらいいですよね」
「どんなお客様が増えたらいいですか?それは嬉しいですか?」
「では、そんな風なお客様になってもらえたらいいですね」

そうやってスタッフ全員でミッションについて語っていきました。

次に行なったのが、着物好きの人たちが交流できるイベントです。着物を着て、食事したり喫茶したり着物を着たお客様と接する機会を企画しました。

知らない人同士でも会話が弾み、お友達が増えて喜んでいるお客様を見ながら自分たちのミッションを考えていったのです。

そこで生まれたのが、

豊かな時間がうまれ、幸せな気持ちがあふれ、楽しい思い出がふえる。そんな素敵な体験を提供すること

という、『ゑり華の想い』です。

この経営理念の意味は、自分たちのお店の着物を着て、日常生活を送ったら、お客様にとって豊かな時間や人生となっていきます、ということです。

これは、今まで気にしなかったことに気がついたり、着物を着て街を歩いた時の景色や風、季節を感じたりしながら「あぁ、いいなぁ」と普段の生活の中に豊かさを感じるということです。

そして、幸せな気持ちが溢れるとは以下のようなものです。

  • みんなとの楽しい時間が増える
  • 自分に自信が持てる
  • 自分が好きになれる
  • 毎日に本当に感謝できる

さらに、楽しい思い出が増える、ということに関しては、例えば外に着物を着て出ると、飲食店ならすごくいい雰囲気の席に案内してくれることもあります。

なぜならお店にとっては、『着物を着て来店してくださるお客様がいるお店』というステータスになるためです。

着物のお客様は見た目もいいので、一番目立つ特等席に案内してくれたり、特別扱いをしてくれることもあります。

このように普段と違う自分に変身できたり、特別待遇のような接客を受けたりして楽しい思い出が増えるので、普段なら行かなかったところに行くようになり、行動範囲が広がることも多いです。

人は歳をとればとるほど行動範囲が狭くなり、気持ちもなえてくるものです。でもゑり華さんのお客様はそうではありません。

毎年毎年、年を重ねるごとに若々しく元気に、あれもしたい、これもしたい、私の人生は本当に濃かったんだ、と思うようになります。

そうして、毎年毎年、歳を重ねるごとに人生が充実していくのです。このように、スポットライトを完全にお客様に当てるように変更したのです。

それまでのゑり華の使命は、『伝統文化を後世に残す』だったのが、完全にお客様という方向に当てるようにゴール設定し、ミッションを定義しました。

経営理念の作り方

ここからは経営理念のゴール、テーマ、ミッションの作り方をゑり華さんの事例でお伝えします。

ゴール作りは「こだわり」と「思いやり」から

経営理念のゴールの作り方についてお伝えします。

どんな未来にこだわりたいのか、そしてみんながどんな思いを持っているのか、自分と相手の立場の両方から理想の未来を考えます。

「私たちはお客様に豊かな時間と、幸せな気持ち、楽しい思い出を提供したい」
「私たちが関わる着物文化を後世に残したい」

という、『こだわり』と『思いやり』の両方の側面から理想の未来、ゴールをイメージすることが大事です。

そして、こだわりと思いやりで、どのように理想の未来をイメージしたらいいのかを説明します。

こだわりについては、

私たちや自社が心から望んでいることは何か?

というのを最初に書き出してみてください。

「あ〜〜〜!!これこれ。こんな風な未来になったらいいな」
「こういう風に成長していったらいいな」
「こんな風な会社になっていったらいいな」
「こんな世の中になったらいいな」

と、単に売り上げが上がり、有名になるのではなくて、自分たちが歓喜すること書き出します。

それぞれ3つくらい、『こだわり』のポイントを抜き取って書いてみます。

それが終わったら今度は『思いやり』についてです。

「お客様・顧客が心から望んでいることは何か?」
「どんな風になっていきたいのか?」

という、ゑり華さんだったら、みんなで楽しい思い出を増やしたいと思ってるし、毎年毎年、年を重ねるごとに、お客様がいい人生になっていけばいいなと思っています。

  • お客様の心が望んでいることは何なのか
  • お客様の本当の、真の喜びは何なのか

それは着物が欲しいんじゃなく、着物を来て出かける機会が欲しいのかもしれないし、着物談義という、着物を着て語り合う仲間が欲しいのかもしれません。

お客様が本当に欲しいもの、本当の喜びって何なのかをイメージして、商品を買ってよかった、ではなくてその後の生活が、どのように良くなり毎日がどう変わっていくのか?

そういったところを、とにかく書き出してみて、ポイントを3つずつ書き出してみます。

  • 書き出した『こだわりの3つ』をまとめてみる
  • 書き出した『思いやりの3つ』をまとめてみる

最後にこだわりと思いやりをひとつにして、文章にします。例えば、ホワイトボードなどにキーワードを書き出して、みんなで意見を出しあうといいでしょう。

そうすることで自分たちの目指すゴール、理想の未来、輝く未来ができてきます。まずはゴールを作ってみてください。

テーマ作りは「真善美」の探究から

次にテーマの作り方についてです。

会社が設定したゴールに向けて、何を大事にして、どんな風に経営や活動をしたらいいのか。会社としての在り方(=テーマ)には真善美があります。

真善美とは、真実、善き行い、美的感覚や美意識のことで、これから詳しく解説します。

真善美の真

真善美の真とは、自分が携わっている会社の事業と仕事の本質を考えてみましょう、ということです。

今の事業や会社の社会との関わりを考えます。

  • どうして世の中に必要なのか
  • どんな役に立っているのか
  • どんな役に立ちたいのか

その上で、会社の売り上げやお金以外で、この活動を通じて得られるもの、得たいものを考えてみます。

そして、会社が扱っている商品や事業の中で、最も大事にしたい部分や仕事の本質は何なのか、書き出してみましょう。

こうした『そもそもの仕事』として本質に迫るのが、真善美の真です。

真善美の善

真善美の善とは、善い行いに関してです。

以下のように、今、関わっている業界や世の中の嘆きを書き出します。

  • 悲しくなってしまうこと
  • 虚しくなること、嘆かわしく思うこと
  • 悪しき習慣やルール、解決したいと思うことや課題

もし、上記の課題が解決されたら、どのように幸せな人たちが増えて、どんな風に素晴らしい世の中になっていくのかをイメージしてみてください。

世の中にとって善い行いをするのが、『善』です。

真善美の美

次は美です。美学や美意識、美的感覚など、美しい働き方というのはすごく大事です。

  • たとえ会社がどんなにお金が儲かったり、条件が良かったとしてもやりたくない事業、仕事とは何か?
  • 絶対に比べられたくない経営者や、同じにして欲しくない会社はどこか。そしてそれは何故なのか。

上記のような、自分の価値観の中に、仕事における美意識や美学が現れるのです。

「この仕事をやってしまったら私達じゃない」
「これは違う」

そう感じとることは美意識の表れです。

例えば、以下のような質問に対する答えを考えます。

「自社が提供する商品やサービスで多くの人を魅了し、多くの人の魂を震えさせるには、何を極めていくことが大事だろうか?」

「私たちが理想に向けて大事にしているのは◯◯です」
「◯◯だけは、絶対に守りたいと思います」

道を極めようとする求道心を持って「うちの会社っぽいよね、その考え方や振る舞いが」と自然と思えるような、自分たちの美的感覚を書き出します。

以上、真善美の3つの方向から書き出してみて、そこからテーマを導き出してみてください。

ミッション作りは「なぜやるか?」を凝縮する

そして最後のミッションについては、ここまで解説してきたゴールとテーマを踏まえた上で、「そもそもなぜ?」に注目します。

  • なぜ、私たちはそれをしなきゃいけないのか?
  • なぜ、それをするのか?

上記の問いに、ゴールとテーマを踏まえて出てきた文章を、シンプルに凝縮したものが会社のミッションです。

ゑり華さんのミッションの場合はシンプルで、『私たちはお客様に、素敵に歳を重ねていくお手伝いをしたい』というものです。

次に、ゑり華さん以外の参考になる経営理念の実例をお伝えします。

参考になる経営理念の実例一覧

アパレルブランド:SOUSOU

経営理念:
『新しい日本文化の創造』

主に和装を販売しているアパレルブランドです。明治時代より和服から洋服に変わっていき、日本文化が失われてきた背景を踏まえて、和装を現代風に進化させ、新しい文化を作っていこうというコンセプトで作られた経営理念です。

カバン店:一澤信三郎帆布

経営理念:
『よそ行きの華やかさはないけれど、毎日飽きずに使えるかばん。何年も何十年も使い込むほどに、「いい顔になってきたね」といわれるような表情のあるかばん。そんなかばんでありたいものです。』

売って終わり、ではなく最後まで使い続けられるように、カバンを大切に扱うお客様に最高のカバンを提供したいという思いが伝わってくる理念です。利益を度外視してカバン修理も行なっています。

和菓子店:餅匠しづく

経営理念:
『お菓子で百薬の長を目指す』

甘いお菓子を食べると病気になるという共通認識がありますが、白砂糖や食品添加物を不使用にして、食べて身体に優しく健康になる、まるで薬にもなる和菓子を作ろうとして、このコンセプトが生まれたそうです。

いずれも、ゴール(目指す先)、テーマ(真善美)、ミッション(そもそもなぜ)という、3つの要素のいずれかが含まれています。

経営理念のまとめと活用法

経営理念は、向かう方向性(=ゴール)と向かい方(=テーマ)、なぜ向かうのか(=ミッション)で決まります。

ゴール:どこに向かうの?
テーマ:どうやって向かうの?何を大切にしていく?
ミッション:そもそもなぜやるの?なぜ私たちなのか、という存在理由

上記の全てを含む場合や、ゴールのみ、ゴールとミッションを含む場合など、3つのいずれか、もしくは3つ全て含めて経営理念となります。

経営理念があることで、何か問題があって方向性に迷ったときに、何を大切にすればいいのかが分かります。

また、商品やサービスのコンセプトも経営理念をベースにすることで、よりお客様のためになる物が生まれたりします。

もしくは自分たちがお客様に商品を販売したり、何かを伝えようと思ったりしたときに、経営理念を交えながら伝えることで、お客様がファンになってくれるかもしれません

経営理念があるからこそ、以下が可能になっていきます。

  • よい商品やサービスが生み出される
  • 人が育ってく
  • 組織が作られていく
  • 困難を乗り越えるアイディアを思いつく

なので、もしあなたが、魅力的な経営理念を作り、今の会社の流れを加速したいのであれば、本記事の内容を実施してみてください。

小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営者とリーダーの相談役(歴18年目)。創業450年の老舗企業から革新的ベンチャーまで4000社以上をコンサル。人生のどん底を何度も経験し、あらゆる成功の闇に直面したことから、生きる意味と働く目的を探究。1万人との対話と師の教えから仕事・会社・家庭の「成長4段階説(4つのステージ)」を体系化。複数の企業顧問も務めながら、仕事と人生のステージを上げるための経営コンサルティングとビジネス講座を行う。働き方と生き方の次元を一気にあげる会員制ビジネスコミュニティ「NEXT DIMENSION」を主催。