経営者・起業家・リーダーのための仕事の秘訣
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2020.03.20 更新|2020.03.20 公開| 仕事・ビジネス

【シェア拡大戦略】シェアを上げる5つの具体的な方法(経営者向け)

【シェア拡大戦略】シェアを上げる5つの具体的な方法(経営者向け)

「自社のシェアを拡大したい」

「シェアの大きな会社に対抗したい」

そのような要望にお答えしていきます。

シェアを上げることができれば、業界により大きな影響を与えることができたり、会社経営がより安定したりします。

今参入している市場で安定したシェアを維持できれば、新しい市場への事業拡大も挑戦しやすくなるはずです。

しかし、シェアが低いままだと、売上が伸びないにもかかわらず、顧客の獲得コストや人件費など事業を維持する費用が大きく、利益が残せないケースが増えます。

すると、シェア上位のライバル企業が下位企業を潰すような戦略をとってきたときに、会社経営が一気に苦しくなります。

なので、安定した会社経営をしていくためにも、シェアを上げていくことが大切です。

そこでこの記事では、以下の3つのことをお伝えします。

  1. シェアを上げるために分析すべき2つのこと
  2. シェアを上げる具体的な5つの方法
  3. 目指すべきシェア量

まずは、「シェアを上げるために分析すべき2つのこと」からお伝えしていきます。

第1章を読むことで、「どうすれば自社のシェアを上げることができるか?」がわかります。

1.シェアを上げるために分析すべき2つのこと

第1章では、シェアを上げるための分析をして、以下の2つを紹介します。

  1. 売上の方程式
  2. 漏れ分析

1つずつ詳しくお伝えしていきます。

1-1.売上の方程式

市場のシェアは、何を基準とするかで数値が変わってきますが、基本的には売上を伸ばすことでシェアを上げることができます。

たとえば、靴の市場が200億円だったとして、あなたの会社の靴の売上が20億円だったとしたら、以下のような計算になります。

  • 20億円(自社の売上)÷200億円(市場規模)=10%(市場シェア)

売上を伸ばすには、「顧客数」「単価」「購入頻度」のいずれかを伸ばしていく必要があります。

なぜならば、売上は以下の式で表すことができるからです。

  • 売上=顧客数×単価×購入頻度

3つの要素のうち、伸ばしやすい要素を1つ伸ばすことでも、全部の要素をまんべんなく伸ばすことでも、売上を伸ばしていくことができます。

ですが、伸ばしにくい要素に力を入れてしまい、数値を改善できなければ売上を伸ばすことができません。

なので、自社において、伸びしやすい要素がどれかを分析してから、売上改善に取り組むことが大切です。

売上を伸ばす方法は、別記事『売上を伸ばす方法|3つの要素と具体的な19の施策を紹介します』で詳しくお伝えしています。ぜひ、併せてお読みください。

1-2.漏れ分析

シェアを上げるための分析方法として、「シェアの漏れ分析」という手法もあります。

シェアの漏れ分析は、獲得できていない顧客を分類し、獲得できていない理由に見合った施策を考えていく方法です。

たとえば、あなたの会社が靴の市場で10%のシェアを獲得できているとすると、90%のシェアを取り漏らしていることになります。

獲得できている10%のシェアは、以下の2つの分類できます。

  • 無競合勝利(他社と競合せずに獲得したシェア)
  • 競合勝利(他社と競合し、勝利した上で獲得したシェア)

取り漏らした90%のシェアは、以下の3つの分類できます。

  • 競合敗退(他社と競合し、負けて取り漏らしたシェア)
  • かつてはカバーしていたが、今はカバーしていない顧客
  • 一度もアプローチしたことがないターゲット層

これらをまとめると、事業において顧客は以下の5つの段階に分類できます。

  1. ファン:他社と比較せずに自社商品を指名買い
  2. 競合勝利:他社と比較した結果、自社商品を購入
  3. 競合敗退:他社と比較した結果、他社商品を購入
  4. 未検討:自社商品は認知されているものの、比較すらされない
  5. 未認知:自社商品を知らない

シェアを上げるには、各段階の顧客に対して、以下のような施策を打っていきます。

  • 3の顧客層に、比較検討で自社商品を選んでもらう
  • 4の顧客層に、自社商品も比較検討のリストに加えてもらう
  • 5の顧客層に、認知してもらう

このように、顧客を段階別に分類することによって、どういった顧客層にどういった施策を打てばいいかがハッキリします。

そのため、シェアを上げるためにやみくもな施策を打ち、効果が出ないといったことを防ぐことができます。

自社において、どの顧客層にアプローチするのがシェア拡大の近道になるかを分析した上で施策を打てば、効率よくシェアを上げていくことができます。

以上が、「シェアを上げるために分析すべき2つのこと」でした。

続いて第2章では、より具体的なシェアを上げる方法をお伝えしていきます。

あなたの会社で打てそうな施策を1つ1つチェックしながら、読み進めてみてください。

2.シェアを上げる具体的な5つの方法

第2章では、「シェアを上げる具体的な方法」として、以下の5つを紹介します。

  1. エリア戦略
  2. 販売プロセスの明確化
  3. 商品やサービスの質を高める
  4. 顧客シェアを高める
  5. エリアの拡大

1つずつ詳しくお伝えしていきます。

2-1.エリア戦略

シェアを上げる具体的な方法の1つが、「エリア戦略」です。

エリア戦略とは、ある地域に対応した売れる仕組みを作ることです。

個々のエリアはそれぞれ特性が異なるため、その特性に応じた対応をしていくことで、1つのエリアでの売上を最大化することができます。

1つのエリア内でシェアNo.1を獲得することが一番の目的です。

エリア戦略では、狙ったエリアに対応するために、そのエリアの特性を分析することが重要です。

具体的には、以下ような項目を分析していきます。

  • 市場規模や人口動向
  • 地域の生活のあり方や消費面の特徴
  • 地域の人の考え方
  • 競合の数や状況、シェア
  • 自然や風土の特徴
  • 歴史的背景
  • 情報の伝わり方や考え方

これらの項目を分析し、自社の強みを活かせ、シェアNo.1を狙えるエリアに狙いを定めていくことが大切です。

たとえば、中古車の販売や買取を行う「カーセブン」では、地域の顧客分析を行い、新聞の折り込みチラシやポスティングチラシの配布エリアを決めています。

ファミリー層が多いエリアにはミニバン中心のチラシ内容、若い女性が多いエリアには、コンパクトカー中心のチラシ内容、といった感じです。

地域のニーズを把握することで、シェア拡大につなげています。

2-2.販売プロセスの明確化

販売プロセスの明確化も、シェアを上げる具体的な方法の1つです。

シェアを上げたいからといって、「気合いで頑張れ!」と具体的なやり方を指示せずに現場の営業マンに任せるだけでは、シェアを上げるのは難しいでしょう。

仮にシェアを上げることができたとしても、シェアを上げることができた理由がわからなければ、シェアを落としたときに回復することができません。

なので、販売プロセスを明確化し、やるべきことを理解しておくことが大切です。

具体的には、以下の4つのことを明確化します。

  • どんな顧客をターゲットにするか
  • どのような活動を行うか
  • 顧客がどのような状態になればいいか
  • 行った施策でどのくらいシェアが上がるのか

これらの項目を明確にしておくことで、行った施策がシェアアップにつながったかどうかがわかります。

2-3.商品やサービスの質を高める

商品やサービスの質を高めることでも、シェアを上げることができます。

商品やサービスの改善を行うことで、今まで自社と他社を比較して他社商品を選んでいた顧客の中で、自社商品を選んでくれるようになる顧客が出てくるからです。

顧客が惚れるほど商品やサービスの質を高めることができれば、他社と比較せずに自社商品を選んでくれる顧客も増えます。

すると、他社に自社のシェアを奪われにくくもなります。

たとえば、プロ野球チームのヤクルトスワローズのファンクラブでは、顧客満足度を調査したところ、地方のファンが球場にあまり来場しておらず、ファンクラブ会員のメリットをあまり感じていないことがわかったそうです。

そこで、地方のファン向けのイベントを開催したり、会員特典を増強したりした結果、ファンクラブの会員数が約2.5倍になり、プラチナ会員の入会数も増加しました。

このように、事業を繁栄させていくためには、商品やサービスが良いことは大前提です。

同業他社に負けないような、商品やサービスの開発に取り組んでいきましょう。

2-4.顧客シェアを高める

シェアを上げる方法として、「顧客シェアを高める」という方法もあります。

通常、シェアといえば、市場に対して自社の売上がどのくらいの割合を占めているか、と考えます。これを市場シェアと言います。

第1章で出した以下の事例が、市場シェアの計算です。

たとえば、靴の市場が200億円だったとして、あなたの会社の靴の売上が20億円だったとしたら、以下のような計算になります。

  • 20億円(自社の売上)÷200億円(市場規模)=10%(市場シェア)

対して顧客シェアは、顧客ひとりが靴に使う金額のうち、どのくらい自社の靴を買ってくれたのか、という割合です。

たとえば、顧客ひとりが1年間で靴に5万円使うとして、あなたの会社の靴を1万円分購入してくれたとしたら、顧客シェアは以下のように計算できます。

  • 5万円(靴に使う金額全体)÷1万円(自社の靴の購入額)=20%(顧客シェア)

たとえば、キリンビール株式会社では、「Home Tap」という月額7500円で専用ビールサーバーが借りられて、1Lのビール4本届くサービスがあります。ウォーターサーバーのビール版です。

ビール好きで、毎日いろいろな銘柄のビールで晩酌していた人が「Home Tap」を申し込んでくれれば、ほぼ毎日キリンのビールを飲むことになります。

すると、キリンビール株式会社にとっては、顧客シェアが高まります。

このように、顧客シェアを高める施策を打つことで、リピート率や顧客単価が上がり、売上も上がります。

2-5.エリアの拡大

隣接市場へエリアを拡大することも、シェアを上げる方法の1つです。

既存のエリアでシェア1位を獲得し、同業他社に脅かされにくい安定的なシェア(目安は第3章で後述)を獲得できている場合は、既存のエリアで同業他社からシェアを奪うよりも、新しい市場への事業拡大の方がより大きな市場でのシェア拡大に繋がります。

たとえば、「1万円以下の黒の合皮の革靴」というエリアで75%のシェアを獲得できたとしたら、同じエリアでどれだけ頑張っても、残りの25%分しかシェアを獲得できません。

それなら、「1万円以下の茶色の合皮の革靴」というエリアに進出して、新しい市場でシェアを獲得した方が、「革靴」というエリアでシェアを拡大できる、ということです。

マヨネーズで有名なキューピー株式会社は、マヨネーズ市場で安定的なシェアを獲得した後に、ドレッシング市場へ進出しました。

マヨネーズもドレッシングも主に野菜に使うので、マヨネーズ事業での経験や技術がドレッシング市場への事業拡大の際にも活かされています。

このように、既存エリアを攻略する中で培った技術や経験を生かせる市場へ進出すると、事業の拡大が成功しやすくなります。

以上が、「シェアを上げる具体的な5つの方法」でした。

あなたの会社で実施しやすい方法から、ぜひ取り組んでみてください。

次の第3章では、「目指すべきシェア量」についてお伝えします。

シェアを上げたい理由として、「経営を安定させたい」「市場で影響力のある立場を確保したい」などがあるかと思います。

それらの理由でシェア拡大を目指すとしても、そもそも「目的を達成するにはどのくらいのシェアが必要か」がわかっていないと、どのくらいのシェアを得ればいいのかがわかりません。

すると、「とりあえず今期はシェア3%アップ!」といった根拠がない目標を設定することになり、本来の目的が達成しにくくなります。

なので、目指すべきシェア量を知っておくことは大切です。

3.目指すべきシェア量

獲得すべき市場シェアの参考になるのが「クープマンの目標値」です。

クープマンの目標値とは、ランチェスターの法則を研究したアメリカの数学者B.O.クープマンによって導き出された「ランチェスター戦略モデル式」により作られた市場シェア理論のことです。

クープマンの目標値を知ることで、どのくらいのシェアを獲得すれば、市場においてどのようなポジションをとれるか、がわかります。

シェアの目標値は、以下の7つに分けられます。

  • 独占的市場シェア:73.9%

実質的にその市場を「独占」している状態です。絶対的に安定な市場トップの立場です。

  • 安定的トップシェア:41.7%

独占状態ではありませんが、めったにひっくり返らない安定した市場トップの立場です(市場に3社以上の会社が存在する場合)。

  • 市場影響シェア:26.1%

市場に影響を与えることができる状態です。

  • 並列的競争シェア:19.3%

市場においてメインとなる同業他社と競争できている状態です。どの企業も安定的トップの立場を獲得できていないケースが多いため、まずは次の「市場影響シェア26.1%」を獲得することが目標となります。

  • 市場認知シェア:10.9%

シェアが10.9%を超えると、消費者に認知されるようになります。市場において、同業他社から存在を認められるようにもなります。

  • 市場存在シェア:6.8%

市場において存在が許されるレベルです。拠点獲得シェアを達成したら、次に目指す数値です。

  • 拠点獲得シェア:2.8%

競合他社から競争者と認定されることはないですが、市場に1つの拠点を築いた状態です。市場参入時の最初の目標値とする数値です。

上記を参考にして、どれくらいのシェアを獲得すれば良いのかを検討していきます。

たとえば、「市場で影響力のある立場を確保する」という目的があり、現状の自社の市場シェアが20%だった場合は、市場影響シェアの26.1%を目指していきます。

このように、クープマンの目標値を参考にすることで、根拠のあるシェアの目標を決めることができます。

もし具体的なシェア数を明確にしたい場合は、クープマンの目標値を参考にしてみて下さい。

まとめ

以下の2つのことを分析することで、何に注力すれば効率よく自社のシェアを上げていくことができるかがわかります。

  1. 売上の方程式
  2. 漏れ分析

注力するポイントが判明したら、具体的にシェア拡大の施策を打っていきます。

具体的なシェア拡大のための施策は、以下の5つです。

  1. エリア戦略
  2. 販売プロセスの明確化
  3. 商品やサービスの質を高める
  4. 顧客シェアを高める
  5. エリアの拡大

また、シェアを拡大していくときには、獲得したいシェアの目標値を根拠のある数値で定めておくことも大切です。

シェアの目標値は、以下のクープマンの目標値を参考にします。

  • 独占的市場シェア:73.9%
  • 安定的トップシェア:41.7%
  • 市場影響シェア26.1%
  • 並列的競争シェア:19.3%
  • 市場認知シェア:10.9%
  • 市場存在シェア:6.8%
  • 拠点獲得シェア:2.8%

あなたの会社の現状や目指す立場から、目指すシェアを決めましょう。

この記事の内容を参考に、1つ1つの施策を行うことで、シェアを拡大していくことができるはずです。

シェアが拡大できれば、市場での影響力が獲得でき、会社の経営もより安定していきます。まずは行いやすい施策から、ぜひやってみてください。

小田真嘉(おだ まさよし)

監修・小田真嘉(おだまさよし)

経営者とリーダーの相談役(歴18年目)。創業450年の老舗企業から革新的ベンチャーまで4000社以上をコンサル。人生のどん底を何度も経験し、あらゆる成功の闇に直面したことから、生きる意味と働く目的を探究。1万人との対話と師の教えから仕事・会社・家庭の「成長4段階説(4つのステージ)」を体系化。複数の企業顧問も務めながら、仕事と人生のステージを上げるための経営コンサルティングとビジネス講座を行う。働き方と生き方の次元を一気にあげる会員制ビジネスコミュニティ「NEXT DIMENSION」を主催。