事業拡大のための戦略や手順、資金調達方法を解説!事例も紹介!
「どうやって事業拡大していけばいいかわからない」
「事業拡大で失敗したくない」
そのような悩みにお答えします。
事業拡大を成功させることで、会社の規模や利益を大きくすることができます。
利益が増えれば、会社の経営は安定します。会社を倒産させずに済み、従業員を路頭に迷わす心配も減るでしょう。
ですが、事業拡大に失敗してしまうと、大きな損失を出してしまったり、固定費だけが増えて会社が赤字体質になってしまったりして、会社の立て直しが大変になることがあります。
最悪の場合、倒産してしまうかもしれません。
だからといって事業拡大をせずに現状維持を選択すると、市場の衰退やライバルの攻勢によって、既存事業が右肩下がりになってしまう可能性もあります。
衰退の無い市場でシェアを独占し、ライバルの参入もほとんどないという状況でない限り、現状維持を選択して会社を安定して軽々し続けるのは難しいでしょう。
なので、ほとんどの場合、会社経営を長期的に安定させていくなら、事業拡大は必要です。
そこでこの記事では、以下の5つのことをお伝えします。
- 事業拡大すべきタイミング
- 事業拡大のメリットとデメリット
- 事業拡大4つの戦略
- 事業拡大のリスク分析
- 事業拡大を成功させる6つのポイント
1つずつ読み進めていき、事業拡大を成功させるポイントをチェックしていってください。
それではまずは、第1章の「事業拡大すべきタイミング」からお伝えしていきます。
1.事業拡大すべきタイミング
事業拡大は、既存事業が軌道に乗り、手元の資金に余裕があるタイミングで行うべきです。
いくら既存事業の先行きが順調だったとしても、突然の社会情勢や経済環境の変化で、大きく状況が変わってしまうこともあります。
事業拡大するときに手元に資金がないと、変化が起き、既存事業の立て直しと事業拡大の戦略の両方に資金が必要になったときに、経営が苦しくなってしまいます。
なので、手元の資金に余裕があるタイミングで事業拡大をしていきましょう。
個人事業主で事業拡大を考える場合
個人事業主で事業拡大を考える場合は、「法人成り」するかどうかという問題があります。
法人になると、資金調達がしやすいというメリットがあります。
そのため、「事業拡大に必要な資金がどのくらいか?」を考えて、法人成りした方が有利であれば、法人成りを検討すると良いでしょう。
また2020年2月時点では、個人事業主でもクラウドファンディングを使えば多額の資金調達をすることも可能になっています。
あなたがやりたい事業との兼ね合いで相性が良ければ、法人成りではなく、クラウドファンディングによる資金調達も検討してみると良いかもしれません。
事業拡大を考えるタイミングは、法人で事業をするのと同様に、手元の資金に余裕があるタイミングが良いでしょう。
事業拡大をするタイミングを誤ると、会社の経営が一気に傾くことがあるので、慎重に判断していくことが大切です。
続いて第2章では、「事業拡大のメリットとデメリット」をお伝えしていきます。
事業拡大のメリットとデメリットを理解することで、今のタイミングで事業拡大をすべきかどうか、より判断しやすくなります。
2.事業拡大のメリットとデメリット
第2章では、事業拡大のメリットとデメリットをそれぞれ紹介していきます。
事業拡大のメリットは以下の3つです。
- 大きな利益が得られる
- 認知度があがる
- 市場対応力があがる
一方、デメリットは以下の3つです。
- 固定費が高くなる
- マネジメントの難易度が上がる
- 先行投資が必要になる
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
2-1.事業拡大のメリット
事業拡大のメリットを紹介していきます。
2-1-1.大きな利益が得られる
新しい商品やサービスを提供したり、既存の商品やサービスを新しい市場に投入したりすることで、成功すれば新たな利益を獲得できます。
市場のシェアを高めることでさらなる利益を得られる可能性もあります。
2-1-2.認知度があがる
事業拡大が成功すると、テレビや雑誌等のメディアで紹介されることもあります。
また、消費者の目に触れる機会が多くなれば、SNSで拡散される可能性もあります。
認知度が高まれば、消費者からの信頼度が上がり、さらなる利益アップが見込めます。
また、優秀な人材を採用しやすくなるメリットもあります。
2-1-3.市場対応力があがる
新規事業による事業拡大が成功すると、市場対応力も上がります。
市場対応力とは、社会情勢の変化や人口減少などにより、市場が変化した場合にも対応していける力のことです。
会社として複数の事業を持つことで、1つの事業の環境が変化して停滞したとしても、別の事業がうまくいっていれば、会社全体として損失をまかなうことも可能です。
以上が、事業拡大の3つのメリットです。
続いて、事業拡大のデメリットです。
2-2.事業拡大のデメリット
ここでは、事業拡大のデメリットを紹介していきます。
事業拡大のデメリットをしっかり押さえておき、実際に事業拡大を進めるときにはリスクを小さくすることが大切です。
2-2-1.固定費が高くなる
事業を拡大した場合、拡大した分の事業を進め、維持していくための固定費がかかるようになります。
固定費が増えれば、その分の売上がないと、利益が下がるか赤字に転落してしまいます。
なので、売上と利益の確保が重要になります。
2-2-2.マネジメントの難易度が上がる
事業拡大をするということは、従業員が増えたり、組織が大きくなったり、仕事が増えたりするということです。
そのため、従業員をまとめたり、仕事を整理したりするマネジメントがこれまで以上に必要になります。
従業員をまとめきれずに仕事の質が下がったり、仕事が増えたことで細部まで意識が行き届かなかったりすると、うまくいくはずの事業も失敗してしまう可能性もあります。
なので、事業拡大をするときには、マネジメントできる範囲を考えることが重要です。
2-2-3.先行投資が必要になる
事業拡大するには、先行投資が必要です。
人や設備に投資し、商品やサービスの開発、リリースを経て、売れて初めてリターンが得られます。
リターンが得られるまで時間がかかるので、その間を持ちこたえられる会社の体力が必要になります。
なので、リターンを得るまでの期間がどのくらいまでなら耐えられるのかの見極めが非常に大切です。
この見極めを誤ると、会社の経営が大きく傾く可能性があります。
以上が、事業拡大のメリットとデメリットでした。
事業拡大で得られるメリットとデメリットを吟味して、自社においてどのような結果を狙いし、リスクマネージメントをどう行うかを慎重に判断することが大切です。
適切な判断ができれば、事業拡大でより大きな結果を得られる可能性が高まります。
ここまでの内容を読んで、「やはり自社は事業拡大をしていくべきだ」と判断するなら、具体的に事業拡大を計画していきます。
まずは、どのような戦略で事業拡大していくかを決めることが大切です。
次の第3章では、「事業拡大の戦略」をお伝えしていきます。
3.事業拡大4つの戦略
第3章では、「事業拡大4つの戦略」として、以下の2つをお伝えします。
- フレームワーク「アンゾフの成長マトリックス」
- 4つの戦略について
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
3-1.フレームワーク「アンゾフの成長マトリックス」
どうやって事業拡大をしていくか決めるときに役立つフレームワークがあります。
それが「アンゾフの成長マトリックス」です。
「アンゾフの成長マトリックス」とは、イゴール・アンゾフ(1918-2002)氏が著書「企業戦略論」の中で提唱した、事業拡大をしていく際に用いるマトリックスのことです。
下の図のように、2軸を「製品」と「市場」とし、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けたシンプルなものです。
事業拡大は、この4つの戦略のいずれかを採用することで、自社の強みを活かしながら進めていくことができます。
続いて、この4つの戦略について詳しくお伝えします。
3-2.4つの戦略について
「アンゾフの成長マトリックス」を用いた分析では、以下の4つの戦略に分類することができます。
- 市場浸透戦略
- 新製品開拓戦略
- 新市場開拓戦略
- 多角化戦略
それぞれについて詳しくみていきましょう。
3-2-1.市場浸透戦略
市場浸透戦略とは、既存の市場で既存の商品やサービスをより浸透させて事業を拡大していく戦略です。
既存市場で既存商品の売上をあげるには、購買回数を増やす、購入量を増やす、顧客単価を上げる必要があります。
そのために、広告や宣伝で露出をアップする、値引きやサンプルの配布で手に取ってもらいやすくする、既存商品の改善を行う、などの方法があります。
実際に市場浸透戦略で事業拡大を進めていく場合は、綿密な市場分析を行うことが大切です。
既存市場の顧客ニーズをガッチリつかみ、ニーズに合った戦略を策定することで成功に近づきます。
市場浸透戦略の成功事例としては、井村屋の「あずきバー」があります。
井村屋はアイス事業に後発だったため、最初は苦戦を強いられたそうです。
しかし、ぜんざいをアイスにする技術を磨き続け、味やコストで他社の追随を許さず、少しずつ市場に浸透し、売上を伸ばしていきました。
次第にアイス市場の中で「あずきアイス」という市場を確立するまでに至ります。
それでもなお改善改良を続け、市場への浸透度を高めています。今では全国9割のスーパーマーケットで井村屋のアイスが扱われているそうです。
3-2-2.新製品開拓戦略、新市場開拓戦略、多角化戦略
残り3つの戦略は、以下です。
- 新製品開拓戦略(既存市場×新規商品)
- 新市場開拓戦略(新規市場×既存商品)
- 多角化戦略(新規市場×新規商品)
この3つの戦略については、別記事『新規事業を拡大させるための方法と失敗を最小限に抑えるポイント』で書いていますので、ぜひ併せてお読みください。
以上が、「事業拡大4つの戦略」でした。
事業拡大していくときにどの戦略を選択するべきかは、既存事業の状況や会社の方向性によって変わります。
自社の状況と市場の分析をしっかりと行い、自社に合った事業拡大戦略を選んでいってください。
続いて第4章では、「事業拡大のリスク分析」についてお伝えしていきます。
分析については、事業拡大を成功させるための市場分析だけでなく、リスクの分析もやっておく必要があります。
リスク分析をしておけば、失敗したときのダメージも許容範囲で抑えることができます。
4.事業拡大のリスク分析
事業拡大を進めていくときには、市場分析のほかにリスク分析もやっておいた方が良いです。
第2章で事業拡大のデメリットについてお伝えした通り、事業拡大にはリスクがあります。
事業拡大は100%成功するわけでもありません。
だからこそ、どのくらいのリスクまで背負っても大丈夫なのかは、しっかりと見極めておく必要があります。
リスク分析をする際には、まずは会社としてどのくらいのリスクまでを背負えるかを分析します。
たとえば、下記のような分析してみると良いでしょう。
- 固定費アップはどのくらいまで可能か?
- 組織の規模拡大や仕事の増量はどこまで可能か?
- 会社経営が傾かず投資できる資金はいくらか?
- いつまで赤字でも耐えられるか?
- どのような状況になったら潔く撤退するか?
会社が背負えるリスクを確認した上で、事業拡大を進めていくときのリスクの大きさを分析します。
資金や固定費、組織規模や仕事量がどのくらいになるか、事業計画を作っていくと見えてきます。
最終的には、会社が背負えるリスクよりも小さいリスクで事業拡大を始めていくのが良いでしょう。
はじめから一気に事業を拡大する必要はありません。
小さくテストして、「ほぼ確実にうまくいく!」という感触を得てから、拡大するスピードを上げた方が確実です。
さらに事業拡大を確実に成功に導くために、最後の第5章で「事業拡大を成功させる6つのポイント」をお伝えしていきます。
この6つのポイントを押さえて事業拡大を進めていけば、成功確率がグッと上がるはずです。
5.事業拡大を成功させる6つのポイント
第5章では、「事業拡大を成功させるポイント」として、以下の6つを紹介していきます。
- 人材の確保
- 十分な市場分析
- 利益が出る戦略の策定
- 十分な資金調達
- 削減できる費用の確認
- 事業拡大を目的としない
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
5-1.人材の確保
事業拡大を進めていくなら、人材の確保は必須です。
特に重要なのが、人数を確保することよりも、まとめ役ができる人を育てておくことです。
いくら人数を確保しても、従業員をまとめられる人や仕事をまとめられる人がいなければ、事業はうまくいきません。
実際に「ナポリス」というピザのレストランは、事業拡大を優先し、人材教育をおろそかにしたため、サービスの質が低下しお客さんが離れて、大きな失敗をしています。
なので、事業拡大を進めていくことを見越して、既存事業の中で新しい事業のまとめ役となる人を育てておくと、事業拡大がスムーズに進められます。
5-2.十分な市場分析
分析の重要性はここまで何度も述べてきた通りです。
事業拡大を成功させるには、十分な市場分析が大切です。
たとえば、市場分析をせずに事業拡大を行い、衰退している市場に参入してしまったら、ある程度のシェアを取れた後は事業が右肩下がりになってしまいます。
これでは、せっかく資金や人、時間を投入して事業拡大をしても、安定した会社経営を実現することができません。
同じ労力をかけるなら、長期的に安定する事業や売上が伸び続ける事業を作った方が良いのは間違いありません。
なので、参入する市場や開発する商品を間違えないためにも、市場分析は十分すぎるほど行いましょう。
5-3.利益が出る戦略の策定
事業拡大成功のポイントとして、利益が出る戦略の策定も重要です。
事業拡大というと、どうしても「売上を伸ばす!」「会社規模を拡大する!」というイメージがありますが、会社の経営を安定化・健全化するのは「利益」です。
売上を伸ばすだけなら、経営不振の会社を安く買収すればいいです。
しかし、見た目上売上が大きくても、事業として赤字であれば経営は苦しくなります。
事業拡大の目的の1つは「会社経営の安定化」です。
なので、売上や会社規模に惑わされず、「利益」が出る戦略を策定していきましょう。
5-4.十分な資金調達
十分な資金調達を行うことも、事業拡大を成功させるポイントの1つです。
事業拡大を進めていくなら、人件費や商品開発費、調査費、オフィス代、運営費などのお金が必要になります。
あらかじめどのくらいのお金が必要なのか計算しておき、事業を進めている途中で資金切れにならないようにしておきましょう。
5-4-1.事業拡大をするための資金調達方法
資金調達をしたいと思っても、中小企業や個人事業主の場合は、銀行融資の審査で落ちてしまう可能性があります。
そのため、日本政策金融公庫が実施している融資制度を使って、資金調達することも検討してみてください。
事業拡大や新規事業の創出なら、以下の2つの融資制度が使えます。
銀行融資と比べると、日本政策金融公庫の融資制度は金利が低いので、固定費の削減にもつながります。
5-4-2.事業拡大で使える補助金、助成金
資金調達は、銀行や日本政策金融公庫から融資を受ける以外にも、国や地方自治体から補助金や助成金をもらう方法もあります。
補助金や助成金の大きなメリットは、融資と異なり、提供してもらった資金は返済する必要がないことです。
ただし、条件を満たすための取り組みを行った後にお金が入ってくるケースがほとんどのため、手元に資金がある状態でないと使いにくいというデメリットもあります。
また審査があることと、投資費用の全額が助成されるわけではないことも注意が必要です。
なので、事業拡大の資金調達方法としては、おまけの位置づけとして考えるのが良いでしょう。
とはいえ、返済不要で助成してもらえるのは非常に助かるので、条件に合う助成金や補助金があれば申請しておくといいです。
事業拡大で使える可能性がある助成金や補助金として、以下の4つがあります。
他にも地方自治体ごとに使えるものや、時期によって新しく出てくるものもあります。
なので、ネットで調べてみたり、社労士などの専門家に聞いてみたりするのがオススメです。
5-5.削減できる費用の確認
事業拡大の前に、既存事業で削減できる費用がないか確認することも、事業拡大を成功させるポイントです。
たとえば、使用していない器具や不動産の売却、テナントの解約などです。
売却により生まれたお金は事業拡大の資金に使うことができます。
また、既存事業の固定費を下げることができれば、その分を事業拡大による固定費に充てることもできます。
資金の余裕は、事業拡大成功のポイントの1つです。
5-6.事業拡大を目的としない
事業拡大を成功させるポイントとして、「事業拡大を目的としない」ことも非常に重要です。
事業拡大を進めようとすると、いつの間にか目的が、経営理念の実現や会社経営の安定ではなく、「事業を拡大すること」にすり替わってしまう場合があります。
「結果にコミット」で有名なライザップは、メインのジム事業に加え、経営不振の会社を買収し、建て直すことで会社の規模を大きくしてきた会社です。
一時は「毎月1社買収する!」と宣言するほど、急速なペースで買収を進めていました。
しかし、買収した会社の立て直しが間に合わなくなり、会社全体で70億円の赤字をしています。
まさに、事業拡大が目的化してしまった例です。
事業拡大を進めていくときには、常に最初の目的を忘れないことが大切です。
以上が、「事業拡大を成功させる6つのポイント」でした。
この6つのポイントを押さえることができていれば、事業拡大を進めやすくなります。
事業拡大戦略を作るときには、この6つのポイントが抑えられているかを確認してみてください。
まとめ
事業拡大のタイミングは、既存事業が軌道に乗り、手元の資金に余裕があるときです。
また、事業拡大の戦略は以下の4つから、自社に合ったものを選んでいきます。
- 市場浸透戦略
- 新製品開拓戦略
- 新市場開拓戦略
- 多角化戦略
選んだ戦略で事業拡大を成功させるには、以下の6つのポイントを押さえます。
- 人材の確保
- 十分な市場分析
- 利益が出る戦略の策定
- 十分な資金調達
- 削減できる費用の確認
- 事業拡大を目的としない
正しいタイミングと正しい戦略で事業拡大を進めていけば、成功する可能性も大幅に上がります。
事業拡大が成功すれば、利益が増え、会社経営が安定していきます。雇用の増加により、地域への貢献度も高くなるはずです。
そのためにも、この記事を参考に、事業拡大を進めてみてください。